第39話 ビリヤード決着、そして個熱蜜蜂の意味


複数のボールを何度も操作しているからか、目と指の操作が職人のそれだった。

しかし、不規則な動作で相手の演算する時間を稼ぐ事しかできなかった。


峰未雨が鳥の機械の修理に戸惑い、田芽助が諦めかけていた時、周囲のボールが全て小さいジジベムとなり合体した。



「ブランクのせいで絵を描くのに時間が掛かっちゃった、頑張ってたよ田芽助くん。FONUMEES SKILL BALL テママリナネットリープ・カメレオン」



〔鯱千所持FONUMEES テママリナネットリープ・カメレオン 10体のモンスターを擬態させ、操作する能力をゲーム専用スキルとして使用。能力 相手のターン中に、10個の無生物の道具やボール等のアイテムを同じ種類の物体及び生物に擬態させる。〕


「あれ、バグかな。レオリープ・カメレオン、じゃない、squi不正があったら私に報告するって言ったよね。」


鯱千がレナリアの横に移動していた。


「私の力作。ジジべミーちゃんを見てくれた。Yobaseからの知識を基にして中身まできちんと描いたら認識された。サイズ調節まで出来るのは驚いた。」


小さな固形ジジベム10体は、テママリナネットの能力により、ジガラットカムルのように変形し、隊列を組み始めた。


「落とせるものなら落としてみろよレナリア。squiだろうと、3個のジジベミーが固まってたら穴の直径より大きいんだから落とせないでしょー。」


しかしオートビット・レナリアは冷静だった。


鳥の機械を円盤のついた道具と組み合わせた。


「squi。真ん中がダイヤの3で死に球、右がハートのQueen。左がダイヤのKingで合ってる。」


〔レナリア様、的中しています。しかし、ハートのQueenを狙うのは困難です。〕


「演算能力の可視化を使って壁のギミックも利用して決め打ちます。」


レナリアの視界は、プレイヤーの動きは手に取るように分かり、ギミックであっても回転する速度から数コンマ0秒先の動きも可視化される。ギミックを利用すれば、四角垂の固形物であっても、宙に浮かせられるかもしれないとレナリアは推測していた。


結果、ハートのQueenは落ちなかった。レナリアはジジベム3体を引き離し手球の回転数によるドリルのように突いた。小さな固形ジジベムの物は電気を帯びていないため他の固形ジジベムとの連結がもろかった。


挑戦者側の最後の機会がやってきた。防衛側のレナリアは相手のターン中に、ギミックを操作してボールの動線を変えて封じようと試みていた。


「squiの演算能力の可視化は防衛でこそ活きます。」


「ああ。俺たちはsquiの演算を上回るしかない。精度は落ちるが数による演算防止で行く。」


鯱千は、手球にギミックの穴を付く作戦として道具を作り出し峰未雨が鳥の機械を鯱千が2つずつ銃を構えていた。手球を打ったのは鯱千だった。squiの演算による予測では峰未雨だったが、鯱千の銃口で手球がハートのQueenではなくダイヤのKingの方向に動いたため、レナリアは反応出来なかった。


「ダイヤのKingはお手付きで無効、なぜですか。」


「得点を見れば分かるさ。」


〔オートビット・レナリア 33-38 挑戦者 Yobase、峰未雨、鯱千、六衛田芽助〕


〔ゲームが終了致しました。結果、33-38で挑戦者側の勝利となります。挑戦者の4名には報酬としてゲームマスターの音声データの閲覧権利を許可致します。〕


鯱千は、誇らしげにレナリアに真実を話した。


「不正ではないよレナリア氏。ハートのQueenは今さっき落としたんだよ。」


「どうやって、再びボールの擬態を行ったという事ですか。しかし、先ほど、レオリープ・カメレオンは融合されるために使用している。擬態するには、死に球から操作するか、ボールを穴に落下させるしかない。まさか同時に…。」


「君が擬態だと見ぬいたクラブの7は、ハートのQueenに擬態していたんだ。レナリア」


鯱千はレナリアに感謝を伝えた。


「凄く楽しかったよ。楽しそうなレナリアを眺めるのも好きだった。だから、これは感想戦、種明かししないともったいないし説明したい。いいかな、レナリア。」


レナリアは、自分を仲間に入れてくれた鯱千とYobaseらを見て敗北の悔しさと、ゲームの気楽さを表情に示す事が出来ていた。


鯱千は、どこから持って来たのか眼鏡とビリヤードのキューを差し棒代わりにして、

レナリアの疑問を解決しようと講義を始めた。


「重要なものはビリヤードの球が入る事を探知するセンサーだ。2ターン目に金属の球を穴の中に入れて、死に球のハートの5をクラブの7に擬態させた時そのセンサーの位置を把握した。そしてハートのQueenとクラブの7はモルホデフタの不動の能力でセンサーに探知される前の位置に留めて置いた。だから得点には反映されない。けれどずっとモルホデフタがビリヤード台の中の筒で堪えてたって事。」


鯱千からの説明は終わりレナリアは納得した顔で帰っていった。

squiから連絡がきた。


[ それでは、勝利報酬としてゲームマスターの音声データを与えます。]


ゲームマスター緋戸出セルからの音声データは流れ始めた。


「こんにちは。緋戸出セルだよー。このメッセージを送る時私はこの世にはいないと思うけどその前にメッセージを残したい。

君は今回のDESSQ全体を巻き込んだゲームはトランプをベースにしていると思ったろう。でも今やってるのはビリヤードだ。トランプとビリヤード2つのゲームを混ぜないと私の意図が分からないと思ってね。FONUMEESのスキルも加わってたから頭がこんがらがっているかもしれない。でもね、ヒロピアナイトのスキルみたいに元々遊びだったものが融合して派生してトランプやビリヤードといったゲームになるんだ。

トランプは東方からヨーロッパに伝えられたゲームだと言われている。元々は杖や棍棒などタロットよりのゲームだったんだ。それがダイヤやハートになって今のトランプになった。

ビリヤードの方も最初はクリケットのような屋外スポーツを家の中でもできるようにして誕生したんだ。私はトランプを生み出したい。ビリヤードを生み出したい。

当たり前となり色んな媒体で活用されるゲームを生み出したい。

だからこのビリヤードに名前をつけてほしくてヒロピアナイトを景品にした。

入力された名前が何であれこのゲームを表しているならいいとはいかない。新しい形を突き詰めるのが表現だからね。」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る