第180話 違和感
王族会議の開始を宣言すると、レザミリアーナは続けて言った。
「事前に通達しているが、今回の議題は、近々貴族学校で行われる第三回王族交流会に私たち三人の中の誰が行くのかということだ」
「はいは〜い!私!私行きた〜い!」
何の躊躇も無く堂々と手を挙げてそう言うエリザリーナに対して、レザミリアーナが言う。
「エリザリーナは第二回王族交流会に参加していただろう」
「でも、剣術大会もあって、第三回が行われるのはあれから約二ヶ月後でしょ?じゃあ別に、前回参加してたとか関係無くない?」
レザミリアーナにそう言ったが、そんなエリザリーナに向けてフェリシアーナが言う。
「そういう事でしたら、私は第一回王族交流会の時より三ヶ月まが空いているので、エリザリーナ姉様よりも私の方が第三回王族交流会に参加するのに適していると思います」
レザミリアーナの前であるため、一応姉であるエリザリーナに対して敬語でそう言ってくるフェリシアーナ。
────まぁ、邪魔して来るよね……でも、そんな簡単に思い付くような言い分じゃ、私がルクスに会いたいっていう気持ちを邪魔することなんてできないよ。
そう思いながら小さく口角を上げると、エリザリーナは言った。
「確かに日数だけで言ったらそうだけど、フェリシアーナは貴族学校の入学式と第一回王族交流会の二回貴族学校に行ってるよね?これで第三回もまたフェリシアーナだったら、私たちが変な誤解されちゃうかもしれないよ」
「そのようなことは、お姉様たちが忙しいと説明すれば済む話です」
「忙しいからってたった一日の交流会にも出られないなんて、心象が悪くなるんじゃないかな?」
「……」
「……」
二人は静かに互いの目を見合う。
────フェリシアーナが何を言ったって、全部包み込んで最終的には私がこの第三回王族交流会に参加する!それで、参加してルクスと……
エリザリーナがそんなことを考えていると、レザミリアーナがその沈黙を破るように言った。
「議論しているところ申し訳ないが、次の第三回王族交流会には私が参加させてもらおうと思っている」
その発言に驚いたのか、フェリシアーナは目を見開くと困惑した様子で言った。
「レザミリアーナ姉様が……ですか?」
その確認に対して、レザミリアーナは頷いて答える。
「あぁ、第一回王族交流会ではフェリシアーナが、第二回王族交流会ではエリザリーナが……となると、次の第三回王族交流会に私が参加するというのは自然な流れだろう」
第一王女ということもあって、普段は他国との交渉やその他の職務、鍛錬などで忙しくしているレザミリアーナが、必ずしも参加しなければならないというわけではない催し事に参加するとは想定していなかったのか、フェリシアーナはそんな言葉に対して打つ手が無い様子だった。
だが、エリザリーナは流れとしてそういった話になることは予測していたため、すぐに用意していた回答を出す。
「そうだけど、レザミリアーナお姉様はこの前の剣術大会で大きい催し事終えたばかりだし、今だって忙しいだろうからここは私に任せてよ!」
こう言えば、特に貴族学校に執着する理由の無いレザミリアーナは、普段の職務を優先するためにも「そうか……そこまで言うなら、今回の件はエリザリーナに任せよう」とまで都合良く行くかはわからないが、少なくともエリザリーナかフェリシアーナのどちらか二人に任せると思っていた……が。
「いや、気持ちは有難いが、今回は私が参加させてもらう……前回の剣術大会で、貴族学校の中に数名見込みのある剣士が居たからな、一度それらの人物たちと話しておきたいんだ」
「話しておきたいって、それだけのために王族交流会に参加するの?」
「元々、王族交流会とはそういう場だろう……何かおかしいか?」
「……」
────確かにそういう場だけど……本当に必要な時しかこういう催し事に参加しないレザミリアーナお姉様が、それだけの理由で……?
何ともいえない違和感を抱きながらも、エリザリーナがそれを言葉にできないでいると、レザミリアーナは一度二人のことを見てから言った。
「異論が無いなら、今日の王族会議はこれで終了とする……各自、職務に戻ってくれ」
「……はい」
「は〜い」
エリザリーナとフェリシアーナの二人は、同時に会議室から出る。
そして、エリザリーナは横目にフェリシアーナのことを見て思う。
────フェリシアーナは違和感とか感じて無さそう〜、レザミリアーナお姉様のことはちゃんと尊敬してるからさっきの言葉も純粋に受け取ってるよね〜……私のこともそれぐらい尊敬してくれて良いと思うんだけどな〜。
そんなことを思っていると、フェリシアーナが口を開いて言う。
「今回はお互いに思うようにはいかなかったけれど……この会議室へ入る前の会話は忘れていないから、覚えておきなさい」
そう言い残して、エリザリーナに背を向けてこの場を去って行った。
「あ〜あ、これじゃあただ無駄にフェリシアーナの怒り買っちゃっただけじゃん……でもまぁ、気になることもあるし、今度レザミリアーナお姉様に探り入れてみよっかな〜」
そう呟くも、これ以上会議室前に居てもすることは無いため、エリザリーナもその場から離れて、今日のところは大人しく自室で職務を行うことにした。
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