第314話 関係性
◇ルクスside◇
「え!?」
今の僕とフローレンスさんの状態を見たアシュエルさんから放たれた、そういう関係という言葉。
おそらく、それは恋人とかそういう意味なんだろうけど────どう答えたら良いんだろう!
現状僕たちはそういった関係ではないから、そういう関係ではないと否定した方が良いのかな。
でも、まだ返事を待ってもらっているという状況でそういう関係ではないと否定すると、何か別の意味も生まれてしまいそうな気もする。
だからと言ってただ事実を伝えるとなると、フローレンスさんに婚約のお話をいただいていることをアシュエルさんに伝えることになる。
けど、いくらアシュエルさんがフローレンスさんと仲が良いとしても。
フローレンスさんの許可無く、そのことを口外するようなことはできない。
僕が、本当にどう答えるべきかと少しの間沈黙して思考を進めていると────
「もしかして、本当にそうなの!?ロッドエルくんと、フローレンスが!?」
アシュエルさんが、僕の沈黙に意味を見出して再びそう聞いてきた。
「い、いえ、えっと……」
こんな難しい問題に、すぐに答えなんて出せるはずもなく。
僕がまたもどう答えるべきかと悩み始めていると────
「ルクス様、私が代わりにお答えさせていただきますね」
「っ!は、はい!お願いします!」
そう言ってくれたフローレンスさんは、僕から自らの顔と手を離し。
アシュエルさんの方を向いて言った。
「アシュエル様、私とルクス様がそういった関係、つまり恋人関係にあるのかについてですが────現状、ルクス様には私が一方的に婚約のお話を持ち掛けさせていただいている状況ですので、恋人関係にはありません」
「っ……!」
フローレンスさんが、そのことを躊躇いもなくアシュエルさんに伝えたことに驚いた僕。
だったけど、それ以上に驚いた様子で。
アシュエルさんは、口を開いて言った。
「こ、婚約の話!?え!?そうだったの!?」
「はい」
特に普段と変わらない様子で言ってのけたフローレンスさんと僕のことを、アシュエルさんは交互に見つめる。
それから、アシュエルさんは僕に向けて。
「ご、ごめん!ロッドエルくん!ちょっとだけ、フローレンスと二人で話したいことあるから連れて行っても良いかな?」
「わ、わかりました!僕のことは気にせず、お二人で話してきてください!」
「本当ごめんね!すぐ戻るから!」
「では、ルクス様……また後程お会い致しましょう」
「はい!」
それから、フローレンスさんはアシュエルさんに連れられる形でこの講義室を後にした。
一体、どんなお話をするつもりなんだろう。
◇フローレンスside◇
アシュエルは、フローレンスのことを貴族学校内の人気の無いところまで連れてくると。
早速、フローレンスに問いただした。
「フローレンス!さっきの話の続きだけど、ロッドエルくんに婚約の話をしてたって本当なの!?」
「はい、本当です」
「っ!!」
改めて聞いて、衝撃を受けたように声を発するアシュエルは。
それから、少し間を空けて言った。
「……い、いつぐらいからしてたの?」
「そうですね……一番最初は、もう数ヶ月ほど前となります」
「そんなに前から!?で、でも、まだそういう関係じゃ無いってことは返事はまだなのよね?」
「はい、ルクス様はお優しい方ですから」
本来、婚約の返事を待たされていて優しいと解釈することはできないだろう。
が、フローレンスは、ルクスが優しさ故に悩んでいることをよくわかっているため。
心の底から、それをルクスの優しさだと捉えている。
そんなフローレンスの言葉を聞いたアシュエルは、さらに少し間を空けてどこか緊張した様子で聞く。
「数ヶ月ってことは、この数ヶ月の間に何かあった……?」
「何か、とは……?」
「言わなくてもわかるでしょ!だから……」
頬を赤く染めて言葉を止めたアシュエルは、続けて振り絞ったような声で言った。
「だ、男女としての関係性の進展とか、そういうのはあったのかって聞いてるのよ!」
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