第2話 『神隠し』 その1

 

 ぼくは、ぐりこさんと、待ち合わせをしていた。


 べつに、下心なんてない。


 目的は、探検である。


 それも、団地内のことだ。


 しかし、現在使われていない側は、『立ち入り禁止』になっていることは、周知の事実なのだ。


 『立ち入り禁止』とは、密かに入れ、という意味合いを持つ。


 いやいや、それは、間違っているのは、よく判っていた。


 そこは、私有地で、勝手に入るのは違法行為になる。


 が、なにか、そうしたことをやりたい年頃なのである。


 早い話し、そのあたりは、町内の『肝試し』として、よく使われていたのである。


 当局も、かなり、多めにみていたらしい。


 しかし、『山側神社』あたりは、逆に誰も近寄らない場所である。


 幽霊が出るとかいう噂は、当然に古くからあったらしいのだが、3年前からは、幽霊どころか、人間も入らなくなった。


 行方不明になる人が相次いだからである。


 『神隠し』


 そうした噂は、各地に古くからあるみたいだ。


 ただ、そこで居なくなったのは、団地に住んでいた中学生、3人である。


 噂ではなくて、実際のただ事ではない、まさに、事件だったわけだ。


 その子供たちは、未だに行方不明のままだ。

 

 なぜ、ぼくと、ぐりこさんとが、関わるのか?


 居なくなったうちの一人は、ぐりこさんの兄であったからである。


 ぼくは、いじめには合わなくなったが、ひどく、孤独だった。


 この中学校は、なにか、とにかく、おかしかったのだ。


 ぼくは、そのあたりは、知らない振りをしていたが、実際は 知らないわけには行かなかった。


 ある日、放課後に、ぼくは忘れ物を取りに帰った。


 宿題のプリントだったから、ほってはおけなかったのだ。


 そこで、ぼくは見てしまった。


 ぼくと、ぐりこさん以外の生徒と先生たちが、図書室で、なんらかの『集会』をしていたのである。


 蝋燭を立てて、不気味なお経のようなお祈りをしていた。


 ぼくは、たぶん本能的に『危ない』と、感じたのである。


 だから、すぐにその場は離れて、暗い教室からプリントを持ち出すと、一目散に撤退した。それだけである。


 誰かに見られたかもしれない。


 それは、判らないが、翌日以降も、別に変わったことは無かった。


 ぐりこさんと、その話をするまでは。


     🙊🙉🙈


 


 


 


 


 

 

 


 







 

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