第27話 ドリポンを死守せよ!


 それから一行は、ドリポン園に戻って来た。

そこの主に一度どんな魔物が来るか見張りをする事を告げると、やはり昼間は小さなのが少し来るくらいで、夜が本格的に来るとのこと。噂ではものすごくデカイ化け物を見たって言う者もいるらしい。


 そして主は今はこれだけしかありませんがと、獲れ立てのドリポンを持ってきた。

最初は今の状況の貴重なドリポンを頂くわけにはいかないと断るジュリアであったが、主の心遣いとその誘惑に負けて、頂くジュリアだった。


「せっかくの主の心遣いだ、皆で頂こう。」

その顔つきは先ほどとは打って変って非常にうっとりとした顔になっていた。それだけドリポンが好きなんだろう。その実は女性の手のひらに十分収まるくらいの大きさで、上のとがった所を親指と小指でぎゅっと摘まむとぷるんと皮が剥けて中からぷるっぷるの果肉が顔を出した。その果肉は一口食べると、さわやかなちょうどいい甘みを含んだ果汁が口いっぱいに広がり、喉も潤せて非常に美味しい物だった。

「バベル様、ドリポンの味はいかがです?」


「まぁ、たしかにうまいな」


「ですよね~久しぶりに頂きましたけど本当に美味しいです~」

アンナもうっとりとした表情で、ハクも満足げにこんなうまい果物があったのかと言ってた。


「こんなに美味いなら魔物が病み付きになるのもわかるな。」


「だが、けしからん帝国の民が楽しみにしてるこのドリポンを魔物に奪われてなるものか!皆でこのドリポンを死守せよ!」


ここまでくるとお気楽を通り越して少し愛着の湧いてくるバベルであった。

それと共にベルランテ帝国って意外と平和なんじゃないかとしみじみ感じる物があった。


夜まではまだ少しあり時間を持て余してた所で、カズヤが弓技を披露しましょうとそこらへんに落ちてる果実を三個程拾って、タタランティーノに天高く放り投げてくださいと渡した。


そうすると器用に三本の矢を番えた。

「あれをやるんだな、いくぞ」

そうタタランティーノが声を掛けて3つの果実を同時に高く放り投げると、それを同時に三本の矢で射貫いた。

ドヤ顔でカズヤが見たか我が弓術とポーズを気取っていると。

「たのむからカズヤ、格好付ける前にチャックは閉めてくれ」

お気楽姫から指摘された。

「しみません、姫!ジィィ、あだあああああ」

っと、なんともカズヤであった。


そうこうしてのんびり過ごしていると日が暮れてきた。バベルはシャドウを展開して魔物の探索を始める。まだ近くにそれと言った気配は感じられなかった。


「魔物が来たら教えるから皆はここで待機しててくれ。」

と、バベルは告げた。

「バベル様はすごい遠くの魔物も感知できるんですよ。」


「我もそれくらいできるぞ。」

そう言ってハクも虎の姿になった。急に現れた大きな白い虎にカズヤが飛びあがって驚いたが姫が慌てるな、ハクはあの白虎の息子だと説明し落ち着かせていた。リッチは目を真ん丸に輝かせながらハクの姿を眺めていた。


そして辺りが暗くなり静けさが広がるのと共に動きはあった、小さな魔物が果実園に寄って来た。

「我が捕えてくるか?」


「いやまだいいハク。おそらくあれは偵察だ、様子を見よう。」


しばらくするとまた結構な数の小さな魔物が果実園に群がり始めた、やれやれあいつらが犯人かと動こうとしたとき一際大きな気配が近づいてきた。


「なんかデカイのがお出ましだから俺とハクで行ってくる、皆は待機しててくれ」


そう言ってハクと様子を伺ってると、そのデカイ気配が近寄るとちっこいのはすべて逃げて行った。


 闇を掻き分けゆっくりと姿を現せたのはキマイラだった。

(オイオイ、なんであんなデカイのがここまで来るんだ、そんなに美味かったのか・・・)

キマイラなんてそうそう人がいる所に現れる魔獣じゃない、頭が獅子で尻尾に無数の蛇が頭を掲げている。背中には何やら別の魔獣の頭がある。それらすべてがむしゃむしゃとドリポンを貪ってる。

しかしキマイラが町で暴れると大変な事になるので討伐することにした。


ゆっくりとバベル達が近づくとキメラがそれに気づく。

「我にやらせてくれ!」

「そうか、ハクも退屈だっただろうから譲るか。」


そしてハクが近づく。

キマイラはすかさず口から炎を吐いてきた。


『凍てつく吹雪』


ハクがすかさずスキルを放った、それは一瞬にして炎を掻き消しキマイラを襲った。

キマイラは一瞬にして凍り付いた、ゆっくりと近づくハク、辛うじて動きを取り戻すキマイラ。そしてキマイラの獅子の頭と背中の頭がハクに食らいつく


キマイラはハクを薙倒そうとするが微動だにしないハク。


「これしきか・・・」

そう言うとハクはキマイラの首を咥え、そのキマイラの巨体を宙に振り上げて地面に叩き付けた。

ドシーンとものすごい地響きがした、おそらくキマイラは頸椎が砕かれてるであろう

ピクリとも動かなくなった。


「流石だな、ハク」

「バベル殿にはまだ及ばぬがこれくらい造作もない」


そしてジュリア達が駆けつけてきた

「キ、キマイラ!?」ジュリアが慌て驚いて言う

「これ二人でやったのか?」


「いや、ハクが一瞬で。」


「な・・・!?」





そして一行は果実園の主に報告し、大層感謝された。



ハクが現れてキマイラを倒したので、しばらくこの一帯に魔物は近寄らないだろう、そうしてドリポンの危機を救った一行は、一旦ブリスタンの町へ戻り、ジュリアがドリポンのために来るときに使う屋敷で一夜過ごすことにした。


「今日はご苦労であった、貴重なキマイラの材料も手に入り、ドリポンの危機は去った、ハクよお手柄であった、今度褒美を取らそう!そして今日は思う存分飲んで食べて、体を休めてくれ!」


美味い酒と美味い飯が食えるだけで充分満足なハクであった。








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