第38話 レトファリックチーム絶体絶命、ヒロピアナイトの力
レトファリックらの3つの能力に対して、レナリアも2つ程強力な能力がアバターに付与されていた。
・FONUMEES ルーピルの能力ゲームボード上のみの一時的な時間停止を一ターン分使用できる。
・FONUMEES 短時間の間、squiの演算能力を視覚化して、情報を得られる。
彼女は得点とゲームボードのボールの数字を確認してこの内、squiの演算能力を視覚化して戦うかどうかを決めあぐねていた。
「もし、相手にターンを渡すならスペードの10までが賢明そうです。クラブの11以降に能力を使用する事が望ましいと思います。どうですかsqui。」
〔演算能力の視覚化は、ゲームボードの近くの演算が可能になり、情報量に比例して道具を制御する精度も高くなります。連続であれば3ターン分使用できると予想しています。〕
「了解しましたsqui。このターンは私の眼で撃ってみようと思います。」
テママリナネットでゲームボード上の壁を利用してレナリアを惑わせていたが、彼女
はスペードの10を見つけた後、辺りを慎重に時間をかけて観察し構えを取った。
「10個のボールを操作するのは大変だよね。他のボールの軌道と同じようにスペードの10の動いた軌跡を逆算すれば、これが本物だって気付けた。」
レナリアの眼は数学の二次方程式のように、動線を予想する事に長けていた。
「はあ相手に火をつけちゃった。」
「スペードの10の動線を完全に把握されました。」
「よっし。初めて人間とゲームをしたら、こんなに楽しいとは思ってもいませんでした。」
〔オートビット・レナリア 22-13 挑戦者 レトファリック、Yobase、峰未雨、鯱千、六衛田芽助〕
「squi。勝負をつけます。演算能力の視覚化をお願いします。」
レナリアが決して油断をせず次のボールを狙い始めた時、突如、光が発生した。
レトファリックは以前、自分を包んだ謎の光と少し似た光に驚いた。
「この光、光かたは少し違うけどこれは一体。」
「もしかして成功した。この能力は凄い。峰未雨ありがとう。」
「役に立てて嬉しい。でも解いたのはリーダーです。」
レトファリックから話を聞き峰未雨は、なぜか挑戦者側がアクセスできる「 」所持のヒロピアナイトの能力を使う方法を一緒に考えていた。
〔「 」所持FONUMEES ダイヤの3 ヒロピアナイトは現在所持していないため使用できません。〕
「一番初めの空欄、何か意味がありそう。」
「この空欄はメニュー画面にも記載されて文字も打てる。何かの暗号としか思えない。」
時間があまりなく焦っていたレトファリックとは違い、峰未雨はシンプルに考えていた。
「普通に考えればsquiかこのゲームの景品なんだから、このゲームのものですよね。名前、難しい英語でよく覚えていないけど。」
「俺も覚えてない。ゲームボードは対戦で使用しているし。確か鯱千はFONUMEES BALLを駆使したビリヤードのようなゲームって言ってたな。くっそ。思い出せない。」
「うーん。試しに文字を打ってみる他ないですレトファリックさん。」
「ああ。そうだな。」
Yobaseは半分諦めた気持ちで、メニュー画面に表示された空欄にFONUMEES BIRIYARD と打った。すると、なぜか他のFONUMEESと同じく使用できるようになった。
レトファリックは急いでゲームボードに戻り、ヒロピアナイトの能力を使用した。
「テママリナネットでもレナリアの好調が止まらなかったか。クラブの11がある。まだ間に合いそうだな。」
レトファリックは手に入る事のできない今回のゲームのFONUMEESを見て、瞬時に思いついた事を実行した。
「ヒロピアナイト。FONUMEES SKILL BALL。」
レトファリックの発言後、光がゲームボードを包み、視界が悪くなりボールが見えなくなった。
だが、現在のオートビット・レナリアの眼は、ゲームの画面のような電脳空間になっており、意味を成さなかった。
「今回の景品のFONUMEES。挑戦者にも私にも明かされていない。光の攪乱か。ボールの消滅か。ダイヤの3なのだから、使いこなす事は困難な能力だと推測します。」
レトファリックはレナリアの疑問を聞き、正直な感想を伝えた。
「最後のダイヤの3か。今回でお別れするには惜しい能力だと俺は思った。」
〔Yobase所持FONUMEES ダイヤの3 ヒロピアナイト 2つのFONUMEESを融合させ一つの形にする能力。FONUMEES融合は過剰取得によるスキル選択時にのみ可能。また、能力を自分以外にも使用可能。所持したプレイヤーが消滅したら、能力は分散する。単体では、ヒロピアナイトを召喚して一日に一度貫通ダメージを与える事が出来る。〕
Yobaseはテママリナネットを慌てながら操作する田芽助とレオリープ・カメレオンを操作する鯱千を呼び出した。
「鯱千、ヒロピアナイトの能力はFONUMEESを含むスキルの融合だ。擬態する能力の幅は広い。何か策はないか。」
Yobaseの話を聞いて、鯱千は動揺した。
「テママリナネットと融合したら、ボード上の全部のボールが擬態できるって事。はは。えげつねえ。」
レトファリックはヒロピアナイトの可能性に気づいた。
「同時多数憑依と擬態、組み合わせれば面白そう。」
鯱千のメニュー画面には、近くの無生物のアイテムが表示されているだけで他の物に化けるには、検索するか、絵を描いて表現するかの2通りがあった。
「待って、これって動かない状態であれば生物にも擬態出来たはず、模造品でもジジベムに擬態してテママリナネットで固めれば、レナリアの勢いを喰い止められるんじゃない。」
レオリープ・カメレオンの操作画面から検索にジジベムを入力したが、無生物のア
イテム以外は表示されないものになっていた。
「分かった。未確認モンスターをネタバレさせないためにモンスターの絵を描いて知識を示せって事ね。」
鯱千は素早く作業に取り掛かった。
峰未雨が負けそうな状況を変えようと機械の鳥を操作してレナリアの視界を奪った。
「レナリア、人間の視線も把握できないようじゃ死角からモンスターに襲われて死ぬしかない。この端末の操作が明快で良かった。流石VRMMO。」
レナリアは、峰未雨の鳥の動きも可視化したが、動物本能のまま、まさしく鳥のように迂回する機械の鳥の道具の動きを捉えられなかった。
「凄いです。視界を遮っていると思って演算しても視界からいなくなります。これは、ボールの動線より攻略が難しい。」
レナリアは、峰未雨の野生の勘はまだ理解出来ておらず、相性が悪かった。
「でも野生の鳥とは違って、曲がり方が規則的です。」
レナリアは自分の眼で銃を使いこなし、峰未雨の鳥の機械を破損させていた。
その後すぐに、オートビット・レナリアは再び歓喜を上げていた。
〔オートビット・レナリア 33-13 挑戦者 Yobase、峰未雨、鯱千、六衛田芽助〕
「squiの演算能力の可視化は本当に素晴らしいです。クラブのJackも落下させる事が出来ました。しかし、テママリナネットの動きが不規則になり始めましたね。ボールを落下させる事が不可能であれば演算能力を可視化しても同様です。」
田芽助は現在自分とレトファリックしかゲームボードと向き合っていない状況に、少し苛立ち、かなり焦っていた。
「もう後がない。ハートの12まで相手に奪われたら、逆転不可能で敗北なのになんで鯱千さんは防衛してないんですか。」
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