42. AZURE『FYM』(2024)

今回のアルバムは、以前に別のエッセイでも大々的に取り上げた、筆者一推しのバンドAZUREの新作です。


英国プログレッシヴ・ロックの現在進行形とでも言うべき鮮烈なサウンドは、伝統を踏襲しながらも、常に新しい表現を提示しようとする意欲に満ちあふれています。


手数の多いギターとエモーショナルなヴォーカルが絡み合い、おまけにベースはスラッピングで暴れ回る様は、ポストハードコアの領域にまで食い込む勢いです。とかく、演奏技術の高さには目を見張ります。


一方で、MARILLIONを始めとするネオプログレのドラマ性をも継承しているのは疑いもなく、独自に消化したコンセプチュアルな作風も、盤を重ねるごとに奥深さを増しています。



◆AZURE『FYM』(2024)


https://open.spotify.com/intl-ja/album/6h4YrMwmMFur32tGSrJICS?si=6PB8t37uR_usoZmbyNLQ0A


待望の3rdフル。全12曲、78分の一大コンセプトアルバムです。以下にピックアップした数曲だけでは、およそ全貌を把握できるはずもありませんが、雰囲気は掴んでいただけるものと思います。



◇Azure - Sky Sailing // Beyond The Bloom // Wilt (Official)


https://www.youtube.com/watch?v=VRk-Ht8RSqU


モダンなIT BITESといった塩梅あんばいの曲調にAllan Holdsworthなギター、GRYPHONを想起させる室内楽調のサウンドがかぶさり、QUEEN風味のシンフォニックなプログレメタルへ。アルバムのカラーを如実に表したメドレー形式の11分間に刮目すべし。



☆Azure - Weight Of The Blade (Official Music Video)


https://www.youtube.com/watch?v=ZVbXHQ47YB0


WISHBONE ASHなど'70sハードロックへの歪んだオマージュなのでしょうか。ギターと鍵盤の常軌を逸した荒れ狂い様には思わず笑みを催します。ちなみに、鍵盤奏者はDRAGONFORCEや同バンドのMarc Hudson(Vo.)ソロ作にも参加する腕利きです。



それ以外にも、実験的な小曲「The Lavender Fox」には新鮮な驚きを覚えます。ラスト手前に待ち構えた16分超のプログレメタル大作「Trench Of Nalu」は白眉。Uli Jon Roth並みに絶叫するアウトロのギターは圧巻です。


それぞれ独創性に満ちた魅力的な楽曲群は、目まぐるしい展開も相まって、1曲たりとも聴き流す余裕を感じさせません。間違いなく現代プログレの大傑作であると断言します。



【おまけ】


☆Azure - Spark Madrigal (Official Music Video)


https://www.youtube.com/watch?v=tk85ht_Eqj4


日本盤ボーナストラックとして収録された2022年既出のシングル曲です。ひねくれた曲展開に加え、全パート手加減なしのバカテクを披露しつつ、印象としては至極キャッチーな仕上がり。このバンドならの贅沢感です。



文中で挙げたバンド以外にも、COHEED AND CAMBRIA、PROTEST THE HERO、JELLYFISHなどが好きなリスナーであれば、このAZUREにも何かしらの興味を見出だせることと思います。


プログレッシヴ・ロックが生まれて半世紀以上が経ちましたが、このジャンルがまだまだProgress(進歩)できると確信させるバンドです。AZURE自体の秘めたる可能性も、未だ開花の途中であるのかもしれません。

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