第14話 アイカユラの妄想
アイカユラはパワードスーツのベースになる外装骨格の利用方法を考えている時の顔を、エルメアーナに見られていた事を恥ずかしく思い顔を赤くした。
「さっきから、そこに並んでいるパワードスーツを見て変な顔をしてぇ。いつもの真面目な顔とは違っていたぞ」
エルメアーナの言葉には揶揄うような様子は無く、状況をありのままに伝える報告的な言い方だったことから、恥ずかしさから動揺があった程度だった。
「この外装骨格の転用方法を考えていたのよ。考えていたの!」
赤い顔で反論するが、それを聞いてもエルメアーナは納得できないという表情のままだった。
「なんだか、好物の料理を見ているみたいだった」
(ヨダレを垂らしそうだったけど、あれは何か閃いたんだろうな。きっと良いアイデアが浮かんだんだろう)
エルメアーナは作業をしながら、何か含むような笑いを浮かべたが、アイカユラは指摘を受けてドキッとしていた。
(あー、まずい。私が構想を思いついた時、表情に出てしまったって事? あー、商人が表情を読まれてしまうなんて、失態だわ!)
すると、大きく深呼吸をすると、気持ちを切り替えるように真剣な表情になり、エルメアーナに向いた。
「ごめん。今は、箱の事を考えなくちゃいけないのに、考えなくてもいい事を考えていたわ」
そう言って頭を下げた。
「ん? そうか、いいんじゃないか。私も同じような事をするからな。以前、フィルランカに見られた時は、色々言われて恥ずかしかったからな。その気持ちは分かるから、私の前でなら気にする事は無い」
呆気に取られた表情でアイカユラはエルメアーナを見ると、視線を感じたエルメアーナは、安心させるような視線を送ると直ぐに作業しているパーツに戻した。
「揶揄うような事はしないよ」
エルメアーナの大人の対応に驚いた。
(な、何よ。何でそうなるのよ。人の変顔を見たら面白がるでしょ。それなのに、何でフォローするような事を言うの?)
ジーッと見つめるアイカユラをエルメアーナはチラリと見た。
「きっと、そのパワードスーツから何かを思いついたんだろう。よかったじゃないか」
エルメアーナは自分の作業の手を止める事なく言うとアイカユラは強張った体から力が抜けた。
「その通りよ」
少し不貞腐れたように答えた。
(何で、こっちの考えている事が手に取るように分かるの? ん? ああ、これが技術者の閃きなのか。エルメアーナも行き詰まった時にボーッと見ている事が有るけど、あれと同じ事を私がしてたって事なのね)
吹っ切れたような表情をした。
(これからは、エルメアーナの様子が変だったとしても揶揄うような事は止そう。それよりも、エルメアーナの作業を効率良く進められるようにしてあげないとね)
何か自分の中で納得させるように考えたような表情を見たエルメアーナはアイカユラの考えを察したようだ。
「それより、梱包箱の様子はどうなの?」
アイカユラが、珍しく表情に出していたが、エルメアーナとしたら、1台のパワードスーツが完成して2台目にとり掛かっており、完成も間近となれば出荷の事も考えなければならない。
梱包箱はアイカユラに任せていたので、状況を確認したいと思って聞いた。
「あ、うん。業者と打ち合わせをする事になるわ。ヒュェルリーンが連絡してくれるって事になっているから、打ち合わせは店で私が行っておくから安心して」
それを聞いて助かったという表情をした。
「それでね。パワードスーツの重量なんだけど」
「ああ、それなら、考える必要は無い。木箱になるなら、縦横高さだけ伝えれば問題無いはずだ」
アイカユラは、何でなのという表情で話を聞いていた。
「木箱は頑丈にできているからな。四隅を固定するには釘が刺さった時に割れない厚みが必要になる。そうなると、木箱の中に入れられる重量はかなりの重さまで大丈夫なんだ。それに、パワードスーツに使っている金属は鉄の3分の1以下なので案外軽くなる。フルメタルアーマーを入れると言えば、その重さに合わせてくれるだろうから、大きさだけを言えば話はそれで終わるはずさ」
そんなものなのかという表情をしたまま黙っていたので、エルメアーナは、その間を嫌った。
「まあ、重さも大事だが、それよりも箱の中で踊らないように梱包する方が大事じゃないか?」
箱の内部に固定しなければ、運ぶ時の馬車の振動を受けて箱の中で踊ってしまう。
振動を受けても中で動かないようにするには、内容物と箱を固定しておくと良い。
エルメアーナは、軽く確認するように聞いた。
「ああ、それなら、固定用に中板を用意させるわ。入れる時に板を形に合わせて切ってもらえないかしら?」
エルメアーナは、作業をしながら満足そうな表情をした。
「ああ、それ位なら問題無い。梱包の時に合わせて切るようにするよ。そうだ、その中板とパワードスーツは、クッション材が欲しいかな。金属と木材だったとしても、木材の表面に小さな石粒が付いてしまうと傷になるから、隙間に入れられると助かる」
エルメアーナとすれば、自分の考えている事を先回りして対応を考えてくれた事が嬉しかったのか安心した様子で作業を続けた。
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