第189話 特別
◇レザミリアーナside◇
────先ほどまで、この国の第一王女である私と二人きりで緊張していたロッドエルが、私の魅力をこんなにも力強く……
レザミリアーナは、先ほどまでのルクスがレザミリアーナを相手に緊張していたように、基本的に力強く何かを言われるようなことがない。
両親はレザミリアーナのことを信頼しているため何かを力強く言うことはなく、エリザリーナは大きな声で何かを言ってくることはあるものの、それは力強いというわけではなく、フェリシアーナはレザミリアーナのことを姉として尊敬しているからだ……だからこそ、レザミリアーナはここまで力強く自らの魅力を伝えられて────驚きを抱きながらも、照れていた。
「本当に、私にドレスなど似合うだろうか……?」
レザミリアーナが頬を赤く染めてそう聞くと、ルクスはそれに勢いよく頷く。
「はい!レザミリアーナ様だったら、絶対に似合います!」
その笑顔に、レザミリアーナは思わず目を奪われる。
────とても明るく、眩しい笑顔だ……私はそんな明るさを持つ君の隣に立ち、この国を、そしてこの国に住まう民たちの未来を明るく照らしたい……そのためには、私も変わらねばならないな。
そう決めたレザミリアーナは、恥ずかしさを抱きながらも言った。
「君が、そう言ってくれるなら……今度、ドレスを着てみよう……その時は、君も私に付き合ってくれるか?」
「もちろんです!僕で良ければ、いつでもお付き合いします!」
「……そうか、ありがとう、弱気なところを見せてしまってすまないな」
「い、いえ!そんな!気にしないでください!」
「……」
今までもルクスを愛し支えたいと思い、運命の相手と定めていたレザミリアーナだったが、この時間によって、ルクスへの気持ちがより一層深いものへと変化した。
そして、一度咳払いすると、レザミリアーナは気持ちを切り替えて、ルクスと剣についての話をした────
「なるほど……!とても勉強になりました!ありがとうございます!」
「礼を言われるほどのことじゃない」
そう言いながらも、ルクスが喜んでくれていることを、レザミリアーナは嬉しく感じていた……いつまでもこうして居たいのは山々、だが。
「王族交流会で、今回その王族として参加している私が、これ以上長く本会場を離れるわけにはいかないな」
「っ!そ、そうですよね!すみません、僕なんかのためにここまでお時間をいただいてしまって……!」
「私から誘ったんだ、君が謝ることじゃない……それに────君と過ごす時間は、私にとって、とても特別な時間だからな」
「え……?」
ルクスは、その言葉の意味がわからずに困惑している様子だったが、レザミリアーナはそのルクスの表情すらどこか愛おしく感じながら、ルクスの手に自らの手を重ねて言う。
「ロッドエル……君のこの手が握る剣の成長を、そして……また会える日のことを、私は楽しみにしている」
「っ……!」
ルクスは手を重ねられたことに一瞬驚いて頬を赤く染めたが、すぐにレザミリアーナの目を見てその言葉に返事をする。
「はい……!僕も、いつかレザミリアーナ様ぐらい剣を扱えるようになれるよう努力を続けながら、またレザミリアーナ様とお会いできることを楽しみにしています!」
その言葉を聞き届けたレザミリアーナは、小さく口角を上げると、ルクスの手から自らの手を離した。
そして、口角を上げたまま椅子から立ち上がると、そのままいつも通り凛々しさを感じる姿勢でドアへと向かって、その個室を後にした。
「……」
────ロッドエル……私は、君のことを愛している。
心の中でそう呟いた後も、レザミリアーナは先ほどのルクスの言葉や笑顔を思い出しながら、本会場へと続く廊下を歩いて行った。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます