第51話 早朝の珍事
今朝はとても朝早くから俺は学校に来ていた。
理由はもちろん文化祭実行委員の集まりである。
おそらくは今日話す議題は各クラスの部屋割りだろう。
……でも正直まだ二ヶ月もあるからそこまで忙しいとも思えないが、この学校はテスト期間、正しくは考査期間中を重んじる傾向にあるらしい。
よって、テスト前二週間は文化祭に関するあらゆる準備ができない。
文化祭は夏休みの始まりかけにあるのでそういうことを踏まえてこんなに早くから準備しているんだとか。
それにしても気が早すぎじゃないか?
それとも俺の気のせいか?
まあ特に問題はないからいっか。
「清瀬おはよ。やっぱりお前は早いな。ほかの奴らとは大違いだよ」
「まあね。一応クラスの代表なわけだからちゃんとしておかないといけないしね」
「そっかそっか。真面目だな~~」
今朝寝坊しかけて乃愛に叩き起こされた俺とは大違いだ。
「おっは~~!みんな来てる!?」
「おはよう、才人くん、楓花ちゃんと清瀬くんみんな早いね。」
二人も来たみたいだ。
ということはつまり……やっぱりか。
あんまりこの人と関わりたくないんだけど……
「みんな朝から早いね。残念だけど会議はもう少し後だよ。俺はこの天川くんと話があるからここで一旦失礼するけど、会議では頼むよ?」
うわっ。
マジか……会長ついに直接来たか……
何言われるんだろうか。全くいやな予感しかしない。
「分かりましたよ、会長。ですが才人にはあまり変なことはしないでやってください。会長ですからそういうことをしかねないのでお願いしますね。」
清瀬、マジでありがとう。
でもそこまでわかってるならもう少し、せめて会長を止めてくれてもよかったのではなかろうか。
______________
俺は半ば会長に引っ張られて生徒会室に連れられた。
生徒会室には誰もいなかった。
俺今から何されるんだろう?
今からでも恐怖が沸き立ってくる。
「会長、それで要件とは……」
すると昨日までは俺のことを睨み倒していた会長が俺の前で盛大に土下座をしてきた。
え?なにこの状況………全く理解が追い付かない。
なんで急に会長が土下座を?
もしかして今まで俺にかけてきた迷惑行為について誤るためか?
ないな。妹がいるものとして断言できる。
ということは、妹にでも謝れとか言われたからか?
……会長のことだ。素直に謝れといわれても誤るはずがない。
ならどうして……
「えっと、どうして急に土下座を意味が分から……」
「お願いだ。俺と柚歌の仲直りに協力してくれないだろうか。あの一件から柚歌にもっと避けられるようになってしまったんだ。今までのことをすべて水に流してくれとは言わない。でもこれは俺にとっては一大事なんだ。どうにか頼めないだろうか。」
はあ、そういうことか。
確かにあの一件に深くかかわったのは事実だし、それをきっかけに日野さんの愚痴が増えたのも事実だ。
つまり会長は俺に協力を頼むためにわざわざ土下座をしたと。
そんなことするくらいなら陰湿な嫌がらせなんてしなければいいのに。
俺にだって断る権利があるし、会長だってそれを重々理解しているはずだ。
でも断るのもなんか申し訳ないな。
あ~~クソッ。なんで俺は断れないんだろうか。
俺は結局いやいやその申し出を受け取ることにした。
「いいですよ、会長。でも俺にどこまでできるかは分かりませんけどいいですか?」
「本当に協力してくれるのか。……ありがとう助かるよ。俺がこんな酷いことをしたのに助けてくれることに本当に感謝するよ。」
別にそこまで酷いこととは言えないと思う。
正直面倒くさい程度だったし、一回だけしつこいときはあったけどあの退学になった先輩と比べたら全然マシだ。でも一応念押ししておくか。
「これに懲りたら二度とあんな事をしないでくださいよ会長。分かりましたね?」
あ~~あ、こんな事に首を突っ込むんじゃなかったな。
余計ややこしいことになってしまった。
でも会長がこれ以上嫌がらせを受けないことを知って一安心だ。
______________
「才人、大丈夫だったか?会長に何か変なこととか……」
清瀬が俺のことを心配してきた。
優しいしイケメンとかこの人は弱点も何もない完璧超人ではないのだろうか。
「ああ、平気。むしろ会長が土下座をしてきたくらいだよ」
「えっ?(うえっ?)」
まあそうなるよな。
あの会長が土下座をするところなんて普通想像できないもん。
清瀬はそこまで驚いていないようだったがそれは彼がシスコンであることを清瀬は知っているからだろう。
一度会長のシスコンお兄ちゃんな一面を見てしまったら簡単に土下座しそうと思えるが、でも知らない人からしたらきっとその姿が想像できないのだろう。
こんな反応になるのも当然な話だ。
「あの会長が土下座!?(土下座ですか!?)」
中野さんは驚きのあまり敬語になってしまっている。
「ま、人は意外と見かけによらないものだということだな。」
「う~~ん……そういうものなのかな……?どうして会長に土下座されたの?」
「それは私も気になる!」
「あ~~それね。えっと確か……」
それから一部始終を二人に説明した。
とても驚いた様子だったが二人とも意外とスンっと受け入れた。
「でもあの会長が……少し失望しました。」
「ほんとね~~私もがっかり……あ、もうそろそろ時間だよ!席に座ろ!」
そう言われて時計を見ると確かに後二分で会議の時間だった。
……もうそろそろ席に着くか。
そうして二回目の会議が始まった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます