第12話地下5階




1階通路でリンがヌンチャクを振り抜いた。

「バコンッ」と音が響く。


一瞬で頭が半回転してゴブリンが消える。


地下通路だから音がよく響く。



「局長、どうなるかと思ってましたが、やりますね」


「1階でやられるようなら私が来ると思う」


「局長、申し訳ありませんでした!」


「分かればいいのよ」


もう好き勝手言ってるな。

それに撮影が終わったのでコソコソと魔石を拾う。


戦う前にカメラの前に出ないように注意されたよ。

もう、やってられない気分だ。

そんな態度をする俺に気づいた高橋は、キット睨むから怖すぎだ。



拾うのを見たリンとゴブが走りだす。

俺も走る。


「何を勝手に走るのよ!」


後ろから聞こえる高橋の叫び。


俺に言うなよ。

リンとゴブに言えよ。

それに、いつものように探索しろって言ったのそっちだぞ。


リンがゴブリンをすり抜けて、振向きながら後頭部を強打。

何も出来ずに消えるゴブリン。


戦いが終わったので魔石を拾う。


「何で走るの、せっかくの戦い場面が撮れなかったわ」


「いつものようにやってるだけです」


「あなた達は、いつも走ってるの」


「ええ、走ってます」


またもリンとゴブが走りだす。


俺も走っていると後ろから叫ぶ声が響く。

俺が後ろを気にしてたら戦いは終わってた。


ゴブが魔石を持って来てくれた。


「偉いぞゴン」


「ギャー、ギャー」


2人が来る前にリンが走りだす。

クサリが気に入ってるみたいだぞ。


あの2人は、放置だ。




もう階段なのに、まだ来ないぞ。

いくら待たせるんだ。

自衛隊の踏破した地図は、ギルドも共有してるから迷子にはなってないハズだ。

それなのに遅い。


ようやく走って来たよ。


「30分の遅れです。探索の邪魔をする気ですか」


「何言ってるのよ。あなた達が速いのよ」


え!そうかな・・・・・・

引きこもって運動もしてなかった。

それなのに最初から軽く走れるのに疑問にも思わなかった。

ああ、やったな。


そして思い出した。

リンを召喚したら更に走る速度が上がったような気みする。

これってモンスターカードの効果かも知れない。


「私達も職員の中でも速い方なのよ」


「私なんか100メートル10秒前半よ」



やっぱ俺とゴブリンが異常なのか・・・嫌々認めたくない。

それに、何時までも付き合ってられない。



「そんな事を言われても、地下4階へ速く行かないと収入減になって困るのはこっちですよ」


「それはそうだけど」



3人で話し合った結果。

俺は、ジャージの上から高橋さんの防弾ベストを着る羽目になる。


俺に近いサイズは、高橋さんだから・・・


「これは命令です。決してボディカメラを壊さないように、それに手で隠したりダメです」


「分かりました」と言って階段を下りる。


まだ言いたそうにしてる。

無視して進もう。




地下2階なんか20分で階段まで到着。

ゴブとリンのコンビの戦いは瞬殺だ。


俺なんか、魔石を手早く「パッ、パッ、パッ」と拾う。

もう名人級だ。




地下4階では、リンに向かって飛んでくる矢を「バシッ、バシッ」と叩き落とす。

前回より数段上達してる。


ゴブも、あっという間に倒す。

だからコンパウンドボウを使い暇もない。


あ、魔石の横に牙4本だ。

これで魔改造の矢が4本も作れるぞ。


普通の矢だと骨を貫けない。

それに引換え牙の矢は凄すぎる貫通力。


オークでも殺せるじゃーないかと思う程だ。

オークの脂肪は、銃弾でも貫通は無理らしい。

なので狙うのは、顔だ。

目が1番いいらしい。



あれ、あれって階段だぞ。

アプリ画面で階段位置を設定。


まだまだ4階層は、制覇できてない。


しかし、ここは5階行くしかない。

ウィル・オ・ウィスプみたな火の玉なら対策なしでは無理だ。

しかし、俺の魔改造の矢で殺せる。

なんか感じるんだ。


水魔法でも、あれば良いのだが・・・ないので思ってもダメかな。



階段を下りる。

やっぱ安全エリアだ。


問題は、あの通路の先だ。




「ゴブとリン、ここからが本番だぞ。武器が効かないモンスターが居るかもしれないからな」


なんとも緊張感のない2人だ。


コンパウンドボウに矢をつがえる。

そして歩きだす。


「ガ、ギャー、ギー」


何を言ってるの分からん。


あ!ゴブリンだ。

ゴブリンがやって来たって言ったらしい。


あれって魔法使いか・・・・・・ゴブリンが魔法使いの杖を持ってる。


「ギー、ギー、ギー、ギー」


え!呪文らしものを唱えだしたぞ。

ゾクッと恐怖感を感じる。


リンのヌンチャクが唸る。

2本の矢を叩き折った瞬間だった。


俺は、魔法使いに向かって矢を放つ。


あれ!床から生えたムチのようにうごめく植物が邪魔しやがった。


7、10センチぐらいの太い茎に矢が貫通。

そのれによって矢が違う方向へ。


矢筒から矢をとる。


あ!植物が伸びてゴブを襲いだす。


なんとか骨トンファーで防御。

当たる瞬間に巻きついてきた。


たまらず右の骨トンファーで叩く。

しかし、ビクともしない。


俺らは、負けるのかと思った。



骨トンファーが急にポワッと淡く光った。


ゴブは、巻きついている植物に光った骨トンファーを叩きつける。


「グシャ」と巻きついていた植物だ潰れる。


いったい何が起きた。


また襲ってきた植物に左の骨トンファーが淡く光った状態で殴る。

「グシャ」と植物は潰れる。


こんなに簡単に潰せれるのか、考えられる理由は光だ。

魔法攻撃に有効な光に違いない。


またも骨トンファーが光ながら「グシャ」と潰す。


植物からの攻撃が止んだ。


え!植物から葉が飛び出したぞ。

マジか・・・嘘みたいな攻撃だ。


葉が回転して回転数が増しながらカーブしながら無数の葉が向かってきた。


あ!リンが「ブン、ブン、ブン」とヌンチャクで破壊。

ヌンチャクも光ってる。


ゴブも骨トンファーで葉を破壊している。

暗い通路だから発光する淡い光がよく見える。


あの葉っぱにも魔法が掛かっていているに違いない。

それも鋭い刃になってる可能性もあるぞ。


触れたらスパッと切れそうだ。

これって植物魔法を防いでいる証かもしれない。


なら俺の矢の牙も効果があるハズだ。


植物が再度襲ってきた。

そのタイミングで魔法使いに矢を放つ。


植物もかばうが遅かった。


あ!魔法使いが仲間を盾にして引っ込んだ。

なんて卑劣ひれつな奴だ。


しかし、俺の矢の先端が淡く光って、引っ込んだ先に曲がりやがった。

その瞬間、魔法使いの眉間に命中した手応えを感じたぞ。


それを証明するように植物も消える。



ここからが一方的な戦いだ。


ゴブリンの頭にヌンチャクが炸裂さくれつ

頭が飛び散った。


怒りのこもったヌンチャクだ。


叩きつけられる骨トンファーが脳天を勝ち割っている。


「グシャ、バン、ボコン、グシャン」


ゴブとリンの激しい音が響く。

あの光で攻撃力を爆上げしてるぞ。


そして戦いは終わった。



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