幼い頃から好きだった従姉妹を一度だけ使える国の制度で正式に奪ってみた件

黒兎しろ

第1話 手段

 恋をしたいけど、、いつの間にか21年の時を過ごしていた。


 まだ俺は彼女いない歴=年齢ってやつだ。


 高校を卒業してから、ガソリンスタンドで働いている。


 昼は車を誘導し、窓を拭く。夜は家で一人で過ごす。仕事を終えて、賃貸マンションに帰ると、部屋には誰一人、俺の帰りを待つ人間はいない。部屋に帰って視界に入るものは、誰かの顔でなく、いつもの散らかった部屋だけだった。


 これが俺の日常だ。そこに色気はひとつも無い。


 寂しい毎日だった。でもこの状況を作り出したのは俺自身だ。


 高校時代はこれでもモテた方だったのだ。だけど、自分から色恋沙汰を遠ざけた。


 俺には、心に決めた相手がいたから、言い寄られたとしても全て断っていた。


 相手は、5歳上の従姉妹の太田おおた 陽奈はるなだ。俺ははる姉と読んでる。子供の頃、田舎のおばあちゃん家に親戚一同が集まる夏休みと冬休みだけに会える間柄だった。


 でも、もう何年も会えていないし、親によれば、最近、彼氏と上手くいっているらしく、近々結婚するらしいという。


俺は、今更になって、高校時代に誰でもいいから付き合っておけばよかったなんて後悔しているのだった。


 このまま、月山つきやま ひかるという一人の人間に一生、春は訪れないのだろうか───────......


 今の俺の状況と、あの頃の俺の状況は全くの正反対だ。あの頃は本当に良かった。青春を、味わえていたなと、今になって気づく。


 俺は部屋で一人、あの頃の思い出がよみがえってきて、懐かしくなり泣きそうになっていた。


 ◆


 太田陽奈と出会ったのは、確か、俺がまだ幼稚園の年長の頃だ。5歳差とはいえ、陽姉以外に従姉妹のいなかった俺は、歳が一番近い家族として彼女に特別な親近感を抱いていた。俺に兄弟がいないことが、それを抱いた理由の一つだろう。


 幼かった俺は、陽姉の行動を真似したり、ひよこのように後をついて行ったりした。俺にとっては何もかもが新鮮で楽しかったのだ。


 陽姉も優しくて、俺を可愛がってくれていた。何をやるにしても、0から100まで教えてくれて、親よりも俺を気にかけてくれていた。


 今や初めて話した瞬間、仲良くなった瞬間なんて覚えていない。いつの間にか俺は、陽姉の事が大好きで、初恋で、ずっと一緒にいたいと思うほど仲良くなっていた。


 だから、夏休みと冬休みしか会えないことを嘆いて、何度も別れる時に泣いていたっけ。


 それだけ、陽姉と過ごす日々が楽しかったのだ。


 また、刺激的でもあった。


 俺らは公園に行くことが多かった。でも、大人になるにつれて公園から色んな場所へ行くようになった。


 俺が小学校に入って、陽姉が、中学に通うようになった頃、親に内緒で悪さをしたこともある。


 それは、公園に行くフリをして、おばあちゃん家から近い家庭菜園をしている家の畑に勝手に忍び込んだことだ。

「陽姉ちゃん、こんなところ入っていいの?公園行くんじゃなかったの?」

「しーっ、いいのいいの!」

「なにするの?ここで」

「ほらみて、これ、めっちゃ美味しそーじゃない?」

 陽姉はそう言って、一本のきゅうりをもぎ取った。

「いいの?勝手にとって」

「バレなきゃセーフセーフ。それより光、お腹減ってるでしょ?ほら、齧ってみなよ」

 そう言って笑顔で、俺にきゅうりを渡した陽姉。俺は言われた通りにそのきゅうりを齧った。

「美味しい」

「でしょ?ふふっ」

 俺はその時食べたきゅうりの美味さを今でも覚えている。


 もっとも、それはただのきゅうりに変わりは無い。美味しいと感じたことは覚えているが、味までは覚えていない。ただ、2人で隠れてこんなことをしているという背徳感と高揚感を子供ながらに感じて、興奮していたから今でもその美味しさが脳裏に焼き付いているのだ。そして、その時の陽姉の笑顔もこべり着いて離れない。


 他にも悪いことをした。やっちゃいけない所で、ボール遊びをしたり、かくれんぼをしたり。あれは確か、立ち入り禁止の工場跡地だったか。


 他にもよく通っていたドーナツショップのトイレをずっと使って水遊びや火遊びをした。


 悪いことばかりしていたわけじゃないが、特にこういうスリルのある悪さは、今でもよく思い出せる。


 陽姉との、日々は一種のそういうスリルがあったから楽しかったのかもしれない。


 スリルはそれだけではなく、男と女という関係でもあった。


 陽姉は、いつも優しくて、色んな話をしてくれて、俺の話もよく聞いてくれた。


 俺はそんな陽姉が好きだったけど、陽姉も少なくとも少しは俺の事を意識していたと思う。


 でも、今となってはもうそんな思い出もどうでもいいのだが。


 俺が高校生になる頃には、もう親戚の集まりは終わっていた。もう陽姉と合わなくなって5年くらい経つのである。俺の事なんて忘れているだろう。俺はずっと忘れずに、これまで生きてきて、恋愛もしてこなかったけど。それも終わらせないといけないのかもしれない。



そう思い、急に現実に引き戻された。俺はテレビがずっと垂れ流しになっていることに気づいた。


ふと、テレビに緊急ニュースが流れた。


《緊急ニュース》


新たな法律として、結婚または恋人関係にある対象の人間から1度だけ、その関係を解消し、自分の恋人、または婚約関係に出来るというものが決まりました。ただし、それはその対象の合意を得る必要があります。


 これが俺と陽姉の運命を変えようとは、この時は思いもしなかった。


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こちら新作です。

「男の娘の僕がバ美肉でVTuberデビューしたら、いつの間にかハーレム築いてた件」

↓↓↓

https://kakuyomu.jp/works/16818093072868349045


二作目です。

「銀髪美少女JKの清楚で無口な昼と変態で囁く夜」(完結済み)

https://kakuyomu.jp/my/works/16818023212126820814

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