知らないヒーロー
@toipptakosan11
知らないヒーロー
宇宙から突如現れた異星人の軍団は、地球の都市を次々と滅ぼし始めた。彼らのリーダー、ガンは日本上空で究極の選択を迫る。彼の声は全世界に中継され、恐怖に震える人々の目の前で、地球が滅びるか、永遠の奴隷となるかの二択が提示された。
その緊迫した瞬間、どこからともなく一人の青年が現れた。彼の様子は周囲とは明らかに異なり、何かをうんざりしているかのように見えた。スマートフォンやテレビを通じてこの光景を見ていた人々は驚愕し、彼の正気を疑った。
青年はガンに近づきながら何かをブツブツとつぶやいていた。そして、突然彼は手を伸ばし、手のひらをガンに向けた。次の瞬間、ガンは透明な球体に包まれ、動けなくなった。バリアのようなものだが、誰もがその効果を疑問視した。これまでのどんな攻撃も防御もガンには無意味だったからだ。
ガンはそのバリアに触れ、笑った。それを見た全ての人が絶望した。彼らは思った。
「ああ、この青年も殺されるのだ。」
だが、ガンはバリアから出ることができなかった。青年は冷静に言った。
「出れないでしょ。だってそれ、君が出られないバリアだから。」
ガンは嘲笑した。
「笑わせてくれる。私に壊せないものはない。」
ガンは掌に明るい光のエネルギーを作り、次の瞬間バリアの中で爆発が起きた。
しかし、爆発の影響はバリアの外には全く及ばなかった。
「自爆でもしようとしたの?だから無理だって。そのバリアは君を閉じ込める特別なもの。僕が解除しないと出れないんだって。」
ガンは困惑し、青年に挑む。「私を閉じ込めるだと?笑わせるな。お前も知っているだろう、私がこれまでどれほどの力で世界を、星を沈めてきたかを。」
「はいはい、わかってるよ。見てたし。でも、僕、日本が好きだから壊さないでくれる? 人が死ぬのも見たくないし。」
そう言うと、彼はガンを閉じ込めたバリアを地上に落とし、そして念のようなもので全人類に向かって言った。
「あー、安心して。僕が死なない限り、あれは破れないから。あ、そもそも僕死なないから。ってことであとはよろしく。」
そう言って、彼はその場から一瞬で姿を消した。
この出来事は世界中で報じられた。連日のニュースで、地球を救った謎の少年は誰なのか、という話題で持ち切りだった。
「あー、世界は平和だ。」と青年がどこかでつぶやく。
その時、彼の前には慣れ親しんだ白い狐が現れた。この狐は地球を見守る神であるが、その外見は神々しさを欠いていた。
「お前、死んだ人を生き返らせなくていいのか? 良心は痛まないのか?」と白い狐は軽く笑いながら言った。
青年は笑って、「んー、自分にとって大切な人は生き返らせるかな。でも、それ以外はあまり干渉したくないんだよね。」と答えた。
狐は苦笑いを浮かべて、「自分勝手な奴だな。」と呟いた。
「で、これからどうするんだ?」と狐が問うと、青年は穏やかに答えた。
「俺ってバレてないし、そのまま暮らすよ。」
知らないヒーロー @toipptakosan11
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます