第133話 宣言
豪華客船パーティーが終わり、豪華客船が港に着くと、僕とフェリシアーナ様、エリザリーナ様、バイオレットさんはそれぞれ解散して、その後豪華客船を出る時にはぐれてしまっていたエリナさんと合流することができた。
「エリナさん!」
「ごめんね?ルクス、ちょっと色々手間取っちゃって、結局最初の方しかルクスと過ごせなかったね」
「き、気にしないでください!エリナさんが誘ってくださったおかげで、とても楽しい時間を過ごすことができました!」
僕が心の底からそう伝えると、エリナさんは明るい声で言った。
「良かった〜!ねぇ、またこういうの誘ってもいい?今度は本当に、二人になれる場所とかで!」
「もちろんです、二人でたくさんお話しましょう」
「うん!」
そんなやり取りを最後に互いに手を振ってお別れすると、僕は馬車のある場所に向かってそのまま馬車でロッドエル伯爵家の屋敷へ帰宅した。
すると────
「お帰りなさいませ、ご主人様!」
シアナがいつも通りそう言いながら僕に頭を下げて出迎えてくれた。
「ただいま、シアナ……こんな時間に外に出て帰ってくるようなことは滅多に無かったから色々と新鮮な気持ちだよ」
「本日は豪華客船パーティーということでしたが、普段はあまり夜遅くに外に出てはいけませんよ?夜にはたくさんの危険が潜んでいますから」
「うん、ありがとう、気を付けるよ」
その後、僕とシアナは一緒に僕の部屋に入ると、僕はシアナに今日の豪華客船パーティーであったことや、僕が夢見た光景を話した。
フェリシアーナ様に婚約の話をいただいたことは話さなかった。
シアナを混乱させてしまうかもしれないし、何よりお父さんにどう説明すれば良いのかわからなかったからだ。
僕がフェリシアーナ様への返事をちゃんと決められる時が来るまではこのことをシアナにもお父さんにもこのことは伝えられない。
しばらくの間シアナと二人で話すと、そろそろ眠る時間が近づいてきたため今日はここまでということになって、シアナは僕の部屋から出て行った。
……考えないといけないことはたくさんあるけど、これから剣術大会の特訓でもっと忙しくなるから、僕はしっかりと眠っておくことにした。
◇シアナside◇
「────お嬢様、本日はいかがでしたか?」
シアナが自室に戻ると、そのシアナの部屋でシアナのことを待っていた黒のメイド服姿のままのバイオレットが、シアナに向けてそう聞いた。
「しっかりと婚約の話をルクスくんに伝えることはできたわ、返事は後日もらうということになったけれどね」
「そうですか……ロッドエル様からしてみれば、第三王女フェリシアーナ様から突然婚約の話をされたわけですから、その場で決めることなどできなかったのでしょう」
「そうね……どちらにしても、ルクスくんに婚約の話をしてしまった以上、もう後戻りすることは許されないわ……これからは、婚約の話をしたからこそできる方法で、ルクスくんにたくさんアプローチを仕掛けていくわよ!」
シアナがそう宣言すると、バイオレットはシアナのその宣言を聞いて少し口角を上げながらシアナに頭を下げて言った。
「はい……お嬢様の願いのために、全力でお力添えさせていただきます」
それを聞いたシアナは満足そうな表情を見せると、少し間を空けてから言った。
「……ところでバイオレット、一ついいかしら」
「なんでしょうか?」
バイオレットがそう聞くと────シアナは、声を大きくしてバイオレットに飛びつくようにして言った。
「私!今日ルクスくんと恋人繋ぎをしたのよ!」
「そうなのですね、いかがでしたか?」
「本当に良かったわ!当たり前かもしれないけれどルクスくんは剣を扱っていることもあって意外と手が大きくて、あと普通の手繋よりも恋人繋ぎの方が一本一本の指がちゃんと触れ合ったり……あぁ、あのルクスくんの手でいつか私のことを力強く抱きしめて欲しいわ……あとは────」
その後、シアナはしばらくの間バイオレットに似たようなことを話続け、バイオレットはいつも通りそれを最後まで聞き届けた。
そして────それを聞いたバイオレットは、自分自身で少し恥ずかしいと思いながらも、自分もいつかルクスと手を繋ぎたいという気持ちを密かに高鳴らせていた。
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