段ボール箱を覗いたら、変な所へ拉致されました。〜みっちり詰まった猫さんは、尻尾3本のヤバい生き物?

るるあ

スキル「箱」って何ですか?

 今日は早番、早帰り〜♪

 電車のある時間に帰宅とか、奇跡〜♬

 いやぁおかしい納期設定だった。だが、私はやり切った。流れ行く大量の段ボールの目視検査、束数確認、仕分けラベルシール印刷……あ、あのJANコード規格データまだ直ってなかったな。…もう知らね。

 とにかく、本日も大変お疲れ様でございました。

 

 最寄り駅からの帰り道。

 これぞ夕焼け!という、綺麗なオレンジ色の大きな夕日を見ながら家まで歩く。駅から家まではちょっと距離があるけど、色んな道を彷徨うのも楽しい。あっ、こっちの方が夕日がよく見える〜っと、気がつけば知らない路地。

 

 そして小さめ段ボール。

 A式みかん箱3k用かな?

 (サイズ判定とか職業病……。)

 

 路地裏に段ボール箱とくれば中身はやっぱり?


 「にゃ〜…ぶ…、にッ……」

 中には、大変ふくよかな一匹の灰色猫がみっちり詰まって、気持ち良さそうに寝息を立てていた。


 「寝てんのかい!…おお。“可愛がってくだちい”ね…。」

 箱につたない文字で書いてある。

 私も幼稚園の頃は、さとちの区別付かなかったな……そして友人が拾った犬をなぜか飼うことになってたなぁ。


 しみじみ思い出しながら、段ボールの前にしゃがみ込んでしばらく猫を観察。ツヤツヤで豊かな毛皮ですね。あっ、首輪してる?

 しかしよく寝てる。なぜ起きない。


 この、みっちり詰まった灰色猫さんは、野生で暮らして行けるのか?

 「でも、うちのアパートはペット不可だったよなぁ。」

 ……どうしよう。

 とりあえず首輪確認してみようと、そーっと猫さんに触れる為段ボール内へと手を差し込むと。


 「っ!?ぅあああ?!」


 段ボール内へと吸い込まれた。



★★★


ふと空を見れば、青空…に、大きな、オレンジ色の月?


 「えっ…ここ何処?」


 座り込んでる地面は草原。そうげん?


 膝の上には、でっかい灰色猫さんがみっちり詰まった段ボール。

 猫さん起きてるね。

 つぶらな瞳でこちらを見つめている。


 “ニャにニャにゃ?”

 《いい感じの段ボール、この群れの分下ちい》


 「ファっ?!」

 猫さん二重音声?!


““ニャーぶみゃーニィーガウぐるるぁー””


 気がつけば自分の周りには、色とりどり大小様々な猫さん達に取り囲まれていた。


 「いやいやいや!そんな詰め寄られても!?ステータスオープン、スキル段ボール召喚ってか!?あり得な」


 ブォン!!どさどさどさ………


 目の前に透明な社員証写しが浮いて、

私を取り囲んでた猫さん達は皆、会社でよく見る段ボールの中にみっちり詰まっていた。


 はぁぁぁあ!!?!?


 “にゃーん”

 《ありがとうごちいましゅたー》


 だから、さとちが逆だってばよー!!


 急激に力が抜けて、意識がブラックアウトした。


★☆★☆★☆★


 気がつけば、家のベッドに寝てた。

 ……夢ってことだよな?


 ブブブブー

 ドンドンドンドン!

 あきらちゃーん!!起きてるー!?


 インターフォン連打…

 この元気さは、大家さんか。

 あ、昨日の服のまま寝てたのか?じゃあこのままでいいか。


 「はーい」

 扉を開けたら、腕に小さめ段ボールをかかえた、満面の笑顔のおばあちゃん大家さん。


 「あきらちゃん聞いてぇ!!生き別れたうちのルナちゃんが、帰ってきたのよお〜!」


 段ボールにはあの、灰色猫さん。

 相変わらずみっちり詰まって…起きてる。


 おばあちゃん大家さん(そう呼んでと念押しされた)が言うには、朝のお掃除の為敷地内をほうきで掃いていたら、木の影に置いてあったそうだ。


 「捨て猫だったルナちゃん…こっそり友達とお世話をしてたけど、ある日姿を消して。でもまた帰って来てくれたわ!」


 「にゃーん《またお世話になります》」


 「えっ」

 二重音声?


 「そんな訳で、よろしくね!」

 さぁ他の入居者さんにもご挨拶しなくちゃ〜♪と、大家さんはウキウキと去って行った。

 

 昨日の、夢じゃない?


 静かに扉を閉め、ベッドに正座。

 「……すてーたす、おーぷん?」


 言うが早いか、カバンの中から社員証が飛んできて私の目の前に浮かぶ。

 えっ、どういうことだ…?


 呆然と社員証を見つめていると、一番下にチカチカ点滅する、▼マーク。

 恐る恐るタッチすると、そこには


 スキル「箱」レベル1


 の文字が。

 

 「にゃ〜ん?」

 《また今度喚ぶので、宜しくお願いしまち。》


 膝に段ボールin灰色猫さん。


 「いやちょっと待ってちょっと待って…」


 猫さん(ルナちゃん)と目が合って、ニヤッと笑ったと思ったらふわっと消えた。


 ……。

 …………?


 とりあえず、二度寝する事にした。



 ★☆★★★


 まぁそれから度々あの草原に拉致られて、猫だけでなく毎回色々な謎の生き物にピッタリフィットする箱を出したり、そのうちレベルが上がって、段ボール製だけどドラゴンブレスに耐えるヤバいものになっていたらしいのだが、まぁ私は納期を守るのが仕事だという事にして、色々飲み下した。


 なお、灰色猫さんの尻尾は3本だった。

 いや、きっとたぶん私の見間違いだったのかも知れない。おばあちゃん大家さんに3本って病気かしら?なんて相談はされてない。


 OK私は何も見ていない。いいね?



 

 

 

 





 




 

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段ボール箱を覗いたら、変な所へ拉致されました。〜みっちり詰まった猫さんは、尻尾3本のヤバい生き物? るるあ @ayan7944

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