第2話 勇者 神成 刹那

勇者 セツナ視点


魔王が倒れた後、勇者セツナこと。俺は今の状況を頭の中で色々整理していた。


魔王との最終決戦。両者の大技が炸裂し。次元の間が生まれ。俺は生まれ故郷の地球に帰ってきたのだ。


周りを確認して見る。


自分が幼少の頃に過ごしていた部屋の中にいる。そして驚いた事にあちらの世界に飛ばされて四年~五年位経っていた筈だが。それが何でか分からないんだが、あちらの世界に飛ばされた時と同じ年齢の14才のままだ。


そして次に、現在の日付も確認してたが。これも異世界に飛ばされた時の日付だった。


次元の間の影響で時間が巻き戻ったのか? 全くわからない。だが、わからないなら仕方がない若返ったと思って感謝しよう、ありがとう神様!


次にあちらの世界で使われていた魔法も試したが。これはこっちの世界(地球)では、使えなくなっていた。


勇者として召還され、死ぬ気で修行をし、手に入れた魔法の力だったが魔力の概念が無いこっちの世界では発動すらできないみたいだ。


お次は、持ち物チェックと、聖剣エクスカリバーはあちらの世界に置いてきてしまったようだ。今は何処にもない。魔法の袋は腰に着けていたので一緒にこちらの世界に飛ばされていた。


この魔法の袋には、あちらの世界にいた時に、外部からの干渉遮断用の魔法というものを付与していたので、もしかしたら中身のアイテムは使えるかもしれないと考えた。中のアイテムを取り出す。


収納魔法で魔法の袋の中は、物の大きさ、生物関係なく無尽蔵に収納できる用になっている優れた魔道具だ。


とりあえず、ポーションを一本取り出して飲んで見ることにした。


致命傷でも飲めば立ち所に全科回復する優れものポーションで。『魔術院』時代。妹弟子のサーシャとの協同研究で作った特製のポーションであったりもする。


あちらの世界では。魔法があったお陰で色々な事を修行の合間に研究できた。


‥‥‥‥なるほど、魔法の袋の中のアイテムは普通にまだ使えるのか。これは嬉しい。こちらの世界で困った時にでも使おう。


そして、最後にぶっ倒れた魔王さんの様子を確認する事にした。


着ている頭の鎧を外す。見た目は今の俺と余り年が変わらなさそうな金髪の可愛らし少女だ。


この少女が、あの魔王さんだとはとても思えない位に可愛い。確かあちらの世界では、仮面みたいなのを着けていて魔王の素顔なんて見えなかったな。


ただ、どれだけ可愛いかろうと精神年齢的に18才位の俺には、中学生位の女の子にしか写らなかった。‥‥起きたらさっさとあちらの世界に帰って頂こうか。


そして、ただいま素晴らしき現代社会よ。


そして、さようなら理不尽な異世界よ! もう二度行きたくない理不尽な世界よ。


とっそんな事を考えながらいると眠っていた魔王さんが起き上がるようだ。


魔王さん事。ユナ・エスフィールにこちらの世界(地球)に飛ばされてからの事、魔王エスフィールが倒れている間に状況を整理したこと等を丁寧に説明した。


「なるほど。ここは勇者セツナが生まれ育った世界なのか。そして私は一緒に次元の間に呑まれて。着いてきてしまったと。そしてこの世界では、魔法が使えず、あちらにも帰れないだと?!」


「そうなるね。今の状況を理解できたみたいだし。そろそろ家から出てもらってもよろしいか?(四年ぶりにゴーチュウブ君を見るのだ。さらばファンタジー。お帰りゴーチュウブ君)」


「‥‥お主には人の心が無いのか? 何もわからない私に出ていけとかよく普通に言えるな? お主、本当に勇者か?」


「もう元勇者だよ。そもそもあっちで勇者なんてやってたのもこっちの世界に戻る方法を探す為だけで。嫌々やってただけなんでね。そういう訳でさようなら魔王エスフィール殿。去るがいい!!」


「おい、鬼畜勇者。誰のせいで私がこんな世界に飛ばされたと思っている?」


「君が勝手に大技撃つのが悪いんじゃないか? あんなの喰らったら普通の冒険者なんて骨も残らないぞ」


「うるさい。うるさーい。お主が、馬鹿デカイ光魔法を撃ってきたからこちらも対応しただけじゃ!!そんなことよりも私がこんな状況になり、追い詰められた責任をちゃんと取ってもらうからな勇者セツナよ!」


