第313話 推測

◇フローレンスside◇

 ────第三王様だけでなく、第二王女様をも相手としてルクス様を巡るというのは、かなり至難ですね。

 しかし、フローレンスにとって何よりも阻止したいのは、ルクスのためならその手を血で染めることを全く厭わないフェリシアーナがルクスと婚約すること。

 無論、最優先は自らがルクスと婚約することだが、もしエリザリーナがルクスと婚約するに相応しい人格の持ち主なのであれば────と考えていると。


「エリザリーナ様のお話をしていて思い出しましたが、そういえば近々第四回王族交流会がありますね」

「そうですね」


 ルクスがそう話しかけてきたため、フローレンスは即座に考え事を中断してその言葉に相槌を打った。

 すると、ルクスが口を開いて言う。


「三人の王女様たちはもう全員いらっしゃいましたが、次はどなたが来てくださるんでしょうか?」


 今までは、誰も重複することなく三人の王女たちが順々に貴族学校に来ていた。

 となると、次は国王や王妃と考えるのが自然、だが。

 やはり、いくら貴族学校とは言え。

 一つの学校の催し事に国王や王妃が足を運ぶとは考えづらいため。


「やはり、その三人の王女様方のどなたかがいらっしゃると考えるのが妥当でしょう……どなたが来てくださるかは、やはり今まで通り当日になるまでは知り得ないことだと思います」

「そうですよね……」

「……」


 ルクスには、当日になるまでは三人の王女の中の誰が第四回王族交流会にやってくるかわからないと言ったフローレンス。

 だったが、フローレンスの中では、ある程度予測がついている。

 ────もしも、私の読み通り第二王女様がルクス様にご好意をお持ちなのでしたら……

 そして。

 ────第三王様の現在のお気持ちを考えれば。

 次の、第四回王族交流会は────



◇ルクスside◇

 貴族学校に入学する前は、フェリシアーナ様も。

 エリザリーナ様も、レザミリアーナ様も。

 僕にとっては雲の上のような人で、まさか今のように仲良くしていただけるなんて全く思っていなかった。

 特に、フェリシアーナ様とエリザリーナ様から婚約のお話をいただいたことに関しては。

 今でも、まだまだ衝撃が無くならない。

 でも、そんな今だからこそ。

 僕は、三人の王女様のどなたが来てくださっても本当に嬉しいし、少し緊張はするけど第四回王族交流会を心から楽しみにでき────


「ルクス様」

「は、はい!」


 僕が三人の王女様、そして第四回王族交流会について考えていると。

 フローレンスさんが、どこか鋭さを感じる声で僕の名前を読んできたため。

 僕は、思わず動揺しながらもそう返事をした。

 すると、フローレンスさんは僕の手に自らの手を重ねて言う。


「三人の王女様方についてお考えになられるのはよろしいですが、私のこともお忘れになられては困ります」

「も、もちろん忘れたりしてません!」

「ふふっ、それは良かったです」


 続けて、フローレンスさんは僕に顔を近づけてきて言った。


「私はルクス様のことを忘れることはもちろん、ルクス様以外のことを想うことも致しません……ずっと、あなたのことを想っています」

「っ……!」


 そう言ってくれるフローレンスさんの真っ直ぐ、愛情の込められた目や。

 優しく穏やかな表情に、艶のある唇を見て改めて思う。

 フローレンスさんは、本当に綺麗な人だ。

 それに、性格も本当にお優しくて、こんな人が僕のことを────


「ロッドエルくん!この間のエリザリーナ様の催し事の時はありが────えっ!?」


 僕がフローレンスさんの顔を見て、色々と思っていると。

 アシュエルさんが、僕たちのすぐ近くまでやってきた。

 すると、僕が驚きの声を上げる間もなく。

 アシュエルさんは、今手を重ねて顔を近づけている僕とフローレンスさんのことを見て驚いたように言った。


「ロ、ロッドエルくんとフローレンスって、そ、そういう関係だったの!?」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る