3章 第6話 影から見るもの
「ファイア。アルタイル!」
「イエス。マスター」
アクイラの命令で再度、炎の玉をだすアルタイル。
「デネブ。シャボン」
「イエス。マスター」
ルベルもデネブに命じてシャボン玉を発生させる。
「アルタイル!そいつにぶつけてやれ」
「デネブ、防げ」
アルタイルの炎がデネブを襲うが、その炎はシャボン玉で相殺された。炎とシャボン玉がぶつかると爆発が起きて煙が舞い上がる。
(シャボン玉は水の特性があるな……。埒があかねえ。ウルラの方も気になるってのに)
アクイラは少し焦り始めた。ルベルがいたのは少し想定外だった。
(シャボン玉と火なら、相性が良い。いける)
デネブとアルタイルの能力では相性が良かった。それがルベルを多少冷静にしていた。
「星辰逃げろ!」
ルベルは星辰に言った。
「え、急になんで……」
「お前は、そうチェスだったか。この場では、そのゲームで言うキングだ。行け。こちらは問題ない」
「わ、分かったよ」
星辰がルベルに背を向ける。
「逃がすかよ。アルタイル。フレイム! そのファミリアにぶつけてやれ!」
「イエス。マスター」
アルタイルの周りに炎の玉が作り出される。ただし、先ほどより大きい。
その炎は、燃え盛りながらデネブへと突撃してきた。
「デネブ。シャボン! 相殺しろ」
デネブも大きいシャボン玉を出して炎を相殺した。
「ふん。ワンパターンだな……」
ルベルが飽きれた様に言った。
炎とシャボン玉の爆発により、周りが煙が立ち込めて目の前の視界は悪い。。
「そうかよ」
だが、次の瞬間に煙の中からアクイラが飛び出してきた。
「!」
しかし、その煙からアクイラが飛び出してきて、ルベルを蹴った。
蹴りはルベルにクリーンヒットし、ルベルが吹っ飛び校舎にぶつかった。
「く、油断した……あのでかい炎はわざとか……」
「ルベル!」
星辰がルベルの方に向かってくる。
「! おい、星辰こっちに来るな!」
ルベルが星辰に向かって叫ぶ。
「あ……」
星辰の目の前にアクイラが立ちふさがった。
「全くてこずらせやがる」
そう言うとアクイラは少し笑った。
「アクイラ……」
星辰が少し後ろに下がる。
「おっと、逃がさねえぜ」
星辰の右手首をアクイラがつかむ。
「ぐ、これは……」
星辰がその手を振りほどこうとするが、出来なかった。
「無理無理、お前くらいの力じゃな」
アクイラはそう言うと、星辰を引き寄せ後ろから自分の右腕で星辰の首をギリギリと絞めた。
(すごい力だ。女の子の力と思えない……)
星辰はアクイラの右手を必死に引きはがそうともがいたが成人の男性でも、これを振りほどくのは無理そうだった。
「ちい。やっちまった……」
ルベルが、立ち上がりながら悔しそうに言う。
「ルベル! 大丈夫か?」
星辰がルベルを聞いた。距離があるので、必然的に声が大きくなる。
「こんな時に他人の心配か? 呆れたやつだ」
アクイラが本当に呆れた様につぶやく。
「だが、あいつはしばらく動けねえな」
アクイラはルベルの様を見て言った。蹴った一発は手ごたえがあった様だ。
「待ってあれは……」
アクイラに首を絞められながら星辰が、何か気づく。
「……ううん。ここは」
一人の男子生徒が意識を取り戻して起き上がった。
「あれはうちのクラスの花里君?」
星辰が男子生徒を見て驚いた様に言った。星辰のクラスメートだった。
「驚いた。もう、起き上がるやつがいるとは」
アクイラもほんの少しだが驚きの声を上げた。
「! これは、どうなってるの?」
花里は周りの人間たちを見て動揺する。皆眠っている。無理もなかった。
(まあ、あいつは無視していいだろ……)
アクイラは興味なさそうに花里を見ている。
だが……。その時。
(ふふ。あの子、ちょっと使えそうね)
何者かが、ほくそ笑む。
「!」
そして、星辰、アクイラ、ルベルの三人は何者かが、超能力を使用するのに気付いた。
(何者だ!)
