2章 第6話 いなくなった子供たち
話は紅鏡家の邸宅の地下に戻る。
「じゃあ、二人は……」
月影から話を聞いている最中である。
「末の妹を人質にとられて君をさらう羽目におちいってるのか知れません……あくまで推測ですが」
「アクイラも結構気が乗らなそうだったし、たしかに無理やり言う事を聞かされてるのかも……あと千里眼なんてあるんだ?」
「千里眼の使い手にもピンキリですが、あの二人の妹コルムはピンの方です。何光年も離れた星にいる人物や物の位置を特定できるとか。星辰君が地球にいることを彼女の力でしょうね」
「すごい……」
「三人とも血は繋がってないようですが絆は深いようですね」
「……」
星辰は複雑な表情をしている。
(僕からすれば、お姉ちゃんやおじいちゃんにあたる人がさらわれた様なことなのかも……)
彼女たちの状況に心が少し痛んだ。だが、どうすることもできない。
(星辰君は心優しい。今の話はすべきではなかったか……)
月影は自分が少し、うかつだったことを後悔した。
「……先生、大丈夫だよ」
星辰が月影の心を察した様に言った。
「いえ私も、少し確証がない話をべらべらしゃべりすぎた様です。」
月影も頭を下げる。
「勉強や訓練は明日からにしましょう。昨日のこともあるので、今日はお休みください」
月影は続けて、そう話をした。
「ああ、うん。そうするよ。今日はありがとう」
「いえ」
星辰がくるっと背中を向けると月影はその背中を見送った。
それから数日の日時が過ぎた。平和であった。
星辰はその日、自宅から近い児童養護施設にいた。
「ヒヒーン。お馬さんだぞー」
星辰は小さい子を後ろに乗せて、星辰は馬をしていた。
「もっと走れー!」
星辰に乗っている子供は大喜びだった。
「やれやれ星辰ちゃんも変わってるねぇ」
遠くの方から二人のメイドが星辰と子供たちを見ていた。
今喋ったのは、エレナである。
「そうでしょうか?」
桜が答えた。
二人は護衛として今日は星辰についてきている。
「普通の中学生は放課後は遊んでるって」
エレナがやれやれと肩をすくめた様な動きをした。
「子供好きなのは、星辰坊ちゃまの良いところだと思います」
「あたしも悪いことだと思ってないよ。ただ変わってるってこと」
「ふふ」
桜が不意に笑った。
「なにがおかしいのさ?」
エレナが怪訝に顔で桜に聞いた。
「そう言いながら、坊ちゃまのああいうところが気に入ってるでしょう?」
「まあね。言っておくけど男して好きとかじゃないからね」
「分かってますよ」
「あ~あ、子供らにもみくちゃにされてるよ」
エレナが飽きれた様に言った。
「あら、子供たちがこっちに来ますよ?」
桜たちのいるところに子供たちが走って向かっていた。
「お姉ちゃんたちも遊ぼう!」
桜とエレナが子供たちに囲まれる。
「お姉ちゃんたちはお仕事中だからダメ~」
エレナが子供たちの申し出を断った。
「まあ、良いじゃないですか。少しくらい」
桜が微笑んだ。
「いや駄目だろ……」
エレナが飽きれた様に言った。
「遊ぼ遊ぼ!」
子供たちが騒ぎ始める。
「分かった。分かったって……たく」
「ふふ。何して遊びましょうか?」
桜が楽しそうに子供たちに微笑んだ。
数時間後、夕方。
三人は施設を後にして歩いていた。
「はあ、疲れた~子供は元気だね~」
エレナが本当に疲れた様にため息をついた。
「私は結構楽しかったですが」
桜は平気そうだ。
「僕も楽しかったけど」
星辰も楽しそうに言った。
「タフな連中だね~あたしはほんと疲れたよ……あたしは本当は頭脳労働タイプなんだから」
エレナがため息をついた。本日何回目だろうか。
「エレナさんも飛び級で大学卒業したんだっけ?」
「そうだよ。博士号だって持ってる天才児なんだからね」
エレナがどや顔で言う。
「キャラだけ見てると、そうは見えないけどな」
星辰が独り言のように言った。
「なんだって?菖蒲ちゃんに馬鹿にされたって、いいつけるよ」
「ご、ごめん、謝るから、お姉ちゃんに言うのだけは……」
星辰はおびえた。
「ふふ。ん?」
桜が何かに気づいた。
先ほど星辰がいた施設の従業員たち見えた
何か慌てた様子で、何かを探している様だった。
「どうかしたんでしょうか?」
桜がその様子を見て言った。
「聞いてみよう」
星辰に言われ二人もうなずいた。
三人は施設の従業員に近づいていく。
「何かあったんでしょうか?」
桜が従業員の一人に聞いた。
「あ、皆さん。それが……目を離したすきに玲君と楓ちゃんがいなくなったです……」
桜に声をかけられた従業員が、さも困った様に桜に話をし始めた。
「え、二人が?」
星辰がびっくりして聞いた。
「そ、そうなんです。ほんの一瞬の隙に……」
別の従業員が答える。
「それで、みんなで探しているの?」
エレナが口をはさむ。
「は、はい」
従業員が答える。
「ほっとけない。僕たちも探そう」
星辰が言った。
「で、でも……今、我々も警察に連絡しようかどうか今、相談していたところですし、皆さんの手を煩わすことは何と言うか……」
「大丈夫。だってほっておけないよ」
「星辰ちゃんならそういうだろうと思った」
「エレナさん」
桜がたしなめるようにエレナを少しにらんだ。
「別に嫌じゃないって、あたしも心配してしるって。さっきまで遊んでたんだしさ」
桜ににらまれてエレナが少しだけ焦った様に言った。
「じゃ、じゃあ、お言葉に甘えます。私たちはあちらを探しますので。何卒よろしくお願いいたします」
従業員たちはそういうと三人から離れた。
「とは言ったものの、どうするの?」
エレナが言った。
「あの……多分、僕分かるよ……」
「本当ですか?」
星辰の言葉に桜が聞いた。
「うん」
「超能力で分かるってこと?」
エレナが聞いた。
「そう。二人の位置がなんとなくだけど分かる」
「星辰坊ちゃまが言うなら信憑性がありそうですね」
桜がエレナと目を合わせた。
「うん。こっちだよ」
星辰が走り始める。
そのあとを桜とエレナの二人も追うように走り始めた。
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