箱庭の夢

紫泉 翠

恐怖の箱?

 静かな夜、都会の喧騒から離れた一軒家で、孤独な女性・美咲が一人暮らしをしていた。その家は古びた木造で、庭には星を眺めるのに最適なスペースがあった。美咲は自分の時間を大切にし、庭で星を眺めながら日々を過ごしていた。


 ある晩、美咲は庭で星を眺めていると、地面に小さな箱がひとつ転がっているのに気づいた。その箱は月の光が反射し白い光を放ち、美咲の興味を引いた。彼女は慎重に箱を手に取り、中を覗いてみると、何も入っていなかった。


 不思議に思いながらも、美咲は箱を持ち帰り、自宅の中に置いた。翌朝、目を覚ますと、部屋中に大小様々な箱が積み重なっていた。美咲は驚きながらも、中に何かが隠されているのではないかという興味を抱き、一つ一つの箱を開けていく。


 時間が経つにつれて、美咲は箱の中に何かを見つけることに成功する。小さな宝石や美しい花、そして愛らしいぬいぐるみなど、様々なものが彼女の目の前に現れる。彼女は驚きと喜びで胸がいっぱいになった。


 しかし、中には何も入っていない箱がほとんどで、美咲は戸惑いながらも執拗に箱を開け続けた。時間が経つにつれて、箱が姿を現し、彼女は次第に箱に埋もれていくようになった。箱が増えていくたびに、彼女の部屋はますます狭くなっていくのだ。


 絶望に包まれた美咲だったが、最後の力を振り絞り、ひとつの箱を開けようとする。その箱の中には何もなく、ただの空箱だった。美咲は呆然と立ち尽くし、やがて部屋が明るくなり、目を覚ます。


 彼女の周りには箱もなく、普通の部屋が広がっていた。美咲は安堵とともに、自分が夢を見ていたのだと気づいた。外に出ると、庭、昨日箱を見つけた場所にまた別の箱が一つ落ちていた。


 彼女はその箱を手に取り、中を覗くと、一片の紙が入っていた。『夢に埋もれずに、自分の心の中にある宝を見つけましょう』という文字が書かれていた。


 美咲は笑顔を浮かべながら、箱を閉じた。彼女は自分自身の内なる喜びや輝きを大切にすることを決意したのだった。

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箱庭の夢 紫泉 翠 @sorai_4572_

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