ルベルがあたりを見渡す。だが、どこにいるか分からない。
(ち、クスカの部下か? 何かの能力で隠れてやがるな)
アクイラも周りを見る。しかし、アクイラにも見つけられなかった。
その時、ピキッともピッともつかない何かがひび割れる様な音が聞こえた。
そして、校舎の一部が壊れ崩れ落下し始めた。
「! あぶない!」
星辰が叫ぶ。
「え、うわあああ!」
校舎の残骸が花里の上に落下してくる。花里が目をつぶって頭の上に右手をかがげた。
「このお!」
その時、星辰は咄嗟的に右手を出した。
すると、校舎の残骸は空中で止まる。
「あいつ……」
ルベルが、その様子を少しあっけにとられて見ている。
「今だ!」
その時、星辰が消えた。
「なんだと! どこに行った?」
アクイラが驚きの声をあげる。しっかりと星辰をつかんでいたはずだった。
「花里君。手をつかんで」
いつの間にか星辰は花里のそばにいた。星辰は花里に手を伸ばす。
残骸は星辰と花里の頭上で止まってままだ。
「え、紅鏡君? どうなってるの?」
花里にすれば、何が起きているのか分からない。
「いいから。手を出して」
星辰が花里に右手を差し出した。
「う、うん」
花里が差し出された星辰の手を握る。
「よし」
花里の手を握った星辰は再度消えた。
残骸が落下する。
「あいつ、テレポーテーションを……」
ルベルがあっけにとられた様に見ていた。
(テレポーテーションだと。星辰のやつ、とんでもない速さで成長してやがる。信じられんやつだ)
アクイラが唇をかむ。
「ええ? こ、ここは?」
別の場所にテレポーテーションした花里はさすがに驚いた。
「学校の近くの公園だよ。ここなら、大丈夫だろう。君はこのまま家に帰って」
星辰と花里は学校から離れた公園にいた。
「え、でも……。何がなんだか……」
花里は混乱したままだ。
「ごめん。説明してる時間がないんだ。また後で……」
星辰はそう言うと花里の前で消えた。
「え? 消えた……」
星辰が消えた場所を呆気にとられてみる花里。
周りを見渡したが星辰はいない。完全に消えている。
「ルベル……」
テレポーテーションを使用した星辰は学校へと戻った。近くにルベルがいる。
「星辰?」
アクイラが星辰の姿に少し呆然としている。
「星辰? なんで戻った!? そのまま逃げてれば良かっただろうが」
ルベルがアクイラに蹴られた部分を抑えながら星辰を問い詰める。
「やっぱり一人だけ逃げるのは嫌だ。それに学校を破壊して花里君の上に瓦礫を落とした奴を捕まえる」
星辰が静かにルベルに話しかけた。
「学校を破壊した奴が分かるのか?」
ルベルが星辰に聞く。
「うん」
星辰がゆっくり首を縦に振った。
(こいつ、少しだが何か雰囲気が違う?)
さっきまでと星辰の雰囲気が少しだけだが違った。ルベルはその違いに多少の戸惑いを感じていた。
(戻ってきたのは好都合だが、どうする? テレポーテーションを使える奴に物理的拘束は無駄だ……)
アクイラが星辰を見ながら考える。
「……」
星辰は二人をよそに、周りを観察した。
サイコキネシスを使用して近くにあった拳ほどの大きさの石を自身の周りに浮かべさせた。
「見える……そこだ!」
星辰はそう言うと、その石をアクイラへと飛ばした。
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