慎重派な第一王子は差出人不明の箱を開けられない

国城 花

慎重派な第一王子は差出人不明の箱を開けられない


「この箱、何だと思う?」

「箱って、これのことですか?」


第二王子は、テーブルに置かれている箱に視線を向ける。

片手で持てるくらいの綺麗な水色の箱である。


「差出人の名前は?」

「ない」

「じゃあ、どうやって届いたんですか?」

「昨日、部屋に帰ったら置いてあった」

「こわっ」


第一王子は疲れたように頷く。


「婚約者からのプレゼントとか」

「それとなく聞いてみたが、違うらしい」

「母上からでは?」

「朝食の時に何も言っていなかった」

「中身は見たんですか?」

「何故か1人で開けてはならないような気がしてな。お前がいる時に開けようと思っていた」

「なるほど」


自分の髪色と同じ箱の色に、厄介事の匂いを感じたらしい。


「とりあえず、開けてみますか」


第一王子が箱の蓋に手をかけた時、コンコンと扉をノックされる。

部屋に入ってきたのは、王妃だった。


「あぁ、やっぱりまだ開けていなかったのですね」

「この箱は母上からの贈り物なのですか?」

「違います。ですが、面倒なので早く開けてしまいなさい」


どこかイライラした様子の王妃にせかされ、第一王子が箱を開ける。

そこには、1枚のカードが入っていた。


『第一王子を王太子に任命する』


「…陛下からか」

「1日経ってもあなたが返事をしないものだから、昨日からずっとうじうじしているのです」

「サプライズで喜ぶと思ったんでしょうね。兄上はそういうの苦手なのに」

「正式な手順で知らせてもらった方が気が楽だからな」

「良い案を思いついたと思ったら、深く考えずに実行するのが王の悪い癖です」

「我らの弟は間違いなく父上似ですね」


はぁー、と3人はため息をつく。


「早く父上に返事をしてらっしゃい」

「分かりました」


兄は覚悟を決めた顔で部屋を出ていった。


「兄上は慎重すぎるから、このくらいの方が王太子を引き受けやすいかもしれませんね」

「箱を開けるのに1日かかるものね」


国王の突飛なやり方が実は理にかなっていることに、2人は気付いていた。



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