夢の少年と煌眼の猫

十六夜 水明

序話 夢と少年

 いつも夢に出てくる少年がいる。

 大体、小学校3年生くらいの少年。でも、じゃない。

 どこか異様な雰囲気を出しながら、いつも私の目の前でニコニコと笑っているのだ。

「君は、誰?」

 そう聞いても、君はただ笑っているだけ。


 形が整った顔のパーツ。口と目が弧を描いているけれど、その瞳は少し悲しみに濡れている。まるで、表面では幸せを表していて、その心の奥底では絶望を抱え込んでいるような……。

 君は、何を考えているの? 何を思っているの?

「ねぇ!」

 そう2言目ふたことめで手を伸ばすと、いつも夢から弾き出されるように目が覚める。


──だから。

 だから今日は、喋らない。

 幼い、まだ物心がつく前から見続けている夢。


 この夢にを打つんだ。


「……」

『……』


 互いに沈黙が続く。段々と少年の顔が笑っているのではなく、泣いている様に見えてきた。

 何度も手を伸ばしたくなる衝動を抑えて、私は少年を見つめていた。


 やがて、この沈黙を破ったのは少年の方だった。


 彼は、こう言ったのだ。


『僕を……。僕を見つけて』


 その時、私は初めて少年の顔をしっかりとと思う。


 星空の瞳から流れる、天の川の涙。絹のような銀の髪は、夜露を浴びたようにキラキラと青みがかって輝いている。


 綺麗だなぁ。


 そう思った瞬間、私は夢から弾き出された。

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