第38話 学力試験結果
◇ルクスside◇
「おはようございます、ルクス様」
「フローレンスさん、おはようございます」
貴族学校に登校して僕の席に座ると、隣の席に座っているフローレンスさんが朝の挨拶をしてくれたため、僕も挨拶を返す。
すると、フローレンスさんが言った。
「先日の学力試験の結果が出たので、よろしければ一緒に見に行きませんか?」
先日の学力試験というのは、王族交流会から数日後にあったその名の通り学力を測るための試験のことで、貴族学校の試験では貴族に必要な様々な分野が問題として出題され、それに答えるというもの……この貴族学校初の筆記試験ということもあり、他の生徒たちに少し緊張感が走っていたのを覚えている。
その試験の結果が出たのであれば、当然それは見ておきたい。
「まだ数日しか経っていないのにもう結果が出たんですね、僕もフローレンスさんと見に行きたいです!どこで見れるんですか?」
僕がそう言うと、フローレンスさんは少し嬉しそうにしながら言った。
「講義室後ろの最奥に張り出されているようです、行きましょうか」
「はい!」
ということで、僕とフローレンスさんは席を立ち上がって、講義室の後ろへ移動した。
すると、後ろの黒板に大きな紙が張り出されていて、その紙には学力試験の結果が順位形式で書かれていた。
「順位がわかってしまうのは、少し緊張しますね」
「そうですね……この順位は、同学年の方達との全科目合計点数の順位だそうです」
「なるほど……」
フローレンスさんの説明を受けて、僕は早速その順位の書かれている紙に目を通すことにした。
貴族学校は、一学年に百人ぐらいだから、五十位以上なら一応平均よりは点数が高いと言うことになる……緊張感を紛らわすためにそんなことを考えながら、僕は早速一位の名前に目を通した。
「えっ……!?」
僕は、その結果を見て思わず驚く。
そこには────
『一位 フローリア・フローレンス 千点』
と書かれていて、僕は思わず隣に居るフローレンスさんに話しかける。
「フ、フローレンスさん!今回の試験の満点の千点で一位なんて……賢い方だとは知ってましたけど、本当にすごいです!」
「たまたまです、次回からはこうはいかないでしょう」
フローレンスさんは、穏やかに微笑みながらそう言った。
今回の試験科目は十科目で一科目百点満点、つまりフローレンスさんは全ての試験で百点満点を取ったということになる。
当たり前だけど、そんなことはたまたまでできることではない。
フローレンスさんのことを羨望の眼差しで見ていた僕だったけど、僕の順位もしっかりと見ておきたかったため、僕はフローレンスさんから順位表へと視線を移す。
……そして、フローレンスさんの名前から下へ視線を逸らすと────
『二位 ルクス・ロッドエル 九百三十七点』
「え……!?」
僕が……二位!?
自分の順位に驚いている僕の隣で、フローレンスさんが優しい声音で言ってくれた。
「おめでとうございます、ルクス様」
「あ、ありがとうございます……でも、フローレンスさんよりも六十三点も点数が低いのに、どうして僕が二位なんでしょうか?」
「噂で聞いたことですが、貴族学校の最初の試験は、通例として少し難しいものを出題しているようです……なので、入学してからではなく、入学前からも勉強している勤勉な方で無ければ八百点を超えることも難しいようです」
「そうだったんですか……それなら、フローレンスさんの言葉を借りるなら次回からはこうはいかなそうですね」
僕がそう聞くと、フローレンスさんは不思議そうにしながら言った。
「そうでしょうか?ルクス様なら同じかそれ以上の結果を出すことも可能だと思いますよ」
「僕は、入学前から勉強してたからこの順位を取れただけです」
「……ルクス様は、ご自身が思っている以上にずっと────」
フローレンスさんが何かを言いかけたところで、三人の男子生徒が僕たちのところに近づいてきて、その中の一人が僕に話しかけてきた。
「ロッドエル……今日から剣術の授業があることは知ってるよな?」
突然高圧的に話しかけられた僕は、できるだけ揉め事にならないように話す。
「え?は、はい……えっと、お名前は────」
「今日の剣術の授業で、俺たちと手合わせしろ」
「て、手合わせ……?というか、俺たちって、三人同時にってことですか?」
「そうだ、悪いがこっちも面子がかかってるんでな、お前に拒否権はない」
それだけ言うと、三人の男子生徒は僕たちの元を去って行った。
────今日の剣術の授業で、三人同時に手合わせ……!?
僕は突然のことに、ただただ困惑と驚愕を覚えることしかできなかった。
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