「責任? なんでだ。魔王レベルなら異次元に干渉できる魔道具を複数持っているものではないのか?それであちらの世界に帰ればいいだけだろう?」


「そんな便利アイテムを、魔王である私が、持ち歩くわけなかろう!アホなのか勇者よ!」


「(アホは君だろ) 何で貴重な魔道具を持って無いんだよ? 魔王クラスなら色々持っているハズだろう?」


「魔王軍の活動の為に売ったのじゃ!」


「おい、今、なんて言った?」


「魔王軍の活動の為にほぼ売ったのじゃ! 魔王軍の幹部達に渡した。奴ら金に困っておったからな」


「……なんだと? (それでかやたらあっちで戦っていた魔王の幹部や魔物が強かったのは。このアホ魔王が、レジェンドアイテムをあっちこっちにばら撒いてやがッた)」


「そういう訳で私が持っているのはこの魔王の鎧位なものじゃ! わかったか鬼畜勇者よ! だからさっさと責任を取って私を養い、あっちの世界に帰らせよ!」


「やなこった! 今まで戦っていた奴らが強かったのは貴様のせいだと? あっちに居た時、そのせいでどれだけ死にかけたと思っている? 俺じゃ、無かったら普通の奴なら死んでるぞ」


「勇者の強さなら問題無かろ。それに最後には私の居る魔王城の際奥(さいおく)の間までたどり着いた猛者だろう? だから責任を取って私をこの小屋におけ」


「誰の家が小屋だと? 俺の住んでいる家をバカにする気か?(イライラ)」


「私が住んでいた魔王城にくらべれば小屋レベルの家じゃなぁ(笑)」


「(この魔王がぁ(怒)、‥‥いかん。いかんやっとこっちに帰ってこれたんだ。こんなことで怒っていても時間の無駄無駄と) とりあえず、色々と君が残念魔王なのは分かった。しばらくの間は居ていいよ。働いて1人で生活が送れるようになったら出てって行くということで」


さっさと独立して出ていってもらおう。


「働く? 一人で生活? 何でじゃ? 嫌じゃ、働きたくないのじゃ」


‥‥その時、俺の怒りの沸点が、頂点に達した。


 あちらの世界には魔法という概念が存在した。召還魔法というものもあり、その召還魔法であちらの世界事、異世界・アリーナに召還された勇者事、俺、神成(かみなり)セツナであったりする。


突然、呼ばれ。流されるままに剣と魔法の修行をし、一年という長い旅の末、魔王城にたどり着き、魔王との最終決戦後、なぜかこちらの世界、地球に戻って来ることができた。(魔王のおまけ付き。)


あちらの世界の生活水準は中世ヨーロッパレベル位だった為、あちらでの生活は現代っ子である俺には、キツイものだった。不便、とにかく不便だった。電気が無い、乗り物は馬、恐ろしい魔物の数々……


だが、それもさっきまでの話、こっちに帰って来た事だし、これからは平和に暮らして行こう。


そう決めた矢先、一緒に次元の間を超えて着いて来た魔王ユナ・エスフィールの態度にぶちギレそうになっている。


こんなのがラスボスだったと思うと勇者の時に頑張っていたのが、馬鹿らしくなってくるな。


だが、魔王ユナ・エスフィールがこっちに来てしまったのは、俺のせいでもあるため、この魔王があちらの世界に帰れるまでの間はこの家で面倒を見ることにした。


幸い、家の両親は母が海外勤めで、父は都内のホテルで暮らしている為、家には現在、俺しか普段住んでいなかったからか、部屋は空いているし。家族は当分帰ってこないだろう。


それに勇者パーティーの時に夜営では。女の子である僧侶と魔法使い等の子達とは寝食を共にしていたが如何(いかが)わしい事は何も起きなかった為。


この魔王と一緒に住んでいてもあちらからちょっかいをかけて来なければ何も起きるまい。


年齢を聞くと俺の現在の年齢とほぼ変わらない14才らしく、幼さが残る可愛いらしい金髪の美少女だか、精神年齢が、18~19才の俺には何も響かなかった。


こちらに戻って来て体が若いままだったが、精神年齢だけが、歳を取っている状態。もっと年上の美女が、好みになっている。年上お姉様サイコーである。


そんな事を考えていると先ほどの怒りも治まり、これからどうしていくか話し合う事にした。


「とりあえず、魔王さんが、」


「ユナで良いぞ!魔王、魔王!言われるのも疲れるしのぅ」


「わかった、アホ‥‥ユナ」


「今、アホとか言うつもりだったじゃろう!? キィー!」


しまった! つい本音が出てしまった。疲れているな俺、うん。


「じゃあ、俺の事も勇者では、なくセツナでよろしく」


「この男。くう! もういいわい。セツナのバカ!」


この魔王、いきなり、呼び捨てである、魔王の教育者はどうなっているのかと考える俺であった。

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