第30話 ジューネスティーンが試作した銃


 銃の弾丸は、薬室内で火薬が燃焼した爆発力によって、先端に取り付けられた弾丸だけが銃身を通り抜けて撃ち出させる。

 ジェスティエンが発明した火薬と銃は、ギルドの方針によって一般に広げられて無かった事からアイカユラには聞き慣れない単語が何なのか不思議そうにエルメアーナを見つめていた。

「そのカヤクの技術をギルドが握って表に出さないんだ。ジュネスは、ジェスティエンに助けられた時にカヤクの話を聞いて、戻って直ぐにギルド支部に分けて欲しいと相談したけど、そんな物は知らないの一点張りだったらしい。カヤクについてギルド支部には情報も無かったような口ぶりだったって言ってたぞ」

 アイカユラは、今の話を聞いて難しい表情をした。

(今の話だと、ジュウが出来たとしても、カヤクが無ければダンガンを撃ち出せないんじゃないかしら。ダンガンが撃ち出せないならジュウとダンガンだけ作っても無意味だわ)

 疑問が浮かんだ様子でエルメアーナを見た。

「ねえ、ジュネスはジュウを見よう見真似で作ったんでしょ。でも、ダンガンを撃ち出す事はできなかったのかなぁ」

 エルメアーナは、気まずそうな表情をして少し考え込んだ。

(これ、何か隠しているって感じよね。それにパワードスーツを作ったのよ。見て使ってしまったなら、そのカヤクも考えられなかったのかしら?)

 アイカユラは、疑うような目でジーッと見つめてくるので、エルメアーナは、仕方なさそうな表情をした。

「新しい技術というものは、必要だと思うから考えて作り出すものなんだ。カヤクを作り出す事が出来なくても作ってしまったんだよ」

 アイカユラは、やっぱりという表情をした。

「さっき、ギルドからカヤクは知らないって言われて手に入れられなかったけど、ジュネスとシュレなら現物を見たら何とかなっちゃうんじゃないの?」

 エルメアーナは、困ったような表情をした。

「うーん、ジュネス達がジュウと同等な物を作ったというのは、他の誰にも言わないで欲しい」

 アイカユラは、一瞬、考えるような表情をするが納得するようにエルメアーナを見た。

「分かった。ヒュェルリーンにも言わないわ」

 アイカユラが、ジューネスティーン達が作ったニードルガンの事を詳しく知りたいと思った事は今の一言で理解できた。

 本来であれば、アイカユラはヒュェルリーンに全て報告する必要があるが、言わないという事は義務を怠る事になるにもかかわらず言わないと言った。

 エルメアーナは、その言葉を信じる事にしたようだ。

 商人になろうとしているアイカユラは口約束を守る事を大事にしていた事を、エルメアーナは、一緒に暮らす中で感じ取っていたので今の一言で安心した。

「カヤクの入手が出来ないからジュウを作れてもダンガンを撃ち出せないと言ったら、シュレが答えを出してしまったんだ」

「シュレが答えを出したんだ」

 意外そうに声に出した。

「要するにジェスティエンのジュウは、内部で爆発したカヤクの力でダンガンを撃ち出すが、カヤクの代わりに魔法で爆発させればいいって提案したらしい。小指の先程度の小さな弾丸の後ろに魔法紋を用意して爆発させて撃ち出せばジュウは作れるってね」

 アイカユラは、話に驚いていたが、エルメアーナは、納得したような様子は無かった。

「凄いわ。シュレって魔法で何でも考えてしまうのね。しかも、小指より小さい魔法紋なんてすごいじゃない。だったら、そのカヤクが無くてもジュウが作れれば、後はダンガンを用意するだけでジュウは作れて機能するって事じゃない」

「ああ」

 興奮気味に話すアイカユラとは裏腹にエルメアーナは気のない返事をした。

「ん? 何よ。ダメだったの?」

「ああ、作るには作れたらしいんだ。それで試し撃ちをしたらしいんだが、真っ直ぐに飛ばず、的から大きく外れてしまったという事だ」

 残念そうにエルメアーナが言うと、アイカユラは、その様子を想像するように上を向き、直ぐに何かを思い付いたようにエルメアーナを見る。

「だったら、ズレてしまった分を考慮して、方向をズラせば良いんじゃないの?」

 良いアイデアだと言うように伝えるが、エルメアーナは、その話に同意はしてないようだ。

「いや、毎回違う方向に飛んでしまったらしいんだ。左に曲がるから右にズラせば、次は右に曲がったり、下に向かったりしてしまって、全くダメだったらしく、試し撃ちさせてもらったジェスティエンのジュウ程の命中率は無くて、使い物になるレベルじゃなかったらしい。多分、魔物を狙っても全然違う場所に命中してしまう位のズレが生じたんじゃないか」

 アイカユラは、がっかりした。

「狙った場所に当たらないなら意味が無いわね」

「きっと、撃ち出すダンガンかジュウに、何か秘密が有るんだろうな。ジュネス達も気付けなかった何かがな」

 見よう見真似で試作した銃では、弾丸一つ一つが別の方向に曲線を描いて飛んだ。

 知識の無い状況で現物を見ただけだと、細部の技術やノウハウまで吸収する事は不可能だった。

 結果として、使い物にならない銃をジューネスティーンは作った事になる。

「そうね。撃った後、ダンガンの行き先はダンガンに聞いてくれか。……。ジュネス達でも分からなかったジュウか。……。そうなるとジェスティエンから直接聞く必要があるのか」

 使えない銃だった話を聞いてガッカリした様子だったが、エルメアーナは、銃の製作の失敗について悲観的には思ってないようだ。

「でも、今、もう一度、ジュネス達がジェスティエンと出会えてジュウを見たら、その秘密も理解してしまいそうだな」

「……」

(そうよね。知識の全く無い状況と、曲がりなりにもジュウを作ったのなら、今は問題点も見えているって事よね。その状態なら疑問を解決するために見る事になるから、最初に見た時よりも技術的な何かを見つけ出せるって事になるのか。知識として知る事の重要性か)

 アイカユラが黙り込んでしまったのを見たエルメアーナは少しホッとした表情になった。

「ジュエルイアンは、ベアリングの技術が欲しかったはずなんだ。あれによって世界の工業は大きく変わってくるはずさ」

 エルメアーナとしたら完成しているニードルガンについてアイカユラに口を滑らせてしまえば、ジュエルイアンの耳に入ってしまう事になる。

 できる限り情報は控えた方が良いと思ったのか別の話題を出したようだ。

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