第11話 ダンスをするなら素適な人と

「へえ、ドレスをプレゼントされそうになったのか。気に入られている証拠だね」


「あの乗馬以来、急にプレゼントが増えたの。ジュリオの作戦通りよ。ただ、ギャレット伯爵の態度が急に馴れ馴れしくなって、ちょっと怖いのよ」


 今夜もまた、いつのまにか部屋に居座っていたジュリオに紅茶を用意した。美味しそうに紅茶を飲むジュリオを見て、自然と私の頬も緩んだ。


 最近は食事の時、気疲れするようになった。主に私にしか話しかけず、ブリジットに対しては素っ気ない。そのせいで、ブリジットから陰で辛辣な態度をとられるようになった。


 安心できるのはミッシェルとジュリオだけだ。メイドからも「旦那様はとても良い方ですよ」と、ギャレット伯爵を良い結婚相手となるとアピールしてくる。


「問題はダンスパーティーよ。そんなにダンスが上手くないの」


 うつむく私を見て、ジュリオは立ち上がり、私の手をひいて、部屋の中央に連れ出した。


「そんなに怖がることはない。ステップを覚えれば、後は男性側のリードに身を委ねればいい」


 ジュリオの手に触れ、顔が赤くなる。こんなに異性と密着するのは初めてだ。ステップを優しく教えてくれたが、あまり頭に入ってこなかったので集中するのが大変だった。


「ダンスパーティーはたくさんの人も来る。僕も人混みに紛れて、君を見守っているよ」


 ジュリオの言葉が、どれほど私を励ましてくれているのか、ジュリオにはわからないだろう。


 こんなに長く触れ合っていても、全然嫌じゃない。今になって気づいた。本当の素顔を知らなくても、私はジュリオが好きなのだ。


 もう少しこの時間が続きますように、と密かに願った。

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