第5話 ハンティング

男はしばらくテントの中で眠った。

夜になり、寝袋から這い出るように起きると、テントの中に置かれた小さな木箱の上に投げ置かれていた、蒼色のコートを着た。そして、側に立て掛けられていたライフルを担ぎ、腰にナイフ、弾薬箱が入った革のケースを下げると、首に双眼鏡を掛け、男はテントから歩き出した。

暫く歩くと、海岸にたどり着いた。

そこには山のように岩がそびえ立っていた。

男はその影に隠れると、じっと月明かりに照らされた海原を見つめた。銃に弾丸を込めるとそっと岩の合間を縫うように銃身を真っ直ぐ、前に向けた。

ただじっと、静を保つ。

息も無くなってゆく。

砂浜と岩に打ち付ける波音だけがあたりに響き渡る。

月明かりが銃身を伝い、男の顔に光を当てた。

その瞬間、海の方から激しい波音が響いた。

岩山のような背びれが見える。

リヴァイアサンだ。

あと少し。もう少し。

リヴァイアサンの頭が見え始めた。

徐々に海面から頭を出し始める。

そして竜は眼をギラリと一瞬、光らせた。

その瞬間、男は銃のトリガーを勢いよく引いた

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る