第23話 『地下の世界』 その12


 とざんくんは、言ったのである。


 『ぼくが、見張っていますから、休んでくらさい。ロボットは、寝ません。滅多には。最高級寝袋がグッズに含まれていまし。開くと、ホテルのシングル個室くらいになります。』


 なるほど。巫女さまから渡された道具一式のなかに、『最高級寝袋』と、表示が書かれた包みがあり、ちょうど、折り畳まれた雨ガッパのような感じだったのだ。


 星空は、地上よりも、なにか感動的だった。やはり、視野が圧倒的に広いのである。


 その星空だって、いつまでも同じではない。


 こと座のベガが、北極星だった時代もあるし、あと一万年ちょっとすると、またそうなるらしい。


 相変わらず、当の北極星は、しっかりと煌めいていた。


 で、スイッチマークを押すと、それは、まさしく個室になった。🔌


 『冷暖房完備れす。』


 『はあ。優れものですね。』


 具李子さんが称賛した。


 『はい。巫女さまに、抜け目はありませんから。こりは、北欧製品れす。かなり、お高いね。』


 ぼくたちは、それぞれが中にはいった。


 室内には、なんと、インターホンまでが用意されていた。互いに連絡ができるし、とざんくんとも、会話ができるのである。


 しかし、ぼくたちは、ちょっとだけ挨拶に使用した以外は、自分達で持ってきていた、トランシーバーを使って会話をした。


 とざんくんに、どのような受信能力があるのかは分からない。しかし、全部聴かれるのは、やはり嫌である。


 そのトランシーバーは、攪乱型秘話式だが、電波は出すから、とざんくんに、感知はされているかもしれないが、そこまで気にしてどうする。


 『どうやら、とざんくんに、気づかれないで動くのは難しいわね。』


 『具李子さん、降りる気があるわけ?』


 『まんまんよ。いま、やらないで、どうするの。』


 『うーん。とざんくんに、悪い気もする。』


 『ロボットさんよ。感情移入してもしかたがないわ。せわない、せわない。』


 『なんだ、そりゃ。』


 『母が、良く言っている。里の言葉らしいわ。ケセラセラよ。』


 『よけいに、わからない。』


 『気にしない、気にしない。』


 『なるほど。じゃ、ちょっと遊んでみますか。』


 『はい?』


 『ぼくの、超小型空中探査レーダーを飛ばすんだ。穴のなかにも入れると思います。あまり、深くはダメだけど、5メートルくらいまでなら行ける。このトランシーバーで、映像をみることができるよ。高感度暗視装置付きです。』


 『すごい。やるじゃない。』


 『父からのプレゼントなんだ。』


 『やはり、なぞの父上ね。』


 『まあ、スパイみたいなもんだとは思いますよ。とざんくんの能力も、ちょっと判るかも。』


 『やりましょう。ぜひ。』


 ぼくは、自前の荷物から、そいつを引っ張り出したのだ。



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