狩りゲーの世界に降り立った最強課金おじさんが終焉に抗う話

猫鍋まるい

第1話 最強課金おじさんの終わりとはじまり

「相棒……来ましたよ」


 二千XXX年八月末日。


 夏の終わりと共に、電子の海で一つの世界ゲームが消えようとしていた。


 フォールンハンターオンライン、通称FHO。


 モンスターとの死闘、狩りを主軸としたオンラインゲームでありサービス開始から十年を超える長い歴史を紡いだ大人気ゲームだ。


 しかし、オンラインゲームである以上いつかは終わりがくるもの。


 まだ俺が学生だった頃から続けているこの愛すべきゲームにも、サービス終了というおわり……終焉が訪れようとしていた。


「あれが、終焉をもたらすもの」


「始龍ディアドラシル」


 長年ゲームを楽しんでくれたプレイヤーたちにFHOの運営が用意した最後の贈り物。


 それがこのゲームにおける真のラスボス、世界をまるごと破壊し尽くす力をもった始龍ディアドラシル。


「きっとこれが、最後の戦いです」


(ああ、 )


 怪物狩りを生業とする主人公に付き添い狩りの手助けをしてくれるお供キャラ、俺の相棒であるリリカが飛空艇から梯子を降ろす。


>まもなく目的地に到着します


>制限時間は30分です


「……たとえ、この先にどんな運命が待ち受けていても。 私は相棒と共にいます」


「行きましょう、相棒!! 」


>狩猟開始!!


>始龍ディアドラシルに挑み、世界の終焉に抗え!






 ◇◆◇





「ぐご~~~~~ぐが~~~~~…………ふごっ」


「ん、んン~~~~? 」


 蒸し暑い。


 さてはエアコンの自動運転をつけ忘れたなマヌケめ、などと過去の自分に悪態をつきながらどうにか二度寝できないものかと体を横にし丸くなる。


「…………」


 昨日はあれから、珍しく寝落ちしてしまったようだ。


 まあでも仕方ない、学生だった頃とは違いここ数年は夜遅くまでゲームを遊んでるような事も無かったしな。


 FHO。


 結局、サービス終了の瞬間は見逃してしまったが。


(いい思い出を、ありがとう)


「グェッ!!! ギャッギャッ!!! 」


(ぐぇ? )


 目を閉じたまま、青春を捧げたゲームへの思い出に浸っていると突然けたたましい鳴き声が聞こえてきたので慌てて体を起こす。


「なっ……! ピヨコトリス!? 」


 巨鳥獣ピヨコトリス。


 FHOでは初心者殺しとして知られていた黄色い鳥の化け物が、大きな嘴を開き今まさに俺を捕食しようとしていた。

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