第127話 姉妹
そして、恐怖を感じた二人は互いに互いのことを見合って言う。
「フェリシアーナ、ルクスはどこ?もしかして、私が居ない間にどこかに連れ込んだりしたの?」
「それは私の言葉よ、私が他国の貴族たちと話している間にエリザリーナ姉様がルクスくんのことをどこかへ連れて行ったんじゃないかしら?」
「私はついさっきまで本国の貴族同士でトラブってたからその仲介役をしてたよ、私が行った後ルクスのことをどこに連れ込んだの?」
「さっきも少し言ったけれど、私も他国の貴族たちに第三王女だと話しかけられて動けなかったのよ、その囲いのせいでその間はルクスくんと話すどころかルクスくんのことを視認することもできなかったわ」
「そんな言葉を私が信じると思ってるの?」
互いに相手が自分の居ない間にルクスのことをどこかへ連れ込んだと思い込んでいる二人だったが、シアナは大きなため息をついてから言う。
「残念だったわね、エリザリーナ姉様……エリザリーナ姉様がどんなことを企んでいたとしても、私のことをルクスくんから引き離すことはできないわ」
そう言うと、シアナはある場所へ向けて足を進め、エリザリーナも不満そうな表情でシアナについてくる。
すると、目立たない壁の隅に一枚の小さな紙が置かれていたため、シアナはそれを拾う……そのシアナの行動を疑問に思ったのか、エリザリーナはシアナに聞いた。
「そこに紙があるってわかっててここまで歩いてきたみたいだけど、その紙は何なの?」
そう聞かれたシアナは、その紙をエリザリーナに見せながら言う。
「これはバイオレットが残したものよ……バイオレットには、万が一ルクスくんに何かあった場合私のことではなくルクスくんのことを優先するように伝えてあったの、ただ突然バイオレットが居なくなるだけだと私も対処できないから、バイオレットにはこうして現状を紙に残すよう指示してあったの」
「へぇ、第三王女の力を使えば侵入は簡単だとしてもこの明るく人の多い場所でルクスのことを常に見守り続ける場所に居るのはかなり難易度が高いと思うけど流石バイオレット……あと、それを指示したフェリシアーナも私の自慢の妹だね」
「エリザリーナ姉様に褒められても何も嬉しくないけれど、とりあえずこの紙を開けばエリザリーナ姉様がルクスくんに何をしたのかもハッキリするわ」
そう言ってから、シアナはそのバイオレットの残した紙を開いた。
すると、そこにはこう書かれてあった────
『エリザリーナ様とお嬢様がルクス様の元を離れた後、ルクス様は服装からしておそらく他国の人物だと思われる一人の女性に話しかけられ、その方に勧められた料理に口を付けました。そして、それからお二人で少し人気の無いところへ行った途端にルクス様がその場に倒れました。おそらくは遅効性の睡眠薬だと思われますが、その後数名の人物が現れその女性とともにルクス様のことをどこかへ連れて行こうとしております。ですので、私は尾行を開始し場合によっては殲滅致します、ルクス様のことは私がお助け致しますので、お嬢様とエリザリーナ様は安全なところでルクス様のお戻りをお待ちください』
それを読んだシアナは考える。
────他国の女……?どれだけ強引な手段を使うとしても、エリザリーナ姉様がわざわざ他国の人間を使うとは思えない……そんなことをしなくても、エリザリーナ姉様には本国内にたくさん自由に動かせる貴族たちが居るのだから……となると。
「他国の女がルクスくんに手を出したようね……目的は────」
「私とフェリシアーナの情報をルクスから聞き出そうとしてる、もしくは私とフェリシアーナの二人と接点のあるルクスを利用して何かの交渉材料に使おうとしてる、かな……後者だけならともかく、前者だとしたらルクスに危害が加えられるかもしれない」
「その通りよ」
ルクスの性格を考えれば、きっと自らが痛めつけられたとしてもシアナやエリザリーナの情報を相手に漏らすことはないだろう。
だが、だからこそ一刻も早くルクスのことを助けないとルクスが痛め続けられ、最悪の場合……
そのことを想像したシアナは、目を虚にして無機質な声で言った。
「どこの誰だか知らないけど、ルクスくんにこんなことをしてきたのなら命を奪うしかないわね」
そう言ったシアナに対して────エリザリーナも、シアナと同じように目を虚にして無機質な声で言った。
「うん、どこの誰でも関係無いよ……ルクスにこんなことしたんだから、命の一つぐらい奪わせてもらわないとね」
「こういう時は話がスムーズで助かるわ」
「普段はあんまり感じないけど、やっぱり姉妹ってことかな」
二人は互いの虚な目を見合いながらそう言うと、同じ方向を向いて足を進めながら相変わらず無機質な声音で同時に言った。
「それじゃあ、処罰に行くわよ」
「じゃあ、処理しに行こっか」
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