完成したパーツの発送 パワードスーツ ガイファント外伝
逢明日いずな
第1話 エルメアーナの工房
窓の外は暗くなっているのに、広い室内は天井や柱に設置された魔道具の灯りが灯されており昼間のように明るく、窓から外を覗くと外壁に窓の灯りが当たっていた。
室内には工作用の機器と作業用の机が整然と置かれ、一つの機器の前で1人の若い女性が金属の板に印をつけ高さの低い万力で固定した。
パーツに付けた印の部分が上に向くように固定してから、前後左右から金属の定規を当てて、微妙な角度の調整を何度も方向を変えて調整している。
室内にはその女性1人だけだが、横には組み上げ中のフルプレートアーマーのような半完成の鎧が建具で両脇を支えられるように立っていた。
それはその女性より僅かに小さく、一般的なフルプレートアーマーとは明らかに違いがあった。
一般的なフルプレートアーマーは、パーツを体に取り付ける事になるので人形に着せるようにしたら立たせる事は可能だが、その中には何も無く脇を後ろに立っている建具から出ている棒で脇の下に入っただけで立っている。
その鎧には、人体の各部位とそれを繋ぐ関節もあり、上から下まで駆動するパーツによって繋がっていた。
つま先は足の指が上に向くように関節が付き、足首はくるぶしを一周するように円形のリングが付いて前後左右に足を曲げられるようにリングを通じて脛側と足の甲と踵が繋がっていた。
それは、リングの左右から出たシリンダーが脛のパーツに繋がり、前後のシリンダーは足の甲と踵につながる事で前後左右に曲がるように設計されていた。
膝は左右に大きな蝶番が太ももと脛を繋いでおり、膝の前方には前に曲がらないようになっている。
腰は、他とは違って複雑に何種類ものパーツによって構成されていた。
一番内側には下着のTバックの形をした金属があり腰が入るようになっており、その部分を腰の左右から差し込まれるようにU字のパーツが覆って、Uの下の部分にスライド式のパーツが取り付けられ太もものパーツと繋がり、Uの上部は恥骨の前と腰の尾骨の付近でTバックのような金属と繋がっている。
T字型のパーツの後ろから上には金属の塊が積み木のように重なって背骨を形成し、その中央は左右に開けるようになっていた。
それは、背骨は腰の後ろ半分を覆うようなJ字の金属が腰の側面から背骨にかけて覆うように左右から上に伸びており、左右対象に取り付けられて背骨のようなパーツに接続されていた。
背骨が何段も重なった上には胸を覆う胸部のパーツに繋がり、胸部のパーツから腕が伸びている。
胸部の上には何もなく、首と思わしき部分には穴が空いていた。
これは、一般的なフルプレートアーマーを人に合わせて各パーツを取り付けたのではなく、最初から人の動きに連動して各部が動けるように設計されたパワードスーツの外装骨格になる。
部屋の中で一人作業をしていたエルメアーナは、加工の済んだ金属をパワードスーツに当てて固定具合を確認し納得した。
僅かな狂いを調整していたが綺麗にハマると、ひと段落したというように左手の甲から腕の方に額を拭うと壁の方を向いた。
(急ぎの2台と残りの3台か。外装骨格はジュネスが一緒に完成させてくれたから早かったけど、外部装甲の取付って細かい作業が続くら案外疲れる)
仕事用の真剣な表情をしながら、視線を壁に立ててあるパワードスーツに向けると顔の表情は徐々に緩んでいった。
(た、ただの鍛冶屋が、こ、こんな物を作れるとは)
そして、ニヤニヤしながら、外部装甲の幾つかが取り付けられた横にある自分より背の低いパワードスーツを見た。
(これは、亜人のアリーシャ姉さん用のだけど、あの人の胸はデカかったからなぁ。胸部の内側の加工のダメ出しが多かったけどジュネスは苦笑い程度で修正していたから大したものだ。私なら、お前の体をパワードスーツに合わせろ! って、怒鳴ってたかもしれないな)
そして、少し面白くなさそうな表情で自身の胸元を見た。
外装骨格の加工の大半はジューネスティーンが行っており、エルメアーナは手伝い程度の作業となっていた。
(しかし、あのカップ数は想像を超える。身長130センチで巨乳の亜人って反則だろう! あー、せめて、あの半分、いや、三分の一でもいいから私に分けて欲しい位だ! でも、首の出る穴から覗いて中のカップが見えるのは爽快だ)
エルメアーナが見ている首の無い半完成のパワードスーツは、ウサギの亜人であるアリアリーシャが使う機体なのだが、パワードスーツは体に纏って使うので、操縦するという感覚は無く内部の人の動きに合わせて各関節が動く。
そして、外装骨格の内部は中に入る人の外観に合わせるように作られてる。
(ギルドの高等学校に入学した時は、ガリガリだったのにドンドンデカくなって、今ではグラマラスな体型になったって、アンジュが言ってたけど、この大きさは犯罪レベルだよなぁ)
エルメアーナは、ため息を吐くと壁際に立っている残り4台の外装骨格のみのパワードスーツを見た。
「ジュネスのパワードスーツは、的確な指示をもらえたから早かったが、私1人だと案外手間が掛かる! 期限通りに出来るか微妙なところだ」
ガッカリしたように呟くと、ノックの音が聞こえたのでエルメアーナは音の方に視線を向けると、入口のドアを開けた状態でノックしているアイカユラが立っていた。
「ちょっとぉ、いつまでやっているのよぉ。これじゃあ、私が剣の注文を取った時と同じじゃないの。休まないと、また、フュェルリーンさんに怒られるわよ!」
ムッとしたように言うが、表情は少し呆れたような表情をしていた。
(まっ、エルメアーナは物作りとなると目の色が変わるから仕方がないわ。まるで新しいおもちゃを与えた子供みたいなんだから)
アイカユラに指摘されると当時を思い出すような表情をした。
「いや、剣は世の中に色々あるから、何本も作っていたら飽きる。だが、これは違う」
アイカユラはエルメアーナの答えに面倒臭そうな表情をした。
「違うって、それって一体型のフルプレートアーマーじゃないの?」
その答えに勝ち誇ったような表情をした。
「一般的なフルプレートアーマーは自立する事は無い。それに殴る蹴るの場合、フルプレートアーマーは衝撃を保護できない部分がある」
「ああ、関節部分の事よね。ジュネスが最初の説明をしている時に言ってた事だったかしら。特に縦の力を受ける部分は関節だから、その衝撃も受けられるように外装に関節が用意されているのよね」
「そうさ。だから、力を増幅させて打撃を行った時でも衝撃は内部の人には強く掛からない。そうなると、大きな力を使ったとしても中の人間は保護できる」
エルメアーナは、越にいったような表情をすると、アイカユラは意地悪そうな表情をエルメアーナに向けたのでアイカユラは面倒臭そうな表情をした。
「ねえ、ところで、さっき、何でアリーシャさんのパワードスーツを上から覗いていたの?」
その言葉にエルメアーナの表情は凍ってしまった。
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