第35話 とある大臣の悲鳴と叫び

 ――とある大臣side――



 やはりとんでもない事になった!!

 国王陛下は静養中と言いつつ、側妃と贅沢三昧をしているなんて思いも寄らなかった。

 何時も病弱な国王陛下に変わり王妃様が代わりに仕事を為さっているのだと思っていたがどうやら違う様子。


 国王陛下は仕事がしたくないから病弱な振りをして、王妃様に丸投げしていたこともシャルロット・フィズリーの言葉で明かされた。


 他の大臣が「食糧事情にかなり問題が出てきている。このままでは国が飢える」と何度も口にしていたのを思い出す。

 ソレが事実だとも思わず笑い飛ばしていたが、最早一刻の猶予もない事も語られた。

 無論貴族たちや国民には【贅沢をしないように】と国王陛下からお達しが出ていたのにも関わらず――当の国王陛下は贅沢三昧。

 これには貴族たちは怒り心頭だ。



「しかし、国王陛下が此処まで使い物にならんとは思いも寄りませんでしたな……」

「王弟殿下を次の王にしなくては、シャルロット・フィズリー様から知恵をお借り出来ませんぞ」

「王を引きずり下ろすしかない……このままでは国が終わってしまう」



 そう大臣たちで集まって語り合う中、陛下にお目通りをと行っていた大臣たちが帰ってきた。

 結果は【静養中の為会う事は出来ない】と言うもので、「扉の奥からは側妃と笑い合う国王陛下の声がしていた」と顔を真っ赤にして怒りに震える大臣もいた。


 無論、本当に贅沢三昧をしているのかと、部下を数名陛下の部屋の近くに置いているが、動きがあれば連絡が来るはずだ。

 その結果は――正にシャルロット・フィズリーの言う通りで、高級なお菓子や果物が運ばれ、食い散らかされた食事が運び出されている事が判明した。


 これには国王陛下についていた大臣たちは掌を返して王弟殿下の派閥に入り、最早国王陛下に与する者達は居なかった。



「流石に古代人形であるシャルロット・フィズリーとの懇親会と言う名のパーティーには参加されるだろうが」

「現状を全く知らない国王陛下だろう?」

「シャルロット様に少しでも無礼を働いてみろ……見捨てられるぞ」

「最早陛下に与する貴族も大臣も居はしない」

「やはり毒殺するしか……」

「いやいや、幾ら国王陛下が馬鹿であっても、古代人形であらせられるシャルロット様に対して無礼を働くだろうか?」

「あの国王なら油断はできん」

「ああ、恐ろしい……ワシは恐ろしい」



 そんな声が広がる中、貴族たちからも「陛下と国はどうなっている!」と言う怒りの声が連鎖的に広がり爆発していった。

 最早貴族たちの怒りを抑える力は我々には無く、「王弟殿下に国王になって貰わねば我々は死んでいくのと同義だ!!」と言う声の大きさは日に日に増して行った。

 たったの三日間――されど三日間。


 何度も陛下にお伺いを立てたが結果は全て同じ――。

【静養中の為会う事は出来ない】と言うものだった。


 その為、我々大臣たちは王妃様と王弟殿下の元へと助けを求めた。

 だが結果は「我々も何とか陛下に仕事をして貰おうと必死だが、聞き入れて貰えない」と言うもので、一気に老けた大臣も多くいた。

 夜も眠れない大臣もいる。

 その結果――。



「我々各大臣と貴族の多くが最早国王陛下ではなく王弟殿下に与しております。どうか愚王である国王陛下に天罰を」

「我々は王弟殿下と王妃様に従います」



 最早それしか我々ハルバルディス王国が生き残る術はなく……何より王弟殿下はシャルロット・フィズリーと懇意にしている事も明かされている。

 無論シャルロット・フィズリーだけではない。

 脳だけの人形であったアンク・ヘブライトに古代時代の世紀の天才と呼ばれたピリポ・ハルディアとも会話をしているらしく、聡明な王弟殿下は小さく溜息を吐くと、「全てはパーティーで終わるだろう」と苦しそうな表情を為さっていた。

 途端に浮かんだ言葉は【断罪パーティー】で、国王陛下はシャルロット・フィズリーに断罪されるのではないだろうかと言う期待が胸に広がった。



「王弟殿下、我々ハルバルディス国民は愚王と共に滅びるつもりはありません。どうか、どうか我らハルバルディス王国を、そして民を導いて下さい。我々は貴方様に付き従います」

「……君たちの言い分は解った。それ程の覚悟があるというのなら、私も王妃様と共に、この国を導く為に動こうと思う」



 ――それは一筋の光。

 ハルバルディス王国が生き残る為の、最初で最後の光のようにも感じられた。



「だがその為にはシャルロット・フィズリーに兄上と側妃を断罪して貰わねばならない。荒れたパーティーになる事だろうが、気に入らないと兄上が武力を行使する可能性もある。だが、既にハルバルディス王国の兵士達は私が掌握している。陛下の言葉は聞かないだろう」

「「「おおお」」」

「もう全ての裏は取れているのだ。最早、風前の灯だ。……これから忙しくなるが、ついてきてくれるか?」

「「「付き従います」」」

「ああ、頼んだよ」

「私も王弟殿下の為に頑張りましょう」

「王妃様、その際には是非よろしくお願いします」



 ――今夜行われるパーティーは、ハルバルディス王国の歴史に残るパーティーとなるだろう。だがそれこそが国をこれ以上壊さない為の、たった一つの方法である事には間違いなかった――。




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