妹のダンジョン配信でカメラマンをしている僕、妹の配信に無双してる姿が映ってしまった
桜木紡
第1話 危機に陥っちゃうみたいですよ!?
︎︎学校が終わったあと、僕は今日も今日とて妹のダンジョン配信にてカメラマンをしていた。
「いやぁ今日はいつもよりもモンスターの数が多い気がするなぁ……。一体一体は弱いけど、ここまで多いと疲れちゃうよ」
『スライムも数がいたら面倒くさいよな』
『さっきからグチョグチョ鳴ってるのはなに?』
「こっちにもスライムが来てるのでちょくちょく踏み潰してます。スライムとはいえ、撮影の邪魔になるので」
『絶対カメラマンの足ベットベト』
『気持ちいいなこの音』
『撮影の片手間で潰されるスライム可哀想』
︎︎そして僕達はダンジョンの奥に進んでいく。奥に進むにつれモンスターも強力になっていくので僕は左手にカメラ、右手に剣という状態だった。
︎︎あくまでメインは妹、僕はそれを撮影するだけで、僕がモンスターを倒しているのは映さなくていい。
「えい! ふぅ……さすがにオークにもなったらスライムみたいに楽に倒せないなぁ。お兄ちゃんの方は大丈夫?」
「避けるので精一杯かな、ごめんだけど僕のところに来てるオークも倒してくれないかな? 僕はあくまでカメラマンだから戦えないし」
︎︎もちろん嘘である。もしもの時に僕が戦えないと妹を助けることが出来ないし、何回も言うけど配信のメインは妹なので僕が出しゃばる訳にもいかないのだ。
︎︎あくまで僕はカメラマン、配信を支えるだけの存在だ、それだけは忘れてはいけない。
『礼華ちゃんって普通に成人してる冒険者と同じぐらいの実力あるよね』
『協会に行ったらランク試験ができるんじゃなかったっけ?』
『平均がEランクだったけか。でもCぐらいはありそうだな』
︎︎確かにランク制度っていうのもあった気がするけど、成人してからじゃないとできないはずだ。ランクは【冒険者】がどの程度のモンスターまで相手にしていいかを図る重要な役割もあるというのに。
︎︎【配信者】にはランク制度は無いし、【冒険者】みたいに相手にしてはいけないモンスターの制限が無いのが何より問題なのだ。前にもニュースになったのだが、二人組の男子配信者が調子に乗ってモンスターに挑んで死亡するという事があった。
︎︎正直僕は【配信者】もランク試験を受けれる……というか、受けないといけないようにした方がいいと思うけどね。そもそもとして【冒険者】は試験を受けないとモンスターを倒すことすら許されない、つまり【冒険者】になれないのに【配信者】は受けなくても許されるからあんな事件が起こってしまうのだ。
「試験って未成年は受けることができないらしいんだよね。お兄ちゃんは受けてるんだっけ?」
「そもそも受けてないと礼華が倒したモンスターの素材を売れてないよ。はぁ……【配信者】も試験を受けないといけないようにすればいいのに」
『それは同感』
『まぁ最近死者も出たしな』
『協会本部の奴ら、この配信見てるかー』
︎︎僕達はさらにダンジョンの奥へと進んでいって、明らかに他の場所とは違う雰囲気を醸し出している部屋に着いた。モンスターもいないし、壁も今までとは違って綺麗に整えられている。
「いかにも何かありますよって感じの場所だねぇ。もしかしてボス部屋なのかな、ここ」
「うーん、今までの場所とは違うしモンスターもいないからその可能性の方が高いかも。戦ってみるのもいいけど、危なくなったら逃げるように」
︎︎ボスモンスターとなると今までのモンスターとは強さが桁違いなので巻き込まれる可能性も考えて僕は結構離れている。
『ボスやろな』
『部屋がそんな感じしてるわ』
『ボスって具体的にはどのくらい強いん?』
『よくいるモンスターを十倍の強さにしたぐらい』
︎︎妹が部屋に足を踏み入れると、部屋の真ん中に巨大なモンスターが出現した。やっぱりボス部屋だったか。
「ゴブリンロードくらいならまだ何とかなるかなぁ。お兄ちゃんは周りに気をつけながら撮影してねー!」
「了解」
「ヴァァァァァァ!」
︎︎耳を
︎︎今までの配信でもゴブリンロードとは戦ったことがあるし、余程のことがない限りは大丈夫だろう。
『鼓膜破れるかと思ったわ』
『迫力凄いな、本当に人間が相手していいモンスターか、こいつ?』
『ランクで言ったらDだし、倒しやすい部類だと思うぞ』
『俺だったら逃げてる』
『礼華ちゃん大丈夫かな』
「せいっ! うーん、ボスにもなるとなかなか硬いね。ダメージが通ってる気がしないや」
︎︎妹は攻撃を華麗に避けて的確にゴブリンロードの弱点に一撃を入れていってる。このままいけば普通に討伐することが出来るはずだ。
︎︎一つ不安があるとするのならイレギュラー、モンスターが獰猛化してさらに強化されること。イレギュラーが発生すればダンジョンのモンスターは外に出てしまう可能性がある。
︎︎イレギュラーが起こった場合など、やむを得ない場合はランクなどを無視して戦うことが許されるのだ。
「せいやっ!」
「礼華、ちょっと下がって。ゴブリンロードの更に後ろ、何かいる」
「え? うん、わかった」
︎︎一旦妹にカメラを預けて前に出ると、ゴブリンロードの体を血の塊が貫いた。
「ガァッ!?」
『ふぁっ!?』
『何がおきたんだってばよ』
『恐ろしく早い攻撃、俺は見逃したね』
︎︎まだゴブリンロードを殺した相手の姿は見えないけど、気を抜いたら殺られるな。相手は人間じゃない、理解できないような攻撃もしてくるだろう。
「ねぇお兄ちゃん、この部屋から出れなくなってるよ!」
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