第2話 展望広場
僕が通っていたのは岐阜県にある専門学校で、学校の北側と西側には標高800~900mほどの山が迫り、南側と東側は平野が広がっている。
学校の西側にある山の頂上付近には展望広場があり、空気の澄んだ日には直線距離で50km近く離れた名古屋駅周辺のビルまで見通すことができるため、昼夜問わず多くの人が景色を見ようと訪れる。
頂上の展望広場までは、曲がりくねった細い山道を車で30分ほど走ると到着する。道は細いものの途中には分岐もなく、夜間でも迷うことなく展望広場まで行けるため、初めて訪れる人でも気軽に行くことができる。
僕も入学してから展望広場のことを知り、入学した年の10月に夜景を見に行こうと、友人の坂井と二人で展望広場に行った。
夜間ということもあり、展望広場までの山道は暗く不気味な感じもしたが、特に何事もなく展望広場に到着した。
到着したのは20時頃で、金曜日の夜ということもありカップルをはじめ多くの人が夜景の写真を撮ったり、広場にあるベンチに座っていたりした。
僕と坂井も夜景の写真を撮ったり、広場をぶらぶら歩いたりしながら30分ほどの時間を過ごして帰ることにした。
帰路でも特に何事もなく、ファミレスで夕食を食べて解散した。
3日後の月曜日、坂井を含めたクラスメイトの男子6人で昼食を食べていると、上野が「そういえば、この間〇〇山の展望広場行ってきたんだけど―――」と話し始めた。
上野には高校時代から付き合っている彼女がいて、その彼女と二人で行ってきたらしい。てっきり話し上手な上野がまた彼女との楽しいデートを自慢気に語り出すのかと思ったが、上野の表情は曇っていた。
ここからは上野の話である。
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