第80話 第二回王族交流会
◇バイオレットside◇
────第二回王族交流会当日。
バイオレットは、心待ちにしていた日がやって来たことに、一人ロッドエル伯爵家の屋敷の陰で胸を躍らせていた。
「ロッドエル様……ようやく、ロッドエル様とお二人で過ごせる日がやって来ました」
胸を躍らせることにより、精神的に隙や油断を作るのがいけないことだとはわかっていながらも、今のバイオレットにそれを止めることはできない。
ずっと第三者の視点で、シアナ、フローレンス、赤のフードを被った人物とルクスが過ごしているのを、見せられていて、自分もいつかはルクスとそれらの人物たちと同じように二人で過ごしてみたいと願っていた。
そして、そんな願いがついに今日叶う……当然、今日だけで終わらせるつもりはないが、それでも楽しみなものは楽しみだ。
ルクスという存在と、恋愛感情というものが少しずつ自らの暗さを照らしてくれているのを感じる。
そんなルクスと過ごす時間を想像し、思わず少し口角を上げてバイオレットは呟く。
「ロッドエル様……本当に、今から待ちきれません」
◇フローレンスside◇
「王族交流会……」
フローレンスは、朝起きると身支度を整えながら考え事をしていた……と言っても、その考え事というのは殺伐としたものではなく、この王族交流会をルクスとどう過ごすのかという至ってシンプルなものだった。
「ルクス様はおそらく居らっしゃる王族の方が第一王女様だとしても第二王女様だとしてもお楽しみになされていると思いますが、私としては居らっしゃる王族の方が第三王女様で無いのであれば、正直どちらの方でも構いません」
ルクスに過度な執着、それもフローレンスにとっては是とすることのできない方法を取る第三王女が来るとなれば、以前の王族交流会で行われたことなどに対する対策を考えた上で、どうルクスからフェリシアーナを引き離すかまで考えなければならなかったが、フローレンスは王族交流会という場の目的を考えて、今回フェリシアーナが来ることは絶対に無いと踏んでいる。
そして、ルクスに執着の無い他の二人の王女が来る分には特に考えることはないため、この王族交流会をルクスと過ごし、どう関係性を進めるかを考えていた。
「ルクス様と共にお食事をし、音楽を楽しみ、少し深いお話などをしてみても楽しいかもしれませんね」
フローレンスは、ルクスと共にこの王族交流会を過ごすことを想像すると、とても穏やかに微笑んでいた。
「────ルクス様……ルクス様のことは、私が必ず……」
◇ルクスside◇
────第二回王族交流会当日の朝、僕の部屋で貴族学校に向かう準備をしていると、僕の部屋の掃除をしてくれているシアナから声をかけられた。
「ご主人様、本日は王族交流会でしたよね?」
「うん、フェリシアーナ様は二度貴族学校に来てくださってるから、今日はフェリシアーナ様じゃない王族の方が来てくださるんじゃないかな……本当に楽しみだよ」
「……ご主人様は、本日居らっしゃるのが第三王女フェリシアーナ様だった場合と、そうでない方が来てくださる場合だと、どちらの方が望ましいですか?」
シアナが、どこか不安そうな声音でそう聞いてきたため、僕はそれに即答する。
「それはもちろんフェリシアーナ様だよ、他の王族の方ともお会いしてみたいっていう気持ちはあるけど、それ以上にフェリシアーナ様とは色々とご縁があるし、何よりもっとフェリシアーナ様と楽しく過ごして仲良くなりたいからね」
「っ……!」
僕がそう伝えると、シアナは口元を強く結んだ────僕はその瞬間、自分の発言を振り返り、それに対しての訂正を行う。
「あのフェリシアーナ様と仲良く、なんてちょっと過ぎた言葉だったね」
シアナが口元を強く結んだ理由が、その僕の発言のせいだと思った僕はすぐに訂正を行なったけど、シアナは優しい表情で首を横に振ってから言った。
「そのようなことはありません!ご主人様がフェリシアーナ様と仲良くなりたいと思われたのであれば、それを口にすることは何も悪いことでは無いと思います!」
僕はそんなシアナからの言葉を聞いて、僕はシアナの目を真っ直ぐ見て言う。
「ありがとう、シアナ……本当に、シアナは優しいね」
「い、いえ……!私は、思ったことをそのまま伝えさせていただいただけです……!」
シアナは、頬を赤く染めて照れた様子でそう言った。
僕はそんなシアナのことを見て微笑ましい気持ちになると、朝から明るい気分になり、その気分のままシアナに見送られて馬車で貴族学校へと向かった。
そして────いよいよ、第二回王族交流会が幕を開く。
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