【5万PV感謝!】無自覚善人さんは、今日も今日とて、モブにはなれないようです!

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第1話 無自覚主人公爆誕!




 いつも通り、何もなくて平和な朝。

 こんな日には昼寝をしたくなるものだ。


 俺、天川あまかわ 才人さいとは今日も普通の生活を送る。

 イケメンでも無ければ(本人目線)、性格がいいわけでもない(本人目線)。

 だから格好も気にしていないし、それなりに友達もできた。


 そんな俺の学園生活はすごく平和であるはずだ。

 事実、俺の周囲ではそんな目立ったことは起きていない。(本人目線)

 だから今日も平和なことは確定されている。


 中学の頃にはラブコメのような日常を望んだこともあった。

 でも、平々凡々な俺は一つもモテなかった。

 女子から友チョコとかはたくさんもらったがそれくらいだ。

 

 でも今は、そんな騒がしい日常よりも今の平和な日常が何よりもいい。


 隣のクラスのイケメンとか大変そうだし……

 やはり平穏が一番気楽でいい。

 

 朝からオタク友達と昨日のアニメについて語り合う。


「昨日の夢恋みたか?

 本当に主人公爆発してほしいよな!」


「本当にね〜それはそうと、ヒロインのヤンデレっぷりやばくなかった?

 俺原作知ってるけどマジで鳥肌立ったわ〜~特に……」


 本当に他愛もないことを話してたら、また一日が終わる。

 そんなことを繰り返していた。


 ある日の休日、俺は外へランニングへ行っていた。

 運動は大切。

 有名な実業家や作曲家も運動はしていたって言われているから間違いない。

 でも運動するにはこの長い髪は邪魔くさい。

 毎日学校行くのにわざわざセットするのは面倒くさいからやらないが、休日くらいはしないとどんどん怠惰になる気がする。

 だから毎週土日だけはちゃんと髪を整えて、身格好にも気をつける。

 俺って、もしかして意識高いのかな?


 いつも通り、近くの公園を走る。

 向かい風が気持ちいい。

 春の陽気はいつ浴びても最高である。


 突然、犬が飛び出してきた。飼い主から逃げたのだろうか?それにしてもチワワか…可愛いな。

 本当に平和だな。


「ライちゃん待って~〜!」


 ほう。この犬の名前はライちゃんというのか。

 なかなかに可愛らしい。


「すっ、すいません、うちの犬がご迷惑を……」


「全然大丈夫ですよ。むしろ勝手に撫でてしまってすいませんね。」


「いえいえ、むしろありがとうございます。

 あのまま逃げてしまったらどうしようかと思ったので本当に助かりました。」


「そうですか?全然。むしろ癒やされましたよ。

 では俺はこれで。」


「あっ待って下さいお礼とか……」


 何か言われた気がするが気のせいだ。

 だってただの人助けだろ?

 そんなの見かけたらやって普通なことだ。

 それに相手は態度に見せていないだけで、俺が勝手に自分のペット撫でたことを怒っているだろう。

 それなら、すぐ立ち去るのが身のためである。


 あ、そういえば俺……帰りに買い出し頼まれているんだったわ。

 危ない。また母さんにこっ酷く叱られるところだった。

 間一髪思い出してよかった。



______________



「ふぅ。たくさん買った〜~えっとこれで頼まれていた分は全部あるな。よし、帰るか」


 スーパーを出る。

 

「あれっ?自転車の鍵どこやったかな……」


 誰かが困っている声が聞こえた。

 しかし生ものを買ったので、すぐには助けに入れなさそうだ。

 残念だが、俺が冷蔵庫にさっき買った食料を詰めてからでしか手伝うことはできない。

 本当に申し訳ないが、こちらもせっかく買った生鮮食品を無駄にはできない。

 今はただ彼女の悲痛な声に誰かが応えてくれることを願うしかないな。


_______



 結局あの声の主が気になって、またスーパーまで来てしまった。

 流石にもういないとは思うが、もしいて困っていたらと思うと罪悪感でいたたまれなくなった。

 

「すみません、あのこれ位の小さな鍵知りませんか?」


「すみません。見てないです」


「そうですか……ありがとうございます。  ……えっ本当にどこにあるんだろ、明日から学校どうしよう……」


 さっきの女性はまだ自転車の鍵を探しているようだった。

 熱心に聞き込みまでしている。

 一度無視してしまったことに心が傷んだ。


 当然なことである、人助けを一度とはいえ、しなかったのだ。非は俺にある。


「本当に誰か助けてよ……」


 彼女の悲痛な声が聞こえた。

 それを聞いたら居ても立っても居られなくなった。

 だから俺は彼女に声をかけた。

 せめてもの贖罪として。


「すいません。何か探しているようなら手伝いましょうか?」


「そんな!わざわざあたしの都合に手を煩わせるなんてできませんよ」


「もしかして俺が手伝うのが迷惑でしたか?それならやめますが…もし、俺の都合を考えてのことなら問題ないですよ。一つも面倒くさいなんて思ってないですから」


「それなら……ありがとうございます……」


 そうして俺とその女性は3時間あまり鍵を探した。


「もういいですよ……どうせ見つからないですし…、それにほら、もうこんなに暗くなって来ているのでこれ以上ご迷惑をかけるわけには……」


「いいんです。好きでやっているので。俺はギリギリまで付き合いますよ。……あっこれじゃないですか?丁度言っていたサイズの鍵ですし、ほら、付けてたっていうストラップもついてる。これで合ってますか?」


「ちょっと入れてみますね……あっこれです!ありがとうございました。本当に感謝してもしきれません。」


「いえいえ。俺も一度無視しようとしてしまったので、感謝されるようなことではないですよ。それでは夕飯作らないとなので……また。」


「あっ、あの連絡先だけでも!」


「俺の連絡先なんて聞いても特に意味ないですよ……俺は帰るので、さようなら」


「あっ……待っ……」


 盛大にやらかした。

 普通に当然のことをやっていたら、いつの間にか門限を過ぎていた。

 あ〜~怒られる……

 今日のこと言っても証拠がないから無駄だろうな……


「こらっ。連絡もせずにこんな遅くまで……何処に行ってたの!本当に私はあなたをこんな約束を破る子に育てた覚えはないけど?本当になにか言い訳はある?」


 ほらやっぱり怒ってた。案の定である。


「えっと、スーパーの前で、自転車の鍵無くした子の鍵を探すのを手伝ってただけです……すみません……」


「本当に?信じられないけど。まあいいわ。今日は料理当番の日でしょ。早く作りなさいよ」


 でしょうね。でもホントだよ?ね?いつも嘘ばっかりだけど今日は本当だから。息子を信じてよ〜


「明日と交換してくれても良かったのに……」


「決めたことはその通りにやる!それが家のルールでしょ?」


「はい……」


 あ〜~世知辛いな〜~

 やっぱり、平和を維持するのは難しいな。

 これからはもっとスマートにより普通に過ごせるように心がけよう。

 それにしても母さん。もう説教はやめてくれ〜~

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