竜殺し
緋月慶也
第1話 竜の島
徐々に頂点へと太陽が昇りつつある午前の半ば。
一隻のヨットがエンジン音と帆が靡く音を出しながら海面を滑るように航行していた。
そのヨットの中には男が一人。
男はすっかり古くなった軍服のような服を身にまとい、背には銃を担ぎ、腰にはナイフやコンパス、布袋を下げた格好をしていた。
舵輪を器用に扱いながら、やや高い波に揺られ、腰の道具が、かちゃかちゃと音を出すのに気を留めない様子で、海をにらむように眺めていた。
時折、後ろからエンジンが鈍く唸る音が聞こえて、その都度、男は肝を冷やしたが、すぐに何もなかったかのように元の規則的な音に戻ると、男は安心した様子になり、また再び、舵輪に集中するのであった。
やがて、小さな島にたどり着いた。
座礁しないようにゆっくり、船を島の比較的落ち着いた様子の岩場の近くにまで寄せると、もやい綱を手ごろな岩へ向けて投げた。
岩に繋ぎ止められた船から男は、多少、ズボンを濡らしながらも岩へと乗り移り、綱を手繰り寄せて、船をすっかり固定してしまった。
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