第31話 ベアリングと2人の出会い
アイカユラが口を滑らせてジュエルイアンの耳に入ってしまった場合、ギルド本部の上層部と繋がりのあることから伝わる可能性がある。
そんな時は、ジェスティエンと同様にジューネスティーン達も活動範囲を制限される可能性が出てくる。
それは、ジューネスティーン達の本意ではない事を知っているエルメアーナとしたらアイカユラに多くを語らない方が良いと判断していた。
「ああ、ヒュェルリーンが、ジュネス達と最初に出会った時、黒板に描かれたパワードスーツの角の方に書いてあったベアリングを見て興味を持ったって言ってたわ」
アイカユラは、エルメアーナのベアリングの話題に乗ってくれた事にホッとするように肩の力を緩めた。
「きっと、その時に転用可能な技術として目についたんじゃないか」
「ああ、商人の勘? お金の匂いのする技術だと思えたんでしょうね。帰りに馬車の車軸に使えるとか話していたってヒュェルリーンが言ってたわ」
エルメアーナは、思った通りだというように一瞬アイカユラを見た。
「小さな目に付かない部分に使われる部品だけど利用範囲は大きい。回る部分には必要になるはずだから大量な需要が見込める。種類も多く必要になるだろうし、工業製品には必ず使う事になるだろうな。ジュエルイアンは様々な情報を持っているから、その情報を繋げて商売にしている」
その言葉にアイカユラは目を輝かせて聞いていたので、エルメアーナは少し困ったような表情をした。
「まっ、これは全部ジュネスの受け売り。私もあいつに教えてもらった事だ」
エルメアーナは、全て自分の言葉のように言ってしまった事に対して後ろめたさが出たのか、気まずそうに話の出処を伝える。
「あ、そうだったの」
(てっきり、あなたが考えた事かと思ったけど。でも、鍛治一筋だったエルメアーナにも視野が広がったように思えるわ。これも、ジュネスとシュレのお陰かもしれないわね)
一瞬、ガッカリ気味になったアイカユラだったが、また、直ぐに笑顔になった。
「ベアリングの量産に向けて工場に出向いてもらえたから助かったよ。私だったら絶対に説明できずに終わっていただろうから感謝している」
エルメアーナは話を変え素直に感謝を述べるので、アイカユラは意外そうな表情でエルメアーナを見た。
「ジュエルイアンとしたら、ベアリングの量産化によって、また、商会を大きくできるんだろうな」
「手始めに馬車の車軸に使うと、今までよりスムーズに動いていたから、革新的な技術だって喜んでいたわ。系列の工場に造らせた馬車は評判も良くて、直ぐに注文の話が出てきていたし、独自部門を立ち上げたみたいよ」
アイカユラは、エルメアーナが表に出ない代わりを務めていた。
ベアリングの発表会においてもエルメアーナは出席せずアイカユラに任せていたので、その時の事を思い出すように話し出した。
「それに商会が独自部門を立ち上げたのはジュネスの剣もでしょう。あれこそヒュェルリーンが本当に困ったようだったわよ。商会としてベアリングを開発させるためにジュネスと出会わせるつもりが、その前にエルメアーナがジュネスの剣を作り始めてしまったから、商会としては計画が大きく変更する必要に迫られたのよ」
エルメアーナは気まずそうな表情をするが、直ぐに思いとどまったようにアイカユラを見た。
「おい、あれは、お前が誤解して余計な注文を取り過ぎたからも有るだろう。あんな大量の追加注文を受けてしまったから、ベアリングの開発が大きく遅れたって、後でヒュェルリーンがボヤいていたぞ」
注文を取り過ぎたのはアイカユラに原因があったので気まずそうな表情になった。
「だって、初めて会った時、あんた、店で呆けていたじゃないの。てっきり、注文が無くて困っていたと勘違いしたからじゃない。それにヒュェルリーンだって、そんな説明をしてくれなかったのも悪いわ。私だって、注文が多すぎてくたびれていたと分かっていたなら、あんな無茶な注文は取りません」
2人が初めて出会ったのはエルメアーナの店にヒュェルリーンに連れられてきた時になる。
その時は、ジューネスティーンの日本刀を模倣して作るようになり、一般的な斬る剣より細く薄い事から剣を繰り出す速度が速くなり、鋭い刃が魔物を両断出来ると話題になて注文が殺到していた。
そして、店番をしていても男性客とは話が出来ず、まともな会話にならず、冒険者側が気を利かせて女性に購入の依頼を行う事が必要と知れ渡ると注文数も増えて、2人が出会った時は、注文された剣を作って疲れきった状態で店番をしていた時だった。
それを見たアイカユラが、暇を持て余しているのと勘違いして、来た注文を全て引き受けてしまったのだ。
この時、注文の鍛治で疲れていると伝えていたら、このような事にはならなかったはずである。
「それもそうか。お互いに意思疎通していたら、あんな事にはならなかったな」
「そうよ」
2人は初めて出会った時の事を思い出すように語ると笑い出した。
その時の忙しさも2人にとっては良い思い出となっていた。
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