3章 第4話 転校生

 星辰とルベルが出会った次の日。

 

 紅鏡家。ある部屋にて。


「改めて協力感謝します。紅鏡郷太郎さん」

 ロカは郷太郎に会っていた。


「なんの、星辰のためにはるばる地球まで来てくれたんじゃ。寝床くらい用意させてください。あとこちらは孫娘で星辰の姉の菖蒲あやめです」

 郷太郎は自分の横にいる若い女性をロカに紹介した。


「菖蒲です。よろしくお願いいたします」

 菖蒲はそういうとロカにお辞儀した。


「よろしくお願いいたします。菖蒲さん」

 ロカも菖蒲に挨拶する。


「それで、念のためもう一度確認しますが、ここにいる間の仮の身分は月影さんと同じ扱いで良いでしょうかね?」

 郷太郎がロカに聞く。


「はい、それでかまいません」


「では、改めてお願い頼みますぞ」

 郷太郎はそう言うと頭を深々と下げた。菖蒲も同じく頭を下げている。


「恐縮です。では失礼いたします」

 ロカも同じく頭を下げると踵を返して扉から部屋を出た。

 部屋を出ると、タキシード姿の月影がいた。


「お疲れ様です」

 月影がロカに話かける。

 

「いや、銀河連邦警察のお偉方を相手するより、はるかにマシだ。あいつらの顔みる回数が減ると思うとせいせいするぜ」


「あなた、それがあるから地球の署長を引き受けたのは?」


「い、いやあ、ちゃんと地球と星辰君のことを考えてだな……それに、思ったよりいい星だ」


「まあ、そういう事にしておきましょう」


「おい、本当だからな」


「分かってますよ。実際、あなたで良かった」


「お、おう」

 ロカは月影にそう言われると少し照れた。


「もうそろそろ学校で、授業が開始されているところでしょうか?」


「あいつ、昨日の様子で地球の学校の方は大丈夫かなあ?」


「まあ、学校生活の方は大丈夫でしょう」


「それならいいんだが……」


「だが、ルベル君も来てくれてありがたい。星辰君と同じ年齢で、彼の護衛をできる人材はそうはいない」


「まあな。宇宙犯罪者と戦えるのは我が息子ながら大したもんだと思うが……」


「思うが?」


「どうもそれを鼻にかけてるところがありやがる。お前の方で、あいつも鍛えてやってくれ。父親だと聞かないこともあるしな……」


「承知です。彼を地球に連れてきたのは、そう言った事情もあったのでしょう?」


「まあな……はあ。まあ、お前の言う通り学校でも、うまくやってるといいんだが……」


「ふふ」

 ため息をつくロカを見て月影は少し笑った。 


 白蓮中学校のお昼休み。星辰のいる教室にて。


「やあ、君たちに出会ったこと以上の幸福はないよ」

 教室でルベルが自分の周囲にいた、女の子たちにきざなセリフを言っていた。


「きゃあーー!」

 周りの女の子たちが黄色い声をあげる。


(めっちゃ、馴染んでる。特に女の子に……)

 さすがの星辰も少しあきれ気味に様子を見ていた。


(まあ、頭も運動神経も良い上に背が高くてイケメンだから女の子にも、モテそうだな……)

 星辰は冷静にルベルを見ていた。


「おい、星辰あいつなんだ!」

 クラスメートの一人が星辰に話かけてくる。

 ルベルがクラスに紹介される時に担任の教師がルベルと星辰が知り合いであることをクラスに伝えていた。

 ちなみに海外から来たことになっており、そのため髪の毛は赤いままである。


「えーと、僕も昨日知り合ったばかりだから……はは」

 星辰は苦笑いしてごまかした。


「ちっ、気に入られねえ」

 クラスメートの男子たちの一部がルベルをにらみつける。


(昨日はただ単に僕が男だから、嫌ってただけかな……)

 星辰はそう思うと、少しだけ拍子抜けした。

 そして、学校が終わり放課後となった。


「あのルベル……」

 周りにいないことを確認した星辰はルベルに話しかけた。


「なんだ」

 星辰に呼びかけられたルベルがぶっきらぼうに答える。

 星辰の護衛の件があったため、ルベルはなんだかんだ言って星辰を待っていた。

 一緒に歩きながら、校門に向かいながら話を始める。


「あの謝りたいんだ」

 教室を出て廊下を二人は歩いた。


「なぜ、謝る?」


「なんて言うか僕のせいで、嫌々地球に来たみたいだし。ごめん」


「ふん。そんなことを気にしていたのか」


「もしかして、あんまり気にしてなかった?」


「地球の様な辺境の星に来ることになったことにムカついたのは事実だ。それに、俺が男の護衛をせねばならないのもな」


(やっぱり、僕が男なのが嫌だったのか……)

 星辰は予想通りの答えに苦笑いした。


「まあ、今は多少は来て良かったとは思っている」


「そう……。なんでか聞いても良い?」


「女の子が思ったより可愛かったからだ」


「ああ、そう……はは」


(思っていたより分かりやすい性格なのかも……)

 昨日とは違った印象に星辰はなんだかほっとした。


「だが、お前が気にくわないのは変わらん!」

 ルベルが少しにらむように言う。


「そ、それはなんで……」


「父さんも月影さんも特別扱いしている様なところが気に入らん」


「それは……」


「お前しかレグルスを使えない人間だと言うのは理解している。だからと言って調子にのるな」


「僕は調子になんか……」


「そんなことより、今日は護衛のメイドさんは誰が来るのか?」

 星辰の弁解を無視して、ルベルが話を進める。


「何を言って……」


「誰だ。登校時は一緒だったんだろ?」


「今日は桜さんとシルビアさんだよ」

 星辰は本日の登校では、二人に送ってもらっていた。


「そうか、あのお二人か。地球のメイド服を見たが、あれは素晴らしいな」


「そ、そうかな?」


「素晴らしさが分からんのか?しょうもない奴だ」


「そこまで言う?」


「お二人を待たせるのは失礼だ、校門まで急ぐぞ」

 そう言うとルベルは走り出した。


「ええ、ちょっと待ってよ」

 星辰が走り去るルベルの後をついていく。

 その時。


「ルベル、ちょっと待って。何か変だ」

 星辰がルベルを止める。


「何? むっ、これは?」

 ルベルも周りを見渡す。


「みんな、寝てる?」

 星辰が周りの様子を見ると、教師や生徒たちが床に倒れていた。


「ち、転校初日に襲撃とはな。星辰、俺の近くに来い」

 ルベルが、吐き捨てる様に言った。


「分かった」

 星辰がルベルの近くまで走っていく。


「これって、どういうこと?」

 ルベルのそばまで来た星辰はルベルに聞いた。


「襲撃だ。多分、お前を狙うやつらにな」


「宇宙犯罪組織の……」


「ファミリアの能力か、超能力か、人を眠らす機械か何かだ」


「なんで、僕たちは眠ってないの?」


「俺達は宇宙人だから耐性がある」

 その瞬間。二人の近くの窓ガラスが割れた。何者かが、ガラスを割って学校に侵入した様だ。


「星辰!」


「君は……アクイラ!」

 窓ガラスを割って学校に侵入したのは、アクイラだった。

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