80. JELLYFISH『Spilt Milk』(1993)

 『コンナ音楽堂』筆者の真野まのうおです。

 これまでにも個人的なオールタイム・フェイバリット・アルバムを折に触れてご紹介してきましたが、今回は別格です。


 JELLYFISHといえば、音楽通の間ではカルトな人気を誇るパワーポップ・バンドです。グランジ/オルタナ全盛の1990年代米国にあって、それらとは真逆の明るいサウンドと職人的スタジオワークで異彩を放っていました。


 バンドの創設者であるAndy Sturmer(Vo./Dr.)とRoger Joseph Manning Jr.(Key./Vo.)、二人の天才によって生み出された化学反応と相乗効果は絶大です。


 その音楽性は、THE BEATLESやTHE BEACH BOYS、QUEENといった英国の伝統的ロックから大きな影響を受けつつも、他に類を見ない独自のものへと昇華されています。



◆JELLYFISH『Spilt Milk』(1993)


https://open.spotify.com/intl-ja/album/7dAjaIuG9a9Nt3jkYTcoxD?si=EASFtrf4SQ-1N-kN-j7WMw


 2ndにしてラストアルバムは90年代のLennon/McCartneyたるSturmer/Manningの若き創造力全てを注ぎ込んだ、驚異的完成度を誇る不朽の名盤です。


 こだわり抜いた音の詰め込みよう、やりすぎ感はまさに狂気の域。特にプログレッシヴロック・ファンにおすすめしたい非プログレ・アルバムとして、真っ先に挙げておきたい作品であると断言いたします。



◇「New Mistake」


https://www.youtube.com/watch?v=shIOC3IpRM4


 燦然さんぜんときらめく星空のような音の粒が降り注ぐ中、甘美なメロディを紡ぎ出すのはAndy Sturmer(Vo./Dr.)天性の歌声。そこへPaul McCartneyスタイルのベース、George Harrisonを思い起こさせるスライドギターまでが彩りを添えます。


 さらにはストリングスやパーカッションに至るまで隙のない緻密なアレンジは、ロック史に深く刻み込まれるべき偉業と呼ぶに相応しい仕事ぶりです。


 ちなみに「人生で耳にした中で一番好きな曲を選べ」と言われたら、真野は迷わずこの「New Mistake」を挙げます。当時、ビデオテープに録画して幾度となく観返したMVですが、公式からの動画が上がっていないのは残念です。



◇「Joining A Fanclub」


https://www.youtube.com/watch?v=KpgmO1OqfRM


 前作ではあまり見られなかったハードなサウンドの隙間には、Todd Rundgren辺りにも通ずる茶目っ気が見え隠れ。構造的には明らかにTHE BEATLESの遺伝子を色濃く感じます。QUEENばりに大仰なクワイアの導入も実に効果的です。



◇「He's My Best Friend」


https://www.youtube.com/watch?v=26xqH_h9VgI


 男の子同士?の友情を歌ったほのぼのポップソングです。小気味良いリズムに乗せられて、つい聞き流しそうになりますが、親友とはいえ「ベッドルームやシャワーでも」一緒ですと? これは妙ですねぇ……(歓喜)。



 捨て曲皆無なアルバムですが、他におすすめを挙げるとすれば「The Ghost At Number One」「Bye, Bye, Bye」「Too Much, Too Little, Too Late」などが、彼ららしさに溢れたナンバーと言えるでしょう。




【おまけ】


☆Jellyfish - New Mistake (live on 2 Meter Sessions, 1993)


https://www.youtube.com/watch?v=mnqA7PhWptA



 上述した「New Mistake」のアンプラグド・スタジオライヴです。在りし日の映像に込められた宝石のようなひとときを目の当たりに、ファンとして感涙を禁じえません。こんなにも素敵なバンドがかつて実在したんです……!

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