クラウンの話

笑う理由

はいはいはいはい!このいつも変わらない平凡な道化師に何か用かな?


…ふむふむ、なるほど!君はこの僕の過去が知りたいと!それは難しいお願いだあ。


しかーし、君はお客様なので特別に!お教えしましょう!


さて、これはデリケートな話なので真面目に話すとしましょうか。


ワタクシはそれはそれはお金持ちの夫婦の家に生まれました。ワタクシの両親は世間でいわゆる親バカ…というものでして息子であるワタクシのことをこのキャンディみたいに甘やかしていました。あ、キャンディ要りますか?要らない?そうですか。


まあ、それはそれとして、あまりにもデロデロに甘やかされて育ってしまったせいなのかワタクシ、やりたいことが特になかったんです。将来やりたいこともないのはさすがにマズいと思ったワタクシは両親に何をしたら良いのか、自分は何ができるのかを聞いてみたのです。


親バカに聞いたのが間違いでしたね。「何もしなくて良い」とか「何でもできる!」とかだけ言って悪い所を何一つ言ってくれないんですよ。こりゃ駄目だ、となったワタクシは夜中にこっそり家出というものをしました。


家出をしても何もやりたいことは見つからなかったんですけどねえ。その後ワタクシのほんのちょっとした家ではすぐにバレてしまい連れ戻され酷く怒られ…はしませんでしたね。すごく泣かれました。


そんなこんなで、だらだらと家で過ごしていたある日、自分の部屋で映画か小説かテレビのどれかは忘れましたが道化師というものを初めて見たのです。大人も子供も皆を楽しませ笑わせる道化師はワタクシの心を動かしました。ワタクシ、思いつくとすぐに行動するタイプですのですぐに両親に頼み、道化師になるための訓練を始めました。


親バカ両親はこの道化師になるという夢を心から応援してくれ、訓練のためにプロの道化師の方も講師として雇ってくれました。その方のレクチャーはとても厳しいものでしたがワタクシは夢のために必死で努力をして何とかついていきました。


その恩師の言葉は今でもワタクシの心に残っています。

「誰かを楽しませ笑わせたいのなら、まず、自分が笑いなさい。自分を楽しませることのできない人に誰かを楽しませることなどできません。」

良い言葉でしょう?


僕はこの道化師の仕事は楽しいと思っています。つらいことなど何一つありません。皆が楽しいと笑ってくれるだけで心が暖かくなるのです。そう考えるとワタクシはこの言葉通りのことができているといえるのでしょう。


さて、ワタクシの過去はいかがでしたでしょうか?クラウンはもっと親しく話すのですが過去の話となると真面目にした方が良いのではないかと思いましてこんな堅苦しい感じになってしまいましたがこれで満足でしょうか?


そうですか。ご満足いただけたなら幸いです。


ちょっと、しんみりしちゃったね…堅苦しいのはここまでにして次はクラウンが手品を見せてあげよう!さあさあ!楽しんでいってね!

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