願いを叶える箱
小春かぜね
貰ったのは良いけど
「…………」
俺は今。無言で箱を見ている。
大きさで言えば……A4サイズ位の箱であり、白色段ボール箱と言えば良いだろう。
この箱には中身が入っていないが、箱を見ながら欲しい物等を心で強く念じると……その念じた物が出て来るそうだ?
この箱は……語尾に『にゃん』を付ける、猫みたいな少女から貰った。
回想シーン……
「あっ、こんにちはにゃん!」
「この前は助けてくれて、ありがとうだにゃん♪」
「なのでこの箱を、お礼で上げるにゃん!♪」
少女は笑顔で俺に言いながら、持っていた箱を俺に差し出してくる?
少女は中学生位の少女に見えて、大きなツインテールをしている。
顔も可愛く見えるが……何か、猫を感じさせる少女だ?
だが、俺はこの少女を助けた覚えは無い?
おまけにこの少女は今。俺の家の玄関前に居る!?
全く意味や状況が理解出来ず、俺は怪訝な表情で少女に話し始める。
「こんにちは……えっと。俺は君を助けた覚えは無いし、箱を貰う権利も無い…!」
「誰かと間違えていないか?」
怪訝な表情でも、俺は落ち着いた口調で少女に話す。
だが、少女は笑顔の表情を崩さす、俺に言葉を続ける。
「人間違えでは無いにゃん!♪」
「おじさんはこの前。子どもたちが苛めていた子猫を助けていたにゃん!!♪」
「なので、そのお礼だにゃん!♪♪」
「素直に受け取るにゃん!!♪♪♪」
「…………」
(……おじさんか)
(そうだよな。俺はもうおじさん世代なんだな……少しショック///)
少女におじさんと言われて、俺は少しだが悲しい表情をする。
俺の中ではまだ、お兄さんと言われる世代だと感じていたのに……
俺は確かにこの前。下校中の小学生男子達がからかっていた子猫を助けた。
子猫は親猫からはぐれたらしく(?)、男子達から逃げる事は無く留まっていた。
だが、助けたと言うより、俺は男子達に注意しただけで有る。
「……君達!」
「猫を苛めてはダメだぞ!!」
『…ギロッ』
俺は澄ました表情で有るが、口調が少しきつい口調で男子達に言った。
俺の言葉を聞いた男子達は……俺を一瞬睨み付けるが、子猫をからかう事を止めて、そのまま俺の横を無言で通り抜けていく。
「…………」
俺も無言で男子達を見送りながら、男子達にからかわれていた子猫の側に近付く。
「……見た感じ」
「怪我をしているとか、お腹を空かせている感じはしないな?」
俺は子猫を見ながら呟く。
俺は子猫と言ったが……全くの子猫では無く、ほぼ
ここでやっと……子猫が俺を見ながら『ニャーン』と、雌猫の鳴き声で鳴く。
(やはりと思ったけど、この猫は雌猫か!)
(雄猫なら男子達と対峙をするからな…)
と、俺は心で感じた直後……
『タッ!』
『タッ、タッ、―――』
子猫は俺から逃げる様に、俺の側から急に離れて行った。
俺一人に成ったから、子猫は逃げられると判断したのだろう。
……回想おわり
「……もしかして。君はその子猫の飼い主さんかな?」
「でも、どうして……俺の家が分かったの??」
俺はこの少女が、子猫の飼い主だと断定して澄ました表情で話すが、最後の文節は疑問を感じた表情で話す。
しかし、少女は笑顔を全く崩さす俺に話し始める。
「そんな細かい事を気にしないにゃん!」
「とにかく、私はおじさんにお礼をしたいからこれを貰って!!」
「はい!♪」
少女は笑顔で言いながら、俺に箱を押し付ける!
俺は仕方ないので……少女から箱を貰う。
「………?」
(やけに軽いな……空箱??)
だけど、その箱に中身が入っている感じはしない?
まさか……どっきりカメラ!?
だが、少女は笑顔で言葉を続ける。
「おじさん! その箱はね、願いが叶う箱だよ!!♪」
「その箱から出て来る大きさの物なら、大体願いが叶うよ!!」
「箱を見ながら……欲しい物や叶えたい事を強く念じて、叶った時は箱が青白く光るよ!」
「あっ、でも。その願いは二回までしか叶わないからね!!」
笑顔でそう言う少女!?
