15. ARCH ENEMY『Rise Of The Tyrant』(2007)

今回ご紹介するのは、スウェーデンのメロディック・デスメタルARCH ENEMYです。


まずリーダーMichael Amott(Gt.)の奏でるギターは非常に情感豊かで、この手の激しい音楽に馴染みのないリスナーにも大きく訴求する魅力があります。


その音楽性も多様かつ深大です。ハードロックからヘヴィメタル、そしてメタル自体がエクストリーム化していく歴史を、たった一つのバンドが体現している事実には驚愕させられます。


さらには4th『Wages Of Sin』からのAngela Gossow(Vo.)加入によって、メタル界における女性グロウラー(デスヴォイス主体のシンガー)の存在を一般化させたのも大きな功績です。


デスメタルと聞いて身構えてしまがちな初心者にこそ、自信を持っておすすめしたいバンドであると言えます。



◆ARCH ENEMY『Rise Of The Tyrant』(2007)


https://open.spotify.com/intl-ja/album/2r6Vgbo77Ph4hY7nso8Q5G?si=w7GyGiFeRauGXGQiDRWE_g


そんなARCH ENEMYの代表作がこの7thアルバムです。研ぎ澄まされた演奏と練り込まれた楽曲群、緩急織り交ぜた隙のない構成は、メタル史上に輝く金字塔の一つと言っても過言ではありません。



◇「Blood On Your Hands」


https://www.youtube.com/watch?v=wu6Jwk2UOhY


ショーの幕開けに相応しいブルータリティとインテンス、なおかつ口ずさみたくなるキャッチーさまでもが同居する贅沢ぜいたく。切々と訴えかけるギターメロディは耳にした者を否応なしに感情のつぼへと引きずり込みます。



◇「In This Shallow Grave」


https://www.youtube.com/watch?v=wAfv7ukqZWQ


戦争の残酷さ・不毛さを克明に物語る慟哭のギターとヴォーカルは圧巻の一言。デスメタルという一見して平坦なスタイルに秘められた表現の可能性を引き出す傑作です。Daniel Erlandsson(Dr.)の変幻自在なドラムプレイにも注目。



◇「Vultures」


https://www.youtube.com/watch?v=jZwWF27qwws


幻惑的なギターフレーズの先制。曲自体の構成も一際ひときわ凝っていて、ヴォーカルパートとギターパートが交互に訪れる展開には戦慄せんりつさえ覚えます。とどめは物悲しいピアノの音色で締め括られる、ドラマチックなラストナンバーです。



他にも、サビ裏で流れるギターメロがシンガロングを誘うTr.2「The Last Enemy」や、映画『火垂るの墓』にインスパイアされたというTr.7「The Day You Died」なども聴きどころです。



極限までアグレッシヴでありながら、美麗で多彩な表現に彩られたARCH ENEMYの最高傑作『Rise Of The Tyrant』。再三になりますが、デスメタルの入門編として最適の一枚であるとここに断言します。

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