82. SPRING『Spring』(1971)

 今回は温故知新、久しぶりのレトロなプログレッシヴ・ロック回です。バンド名・アルバム名ともに検索泣かせな(笑)英国のSPRINGをご紹介します。


 唯一盤のシュールなジャケット写真は、BLACK SABBATHの1stやCRESSIDAの2ndなども手掛けた名デザイナーKeefの作。筆者も一目惚れしました。


 個人的な体験ですが、CDを手に入れるのに非常に苦労したアルバムでもあります。実店舗や通販を渡り歩き、数年越しで手元に届いた感動たるや。現在ではストリーミングサービスで容易に聴けることに時代を感じますね。



◆SPRING『Spring』(1971)


https://open.spotify.com/intl-ja/album/30KEVsffzEl2tPxTrhWrHM?si=-SEsfCd8RUGu8p7uMIBAnQ


 全編に渡ってメロトロンの音色が洪水のようにあふれ返る、ヴィンテージ・プログレ愛好家にとっては天国のようなアルバムです。


 作風としては、フォークを基調とした歌もの中心の構成です。オーソドックスなバンド・アンサンブルに複雑さはなく、気軽に触れられる反面、ハマったときの中毒性は無数にあるプログレの中でも突出しています。



◇「The Prisoner (Eight By Ten)」


https://www.youtube.com/watch?v=mJDpG3fEEr0


 冒頭から何重にも折り重なるメロトロンの洗礼がリスナーを出迎えます。この時点で何らかの感情を呼び覚まされた人はもう手遅れです。魅惑のメロトロン沼から抜け出すことは不可能だと覚悟しておいてください……!



◇「Grail」


https://www.youtube.com/watch?v=1rA1v_xyaok


 哀愁を感じさせるメロディ、とくにマイナーから始まってメジャーで解決する短いサビが秀逸。素朴なヴォーカルに漂う、そこはかとない切なさもノスタルジックな感傷を誘います。何気に情感豊かなギターにも注目です。



◇「Golden Fleece」


https://www.youtube.com/watch?v=Gvfi3Dpp7t4


 メロトロン(ストリングス)で爽やかに幕を開けるB面1曲目。メロトロン(ブラス)の使いどころもお見事。間奏のユニークなギターフレーズ、続くオルガンソロも目の覚める鮮烈さです。ジャジーなドラム、シンバルレガートにうっとり。



◇「Gazing」


https://www.youtube.com/watch?v=AIfN4qS2T9U


 一際ひときわ叙情的なラストナンバー。メロトロン・オルガン・ピアノ、三重鍵盤の厚みに圧倒されます。アコギの音色がどこか雅やかな響きです。最後も白玉メロトロンで締め。このまま余韻に酔い痴れたい。




【おまけ】


 唯一盤とは言いましたが、長年お蔵入りになっていた未発表盤も存在します。実は私が手にしたのもこちらが先でした……と言うより、前作を探している間にこちらが先に手に入ってしまったと言った方が正しいです。



◆SPRING『The Untitled 2』


https://open.spotify.com/intl-ja/album/3TMa4T6fFWOldBkj7R27Q4?si=15rC_8ymSnqI7c-05kyEMw


 1972年録音、幻の2nd。フォークよりもジャズロックの雰囲気がやや優勢でしょうか。「Hendre Mews」「High Horse」「Losers」のメロディは今でも耳に残ります。

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