この少女は……何を言っているんだと、俺は感じた直後。
「…じゃあね、おじさん!」
「あの時は本当に、助かったにゃん!♪」
『シュン!』
「えっ……えぇ!??」
「うそ!??///」
少女は笑顔で、俺に別れの言葉を言った直後。瞬間移動をする様に少女が目の前から消えた!??
突然の出来事で、俺は当然驚く。
「……いきなり少女が消えたぞ!?」
「嘘だろ!!」
俺は驚きながらの表情で言いながら、周囲を見始めるが……少女の姿形は全く見えない。
だが、さっき少女から貰った箱はちゃんと手に持っている??
「箱が手元に有るから……夢では無いのだよな?」
「それに子猫を助けたのは本当で有るから……でも、最後の言葉は自分が助かった様に言っていたよな??///」
「考えたくは無いが……子猫が化けていた!?///」
「いや、そんな訳無いだろう……///」
俺は首をかしげながら呟く。
理解しがたい現象で有ったが、子猫の飼い主がお礼をしたいと言ったから、俺はそれを貰ったと割り切る……
……
「願いを叶えるか……しかし、本当なのかな?」
「けど、悪戯にしては信憑性を感じるのだよな…」
俺は箱を見ながら呟く。
さっきに試しに札束が大量に欲しいと、箱を見ながら強く念じたが……箱は青白く光らず、そして札束は一向に出て来る気配を見せなかった。
「彼女が欲しいと言っても、このサイズだから人間なんて出て来ようが無いし、食べ物程度なら出て来るだろうけど、そんなので願いを終えたくは無いしな///」
俺は苦笑の表情で呟く。
回数が無制限なら食品や生活用品を出しても良いが、二回までの制限が有るから慎重に叶えないと行けない?
「……生活費にまだ余裕は有るが、俺は現在無職の身分だ」
「仕事も全く決まらないし……実家からも勘当されているからな///」
困った表情で俺は呟く。
俺はどうやら、サラリーマンと言う職種が合っていない気がする。
なので仕事は長続きしないし、我慢も出来ないし、仕事に対する向上心も無い。
短期間で転職を繰り返しているから……採用も中々されないし、最近は書類選考で撥ねられる。
その為。実家からの金銭支援を試みたが……却って勘当されてしまった///
それに、さっきの少女からおじさんと言われる年齢に成ってしまった。
いい加減。腰を落ち着けないと……
「就いてみたい職種が有るが……それを願ったら叶うのだろうか?」
「仕事は物では無いが、願い自体は叶うだろう!」
「だけど、その願いが叶っても、
箱を見ながら澄ました表情で俺は呟く。
現金(札束)は出て来なかったが、商品なら確実に出て来るだろう。
「……なら、ロ○ックスとかの高級腕時計を願ってみるか!」
「A4サイズの箱だから、間違いなく出て来るだろう!!」
俺は和やかな表情で一人しゃべりをするが……冷静に成った表情で呟き始める。
「そんな事をしても……本物のロ○ックスが出て来るとは限らないよな///」
「もし、偽物が出て来たら……別の意味で人生がおわる!///」
願いが叶っても、商品は本物で無ければ意味が無い。
それに仕様上。高価な物が出て来る作りには成っていないだろう?
「……貰って嬉しいのか、嬉しくないのか微妙な箱だな」
「大きさも中途半端だから、スイッチやPS5等の家庭用ゲーム機や、林檎製ノートPCも出せそうでは無いし///」
俺は参った表情で呟く。
手っ取り早い願い事は、俺の希望する職種に就かせて下さいだが……まだ、其処までの覚悟が出来ていない?
……
結局。俺は願いを直ぐに叶える事は無く、その箱は押し入れに一度仕舞う。
今更で有るが、俺は無職の癖に一人暮らしで有る///
箱から出せる欲しい物が無いのでは無いが、それは本当に必要な時に使おうと思った。
だけど、近い内にその箱を使うだろう。
自分の就職先を叶える為に……
その願いが叶った時は、今度こそ逃げ出さずに最後まで勤め上げようと感じた。
そして、残るもう一つの願いは、何を叶えれば自分が幸せに為れるのだろうか?
……
☆つづく☆
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