第14話 新しいスキルで、マリシアを新しいマリシアに生まれ変わらせる。

ローダン侯爵家でそのような事があっているとは全く想像に模していなかった間、俺はマリシアの身体を箱庭で作り上げました。

興味津々だったミルキィをはじめとして、メテオやマリシアも様子を伺い、ちゃんとした古代人形というべきか、応用人形を作る事に成功した。


ゆるりとした少し長めの髪、閉じられた目は金色で俺と同じ瞳、猫っぽさを遺す為に顔はマリシアと同じにし、肌は白く美しい娘がそこで眠っているようにしか見えない。

肌の感覚もマリシアと同じで触った感じ人間と大差がない。

普通の人形師の作る人形は、触った感じが若干違うのだ。



「これが新しい私になるんだね……」

「そうですね、魂の入れ替えというか、核の入れ替えは何時でも出来ます」

「この新しい身体に慣れる為にも、少し早めに移動しようかねぇ」

「異動しちゃいます? その身体は一旦こちらで預かる事になりますが」

「構いやしないよ。この体に未練がある訳でもないし」

「では、早速作業しましょうか。今まで使った魔素も補充しましょう」

「え! 魔素って補充できるの!?」

「古代のやり方ですが補充は出来るんですよ。今では失われたやり方です。とても他人の人形には出来ません」

「それもそうよね……」

「恐らく、俺の作った人形にしか出来ないでしょう。マリシア、こちらに」



そう言うとベッドにうつ伏せで眠って貰い、マリシアを一旦停止させる為の魔法陣を作り上げていく。

本当に一旦停止させる為の魔法陣だ。これも古代のやり方で今では失われた方法でもある。



「恐らく起動に少し時間を要すると思いますが、新しい身体に移りますよ」

「あいよ。この体ともサヨナラだね。まぁ私の本当の持ち物ではないし、本人にお返しするよ」

「はい、では……暫し眠っていてください」



そう言うとハッチのある場所に手を置き、魔法陣を発動させるとマリシアは機械音を立てて一旦停止した。

その後ハッチを開け、身体を動かす為の魔素を核に移動させてから取り出し、金の木の実を魔法陣で移動させながら新しい身体の核の入れ物に入れて設置して起動させる前に、魔素の残量を調べ新たな魔法陣を作り上げると手を翳して木の実に魔素を入れ込んでいく。

それなりに減っていた魔素を注ぎ終わると、次は起動の魔法陣を作り上げてマリシアを起動させると、身体全体に魔素が行きわたるまでは様子を見るのですが――。



「まるで人形を手術してるみたいね」

「そうじゃな」

「あながち間違いではないですね……。体の入れ替え作業は結構骨が折れるので、そう何度もしたい事ではありませんが……と。後は身体に魔素が回って木の実が落ち着けば起動します」



そう言うとマリシアの身体に魔素が回っている機械音が鳴り響き、一回、二回、三回と起動音が鳴ってからハッチを閉めて魔法陣で封印すると、マリシアの指がピクリと動き、ゆっくりと目が開いて行く。

現れるのは俺と同じ金の瞳。

全身に魔素が回ったのだろう、背伸びをしてから起き上がると――。



「どうです、新しい身体は」

「意外と快適だね!」

「マリシア!!」

「うむ、見た目が変わっても顔が同じのマリシアじゃな!」

「服は相変わらずのメイド服だけど、まぁ過ごしやすいしね」

「寧ろ貴女はそれくらいしか服がありませんからね」

「周囲に溶け込むには丁度良くてね」

「ははは」

「動きも前よりスムーズだし、これなら数匹は鹿が狩れそうだよ!」

「お祝いにステーキでもしますか?」

「いいねぇ!」



そう言っているとドアが開きワラワラと妖精さん達が入ってきた。



「まりしあ、からだ、だいじょうぶ?」

「みんな、しんぱいした」

「おにゅーまりしあ!」

「かわいいい」

「とーま、みたい!」

「うふふ、今度からはこれが私さ。皆よろしく頼むよ」

「「「「わーい」」」」



そう言って喜ぶ妖精さん達は部屋を出て行ったが、俺もホッと安堵の息を吐いて新しいマリシアが俺の女バージョンと言う事もあり、少し苦笑いが出る。

問題は――こっちの元のマリシアだ。

ハッチを開け、核を入れる場所をスライドさせると元の核が現れる。

宝石は使われておらず、何が使われているのかは分からないが……余り見た事のない石が使われている。



「ここに魔素を注ぎこめば、こちらの元のマリシアの身体も動き出しますが……春の嵐は明日からでしたね」

「そうね、今年は長引くと聞いたわ」

「偵察に言ってくれていた妖精さん達はまだ帰宅してませんか?」

「帰って来ておる筈じゃな。呼んで来よう」

「お願いします」



そう言うとメテオは帰宅している偵察部隊を呼びに行き、暫くすると草や葉っぱを沢山付けた妖精さん達がやってきた。



「どうでしたか? 見張りの警備兵は」

「みんな、かえるじゅんびしてた」

「はるのあらし、ながいから、しばらくこないって」

「しばらくは、おやすみだーってよろこんでた」

「あすにはかえるぞっていってたよ」

「明日ですね? では明日は止めて明後日行きましょう。その時此方のマリシアを起動させます」

「あいよ」

「了解よ」

「楽しみでもあり、怖くもあるがのう」

「暴走した時は私が止めるよ」

「ありがたいです」



こうして、明後日こちらのマリシアを起動させる事も決まった。

どういう結果になるかは分からないが、一先ずは――と言った所でしょう。



「しかしマリシアも結構魔素を使ってましたね。メテオも見て上げましょうか?」

「ん? お前さん寝る前はワシのメンテしておるだろう?」

「マリシアとメテオには一応魔素詰まりが無いかとか循環は確かめてますが、残量までは見てなかったんですよ」

「では、お願いするかのう」



そう言って俺の前にある机の上に座ったメテオの身体に手を当てると、こちらもそれなりに魔素が減っていたので補充する。

マリシア程では無いものの、それなりに魔素は減っていたのだ。



「おお、魔素が行きわたると気持ちがええのう!」

「少し減っていたので入れておきましたよ」

「助かるわい」

「人形師が喉から手が出るほど欲しいスキルよね……古代の人形師って皆凄かったのね。何故失われてしまったのかしら?」

「歴史的に見て、人形に寿命があった方がよいとされたんですよ」

「人形に寿命があった方がいいの?」

「そう国が決めたそうです。理由は定かではありませんが、それで失われたのでしょね」

「それって凄く国が馬鹿だわ」

「そうですね、世界的に見ても人形には寿命があってこそ……という考えはどうしてもありますが……隣の海を渡った敵対しているあの国は人形の兵士を沢山作っていますでしょう?」

「軍事国家じゃったな」

「ええ、海を渡ったあちらはよく戦争があるようですね」



海を渡ったあちらの国では、宗教問題もあって戦争が絶えない。

領土拡大だのなんだのと何かしらきな臭い為、神々のいる島があるとされている場所から西の大陸に渡る者は少ない。

冒険者ですら行きたがらないのだという。

反対に東の大陸は宗教がテリサバース一択と言う事もあり、とても平和なのだが――。



「人形に寿命が無ければ延々と戦い続ける恐ろしいモンスターですよ。精神を壊して人間を襲ってくるという事も考えられる。それに西の国では、人形専用の恐ろしい薬と言いますか……人形の核に取り付けるものがあるそうなんです」

「「「人形の核に?」」」

「ええ、それを取り付けられると人形は可笑しくなると言われています。目の前で恐ろしい事があっても全く動じず、ご主人様のインプットした命令は絶対になるんだそうです」

「怖いわね……」

「ええ、【アルマティ】と言うアイテムだそうですが、その上の【イルマティ】と言うのもあるそうですよ」

「「「アルマティとイルマティ」」」

「最近の記事ですが、その製作者が此方の大陸に来ていたのだそうです。その際にそういう話が新聞に載っていましたね」

「なんだか怖いわ」

「ええ、使節団の一人だったそうですが……一体何を調べていたんでしょうね」



恐らくですが、ハルバルディス王国にある脳だけの人形の視察だとは思うのですが……。

既に機能停止した脳だけの巨大人形、アレを再現しようとすると、どうなるのでしょう。

まぁ、私も実際には見た事がありませんが、翻訳しろと本を送ってきた男性からきた本にはしっかり写真が載っていたので、こういうものなのかと言う記憶はあるのです。



「何にせよ不気味な事ですね」



そう言って溜息を吐きつつ、その後俺達は食事をし、明後日のXデーに向けて色々準備を進めたりもして過ごしたのは言うまでもありません。

そしてついに眠る人形――元のマリシアを目覚めさせる日がやって来ました。



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【★完結★】転生箱庭師は引き籠り人生を送りたい

【★完結★】召喚されたけど要らないと言われたので旅に出ます。探さないでください。

【★完結★】石しか生成出来ないと追放されましたが、それでOKです!

【★完結★】天候を操れる程度の能力を持った俺は、国を富ませる事が最優先!~何もかもゼロスタートでも挫けずめげず富ませます!!~

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