第31話 闇の再来


 

 指揮官に求められるものは、何だろうか強さ?否、状況判断力と的確な指示そして信頼ではないだろうか。ジュリアはその全てを持ち合わせていた。幼い頃より兵法を学び、そして若い頃より戦陣に加わり実践経験を積んできた。


 今この時、第三者の登場を的確に認識し判断出来たものが何人居ただろう。

歴戦の強者が動けてないときにジュリアは既に判断し、指揮を取ったのだ。


両国の兵が向かい合うすぐその横に、立ち込めた闇の中から髑髏の騎士がおどろおどろしく湧き出て来たのである。


「ヴォルグ、今は休戦だ敵は、あの闇だ!」

バベルは大声で喝を入れるが如く呼びかける。

その声に蘇るが如く己を奮い立たせ、自軍に指示を出すヴォルグ


「これより我ら帝国と共闘する、敵は南にあり!」


バベルはジュリアの元に駆け寄る。

「あれは、闇だ、あいつが引き連れて来た。」

「どういうことだ!?」

「詳しい正体は分からんが昔の俺の闇の力を得た者だ。それに引き連れてきたあの兵、魔界の闇騎士だ、一体でもとんでもない強さだ。ここで食い止めなければ・・・」

「くぅ・・・」


そうしてるとあの日見た闇の男デュークと魔族と思しき者を後ろに従え前に出てくる。

ジュリアが叫ぶ。

「遠距離魔法砲撃隊詠唱開始!敵は南前方!闇を纏いし者」


それでも闇を纏った者達は止まらない・・・


「放てぇ!」


無数の攻撃魔法が矢のように飛んでいく、それをデューク後方の魔族が魔法防壁で防ぐ、黙々と立ち込める煙が消えると・・・

無傷のデューク達。


「おやおや、これは私たちの歓迎のクラッカーですか?今日は皆さんにご挨拶とお知らせに来ました。申し遅れました、私『デューク・ロック・モンティエロ』と申します、以後お見知りおきを。そしてこの地に建国したいと思います。その暁に、両国には属国となって頂きたいと思います。」


両軍にざわつきが起こる・・・

ジュリアが自軍に喝を入れる。

「全軍静まれ!」


「おやおや、これは有名な帝国の皇女殿下でいらっしゃいますね。」

ジュリアが毅然とした態度で言い放つ。

「我が帝国がそのような戯言に従うと思うか!」


「穏やかでないですね、私たちも、荒廃した国を従えるつもりはないので、できれば穏やかに従っていただけるといいのですが。ひと月の猶予を与えますので、よくご検討ください。今日は建国宣言の催しとして後ろに控えている私の軍の一部がお相手しますので、存分に宴をお楽しみください、それではまたごきげんよう。」


そしてそのデュークと魔族の一行は闇へと消えた、残されたのは闇騎士およそ100体と後方の指揮官と思しきネクロマンサー数体。対するはおよそ帝国兵2万と共和国兵およそ2万と合わせた4万ジュリアがバベルを呼ぶ。


「バベル、あの兵たちについて何か知ってるか?」

「あの闇騎士は強いぞ、恐らくこちらの兵100、いや300に値するかもな、一体でな。」


「な・・なんと!本当かそれは?」


「並みの兵士を最初にぶつけても意味がねぇ、それに恐怖が連鎖して隊が機能しなくなる。」


「先陣は俺とハクで行くから漏れてきたのを頼む。」

「待てよ、バベル俺を忘れてるぞ!」

「ラドルフ、先陣で行けば生きては帰れぬぞ。」

「アハハハア、俺が引き下がるとでも?」

ジュリアが神妙な面持ちで言う

「バベルすまない、このような役を・・・」

「気にするな乗り掛かった舟だ。ハクも付き合わせるがかまわないよな。」

「元より、退屈してたからちょうどいい。」


「まずは共和国と一斉に全火力で砲撃するからその後で続いてくれ!」

そう言って共和国側に伝令を送るジュリア


そしてジュリアがぐ号令をかける。


「全軍魔法詠唱開始、防御壁展開、強化魔法開始」

両国から先陣を切る強者が前に出る、共和国の将軍と思しき者数名の中にヴォルグももちろんいた。その者達にありたっけの強化魔法が掛けられる。


そして闇騎士達も前に進軍してきた。


「攻撃魔法用意!」


「放てぇええ!」

空を埋め尽くすほどの魔法の爆撃が飛んでいく、煙が立ち込める。その煙幕を切り裂いて闇騎士が見えてくる1/3程は減っただろうか、それでも全くひるむ様子はなく前進してくる。そしてバベルが叫ぶ。


「先陣特攻いくぞおおおお」


【野獣の咆哮】ガオオオオオオン

【凍てつく吹雪】ハクが闇騎士の足を止める

【竜撃砲】ラドルフが全力の一撃を放つ


バベルも全力で駆ける、今のバベルの状態での野獣の咆哮の威力は凄まじかった。その移動速度は光の筋と化し、一薙ぎで、あの闇騎士3体を屠る。それにハクとラドルフが追従する・・ジュリアが叫ぶ。


「あの英雄達に我らも続くぞ、全軍構え!」

先陣を切る者たちの雄姿に兵も士気を高める。


ラドルフが闇騎士一体を粉砕する、ハクが噛み砕くバベルが加速する、それでもやはり闇騎士の数が多い数十体がすり抜ける。


そのすり抜けた闇騎士に対してジュリアは十分引き付けて突撃の号令をかけた。闇騎士のパワーは凄まじかった、一振りで数十人の兵士がなぎ倒される。しかしどの兵士も怯まない、決死の覚悟で一太刀と、闇騎士を削っていく。


バベルも怒涛の勢いで闇騎士を屠っていく、白虎からの首飾りのおかげか獣人形態でも精神状態が落ち着いて闇騎士だけを切り裂き薙倒していく。ハクが唸りその爪で牙で闇騎士を砕いていく、ラドルフも鬼人の如く槍を振るい闇騎士に応戦する。


激戦だった両国が一丸となって、力の限り戦った・・・








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