第28話殺し技




地下7階層の作戦を俺なりに練り尽くした。


紙に何度も作戦手順を書いては、消しての繰り返しだ。

己を知って、勝つための最善を尽くす。



そんな意気込みでダンジョンに挑んだ。


入った時間は、午前3時。

ダンジョンには自衛隊員の姿はない。


俺は、三山さんから予定を聞いていたので、この時間帯をあえて狙った。



ゴブリンを「召喚」


ユミは、全快してた。


え!なんでか知らないが矢筒には、直った矢が入っている。

HPやMPみたいに回復するらしいぞ。

まあ、俺には有利だからヨシとしよう。


「ユミ、無限バッグを持ってみろ」


ああ、軽々と肩に担いだ。


「無限バッグから矢を取ってみろ」


やっぱり矢を取っていた。


「今度は、戻してみろ」


なんの支障もなく戻した。


「いいか、矢が無くなったら無限バッグから矢を取って射るんだ」


「ギャー、ギャー」と返事が返ってきた。



今回の作戦の肝は、俺が光の剣を上手く扱えことだ。


「ここからは、俺1人で戦う。ヤバイっと思ったら助けろ」


「ギャー、ギャー」


「ギャー、ギャー」


「ギャー、ギャー」


「ギャー、ギャー」



ボワンッと光の剣が現れる。

嘘みたいだ・・・


「後ろで俺の戦いを見てろ!」


俺は、駆け出した。



1体目。

剣で逆袈裟斬ぎゃくけさぎりでオークの右下から左上へ斬り上げる。

オークは何も出来ずに消えた。



2体目。

一文字斬りで右から左へ水平にオークの首を斬り落とす。

落ちる時に俺の顔を悔しそうに見やがった。

そして消えるオーク。



3体目。

袈裟斬りでオークの左肩から右腰骨に向かって斜めに振り下ろす。

「ズリ」と斬れて消えてるオーク。


袈裟斬りの由来は、僧侶が身に着ける衣裳のことだ。

肩紐が左肩だけにあり、斜め掛けに着用するのが袈裟斬りの剣先の軌道と同じで、この呼び名がついたらしい。



4体目。

左袈裟斬りでオークの左肩から脇腹に向かって斜めに斬り下ろす。

斬った速度が増したような・・・




5体目。

左一文字斬りで左から右へと振り斬る。

オークの腹が切断して「ドバッ」と血を流す。


そして消えた。


ああ、一文字斬りと違って斬り難い。

オークも消えるまで2、3秒のロスだ。

まだまだ修行が足らない・・・



6体目。

同じく左一文字斬りだ。

まだまだダメだ。



7体目。

今度の左一文字斬りは良かった。

オークが消えるのも速い。



8体目。

左逆袈裟斬りでオークの左脇腹から肩にかけて斬り上げる。

一瞬で消えるオーク。



9体目。

突きをオークの喉に突き刺す。

呆気なく消えるオーク。



剣術の人斬り技を見て試した。

嘘のような切れ味だ。


棒を振りっての練習とはまったく違う。

相手が殺す覚悟で向かって来るからだ。

それに凶悪なオークだ。

やっぱ弓とは違う。こっちも死ぬ覚悟が必要だ。



10体目。

パッとオークの懐深くに入る。

オークは殴り掛かるが左の剣を一瞬で逆手に変えて、下から振り上げる。

オークは数歩動いて倒れる。


そして消えた。


ああ、逆手で斬るって、こんな感じなんだ。

接近戦で小回りが効くって試したが、めちゃむずい。


斬撃が弱くなるが光の剣なら関係ない。

軽く振っても「スパッ」と斬れる。

ただ、リーチが短くなって、まさに懐深くに入って斬るに特化してるぞ。



11体目。

オークに向かって疾走しっそうして真向斬まっこうぎりで頭上に高く振り上げて、真下に振り下ろす。

「パカッ」とオークを二つに切り裂いた。

そして消えた。


この技で有名なのは、示現流だ。

走った勢いで真上から斬り下げる。シンプルな技だ。


幕末期に薩摩者と戦った者に、自分の刀の峰が頭に食い込んで絶命したらしい。

それ程の斬激らしい。



「ギ、ギャーギャー、ギャー」


なに、なに、リンがうるさいぞ。


「ギ、ギャーギャー」


なんだ、俺の手を引張るな。

なんかリンにも、やらせろって言ってるみたいだぞ。


「やりたいのなら、やってみろ」


お!オークが見えた。



リンが走りだす。

あ!ジャンプして真上から降り下ろした


オークは、二つに斬り裂いたぞ。


もうマスタークラスしたらしい。




「さあ!次のオークでも倒すか・・・」


え!ゴブが走りだしたぞ。


おい!なんだよ。

追い駆けたら間に合わなかった。



ゴブが骨トンファーで左一文字斬りでオークを消した後だった。


「何やってんだ」


あ!その声が届く前に走り出している。

あれでは聞こえてない。


魔石を回収して走りだす。



間に合わなかった。


次も間に合わなかった。


魔石を無視して追い駆けて捕まえることに成功。


2人に説教だ。


「俺の訓練だから邪魔するな!」


「ギャー」


「そのギャーは、邪魔しないって意味か、邪魔するって意味のどっちだ」


「ギャー」


「ギャー」


下を向いてから発してるから、反省したようだな。


分かればいいんだよ。分かればな・・・



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