✜25 ストラテジーモード
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サーバー「S462」の侵攻状況 1%
プレイヤー数:1
勝利条件:全プレイヤーの撃破または全拠点の奪取
制限時間:29日13時間28分47秒
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「プレイヤーがひとりしかいないって過疎りすぎw」
「こんなに島がデケーのにおかしくね?」
「まあ、その分、拠点がたくさんあるんだろ? 早い者勝ちだ」
モブはかなり手強かったが、1回の侵攻に一度だけ使える「
「とりあえず、この街を拠点に侵攻するとして、森のなかに奇妙なのがいるんだよな……」
魔物でもモブでもない存在、おそらくプレイヤーの手駒だと思うが、それがかなり手強い。森の中のいたるところに徘徊しているので、ソロで遭遇したら勝ち目がない。人数と時間を掛けて倒していくしかない。
その前にこのモブが作った街の守りを固めるためにメンバーのひとりが「石ブロック生成」の
2週間くらいで、防壁が完成し、守りが完璧になったので、再び侵攻を始める。ちなみにストラテジーモードの場合は回復薬の効果が半減されるうえ、蘇生魔法が無効のため、やられた時点で、そのメンバーはこのサーバーでは復活ができなくなる。
自分らのサーバーにいるプレイヤーは元々は全員、同じeスポーツをやっていたプロゲーマーだった。海外の国際試合に遠征した時にバスの事故でメンバー全員もれなく異世界へ転生してしまった。
まあ、プロゲーマーで構成された自分らのサーバーはこれまで幾度となく、対サーバー戦ですべて勝利してきた。正直今回の相手は、ただのゴーレム使い。いくらゴーレムに囲まれていようが、所詮は自動化された無機物……人間様の技術と知恵に敵う訳がない。
島を制覇するために一度、優先順位を整理する。まず森をうろついているような雑魚モンスターは経験値が少なく手間の割には旨味がないので遭遇してもできるだけ無視をする。経験値で考えるならモブ狩りが効率がいいが、金は出ない。やはりもっとも美味しいのはプレイヤー狩りだが、このサーバーにひとりしかいないので、拠点クリアによる成功報酬をゲットするのが最優先となる。
早い者勝ちなので、全員で動くわけではなく、5~6人くらいの小隊を作って行動する。このくらいの人数なら対プレイヤーとのPVPでもまず負けない。
いくつかの拠点をクリアしながら、辿り着いたのは湖がある街……この周りに例のプレイヤーが作ったと思われるゴーレムが大量にいたので、この人数では勝ち目がない。あきらめて一度本拠地へ戻り、人数をかき集めて、ここを襲撃しようと考えた。
建物を造っているゴーレムまでいた……おそらくプレイヤーはこの湖の建造中の街にいる。それにしてもこんな大量のゴーレムをひとりで使役したのか? そうだとすると何十年もこの島で暮らしているのか、あるいは……。
「おまえ達はアラタ様の手の者か?」
湖から離れてすぐの場所……まったく気配に気が付かなかった。背後にいつの間にかラミアが立っていた。それもただのラミアではなく「覚醒」済みの個体なので、1体倒すのも小隊を少なくとも5つは欲しい高難度ダンジョンの
アラタ様? そいつがプレイヤーの名前か。
「それとも冒険者の街の者か?」
なぜわざわざそんなことを聞いてくる? 間違った答えを出した途端、襲い掛かってきそうなので、返事をせずに走ってこの場を去るのが、正解とみた。
(
「うっさいわね! 言われなくてもわかってましたぁー」
頭のなかで声が聞こえた。念話か……こんな芸当をできるのは、サーバーでも最強クラスのボスしか思いつかない……。その念話を受けると、ラミアが急に大声でわめき出した。くそっ戦うしかないか。
「姉さん、そいつらこの島で見たことない種族だね」
「敵なんだからどうでもいいでしょ」
「間違ってたらあの
おいおい、何体いるんだよ……。
最初から囲まれていた。茂みに潜んでいたラミアが次々とその姿を現す。計8体の覚醒済みのラミア……正直勝てるとは到底思えない。
「あれ? ラミアの皆、なんでこんなところに?」
「アラタ様ぁぁ♪」
アラタ様? ってことはコイツが?
道のない茂みの中から男が顔を出した。見た感じは隙だらけで、警戒する素振りさえない。だが……。
「チャンス、俺が
「やめろ馬鹿ッ!?」
小隊のひとりが、プレイヤーをキルしようとして、あっさりとプレイヤーの隣にいた虎型の獣人の拳で腹を殴られ、原型が維持できないほどぐちゃぐちゃになって消えた。一撃で強制送還って、まわりのラミアよりヤバすぎだろ?
目の前の男がこのサーバーのプレイヤー。それは間違いない。観察眼スキルを持っている仲間に目で合図をしたが、首を横に振った。ステータスを盗み見できないって、どんだけ精神抵抗値が高いんだよ?
(アラタ、其奴らを妾の元へ連れてくるのじゃ)
また頭に直接響く声、プレイヤーは「なんで?」と声の主に聞き返す。
(なに、ちょっと脳みそをイジって目的を暴いてやろうかと思ってのう)
鳥肌が立った。このサーバーはヤバい。なにもかもが、これまでとまったく違う。侵攻が失敗するどころか、自分達のサーバーさえ、危険かもしれない。
「リーダーどうする?」
この場をどうするのか指示を求められた。この小隊のリーダーをやっている俺は振り返って仲間へ伝えた。
「今すぐ帰還しろ!」
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