第25話 新しき友を得る


 

 それからラドルフはバベルと話した、バベルもラドルフの強さを認め話した、武人と言う者は剣を交えて芽生える友情と言うものがあるのだろう。お互いの力を認めるからこそ相手に興味が芽生える・・・


ラドルフは、昔のバベルを知っていた様だった。

強きその力を正しき事に活かせずにいるのを知り非常に残念に思っていたらしい。

それが今日の印象では、全くの別人でその眼は真っすぐで、その拳は非常に熱く、一瞬で気に入ったらしい。バベルもまたラドルフの武人の真っすぐな心意気とその強さに惹かれて行った。


そしてバベルはラドルフに問いかけた。


「将軍」


「ラドルフだ、ラドルフと呼んでくれ」


「では俺の事もバベルと呼んでくれ。俺にはわからないんだ、国に尽くすと言う事、国のために戦うと言う事が・・・」


 ラドルフにはバベルの言いたいことが良く分かった。昔のバベルの生き様を知っているのだ。己の為に力を欲し己の為だけに力を行使していたバベルが、おとなしく捕らわれ、正しき事に力を行使することを宣言し、国の為に戦う事を承諾したと聞いたとき信じられずにいた。


だが、こうして剣を交え、今ではバベルのその真っすぐな目に嘘偽りの無いことを誰よりも信じた。だからこそ、戸惑うのも解った。人の生き様はそうそう変えられないことを知っていた。そして、それを変えたいと思うバベルの心意気が伝わって来た。


「そうか・・そうだよな・・・逆に俺は、この生き方しか知らぬ。俺はこの国を愛している、そしてこの国の者達を愛している。そのためになら俺はいくらでも槍を振るおう、この力の限りに!お前にもいないか?この者の為なら戦えるという者が、だれか一人くらいはいるんじゃないか?」


そう言ってラドルフは、ニィと笑って、チラッとアンナの方を見た。


「あぁ・・いる、その者の為なら俺は戦える。」


「それだよ、最初はそこからでいいんだ、バベル。そしてその者がこの国で安心して暮らせる為に力を振るって戦うんだ。それが延いては、国の為になるんだ!そういう生き様かっこいいだろう?」


「あぁ・・ラドルフの言わんとすることが良く分かった。」

この時バベルの心に国の為に戦うと意味がストンと落ちた。


「そうかー解ってくれたかーお前とは気が合いそうだ、ガハハハハハ」


「ちょっとそこの男二人で何盛り上がってるのよ・・・」


「あ、これは姫失礼しました、なーに、男同士の話ってやつですよ。今度一緒に酒でも飲もうバベル!」


「ああ、ラドルフ。」


そしてラドルフは、豪快な笑い声を残して去って行った。


そして、アンナが小走りに駆けてきてバベルの耳元で囁いた。

「よかったですねぇ、新しいお友達が出来て。」

そしてニコっと微笑んだ。バベルは照れくさそうにしてた。


そこになぜかジュリアがドヤ顔でやってきて言った。

「どうだった、ラドルフ強かったでしょ?」


「ああ、ラドルフは強いな、そしていいやつだ」


「分かったんなら、いいわ」

どういう理屈か全く分からないバベルだったが、うんうんと頷いていた。


そしてラドルフの話をしみじみ思い出していた。


(大切な人の為に戦い・・・延いてはそれが、国の為と成す・・・)

昔の俺より100倍マシだとおもった・・・最初はそういう生き方は俺には出来ないと思い込んでたバベルの心情が少し変わりつつあった。


「なぁジュリア、少しこの国の情勢とそのラグナロア共和国だっけ?との関係を教えてくれないか」


「そうねぇ、でもまずはお昼にしましょう。」


 そして昼食を食べながら、ジュリアは話し始めた。

元々は、この国とラグナロア共和国は一つの国で人間と獣人は一緒に暮らしてたとの事。そしてある代の将軍に獣人の将軍と人間の将軍が居て二人は一人の姫をお互いに好きだったが、やはり人間の将軍と一緒になったが本当は獣人の将軍と惹かれ合ってたらしい。そこから二人の意見は合わなくなり、人間の派閥と獣人の派閥と別れはじめついには、獣人と人間の内戦が始まり国は二つに分かれたのだと。ジュリアは語り継がれてる話をしてくれた。


 そして獣人の国は一時は滅びかけたがエルフの国と今のラグナロア共和国を建国したと言った。何度か和平で、落ち着いてた時があった事。でもやはり憎しみのスパイラルが根強く残ってる事。


 そしてジュリアも、今となってはもはや何のために争ってるか分からないがかたきが憎しみを生み、もはや止められない戦が続いてるのだと言った。


(憎しみが憎しみを生み、それは連鎖していくか・・・)

バベルにもやはりそれは、思い当たる節があった・・・


何時かお互いが分かり合える日は来ないものなのだろうか・・・


真面目に話してるジュリアをよそ目にもくもくと、旨いといって食事を頬張るハクを見て、束の間の平和を感じるバベルであった・・・






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