第3話戦い



午前9時。

コンビニの駐車場でモンスターカードの贈呈式だ。

全員いるわけでもないが、40人以上はいるぞ。


長々なスピーチの後で、やっと本題だ。

これさえなければ、とっくにダンジョンに入っていたよ。


山田巧やまだたくみ殿にモンスターカードを贈呈します。村のために頑張ってください」


うやうやしく受取ってダンジョンに入る。

もう拍手っていいから・・・めちゃ恥ずかしい。


ゴツゴツした階段は、20段もあっただろう。

そして安全エリアがあった。

10畳程のスペースで、光コケで明るい。


小型装置をセットして電源を入れる。

この装置から電波が出ていて、スマホで位置情報を知らせる仕組みだ。

村からの支給品だ。壊すと20万円だと言われたよ。


スマホのアプリを起動。

お!ちゃんと表示されてる。

これで自衛隊が入ってない通路も表示される。

ハイテクって凄い。


「ここなら召喚して大丈夫だろう」



手に持ったモンスターカードを見る。

絵柄はゴブリンで裏側には、HP10MP1と表示。

え!ゴブリンってMP1があるらしい。

魔法が使えるのか・・・召喚してから考えよう。


モンスターカードをかざして「召喚」と声にだす。

これって切っ掛けらしい。

ある人は、「いでよ、モンスター」って言う人もいるって。



あ!一瞬でゴブリンが・・・・・・

凶悪そうな顔だぞ。

緑の肌に、こん棒を右手にぶら下げている。

身長は、120センチぐらいで筋肉もモリモリだぞ。

腹の腹筋も半端ない。


それに対して手と足のサイズは、大人の手で足は26cm。

もうアンバランス過ぎる体だ。


そんな手で殴られたら簡単に殺されるかも。



しかし、モンスターカードのオークが戦う動画みたら見劣りするぞ。

それは、仕方ない。

素手で相手モンスターを殴り殺す。

体でぶつかって吹飛ばす光景は、ぞっとするほど恐ろしい。



「ギャーグ」と変な声をだすゴブリン。


簡単な命令しか聞かないらしい。

名前を付けるか・・・・・・「お前は、ゴブだ」


「ギャー、ギャー」


なんか気に入ってるみたいだぞ。

凶悪な顔が笑っている。

あんちょく過ぎる名前なのに変わった奴だ。


「ゴブは、魔法が使えるのか」


「ギャー」


え!それってNOって意味なのか・・・ああ、頭を振ってるからNOなんだ。



俺は、リュックを下ろしてコンパウンドボウのフックを外す。

再度、リュックを背負いなおす。



ああ、いよいよ本番だ。

目の前に、1つの通路がある。


腰の矢筒から矢を1本取って、ノッキングポイントに矢をつがえる。

そして、弓リリーストリガーをセット。

準備OKだ。

目の前の通路へ意を決して入る。


「ゴブ、ついて来い」


ゴブも歩きだした。

ここからが命がけの戦いだ。



しばらく歩くと声が・・・・・・


これってゴブリンの声!


あ!俺らに気づき走りだして来た。

グッと引張って狙いをさだめる。


あ!緊張したせいで弓リリーストリガーを・・・・・・

あ!発射されて外した。


相手のゴブリンがこん棒を振りかぶる。

ゴブも俺の前に立ちふさがって、同じように振りかぶる。


互いのこん棒が「ゴン」とぶつかった。

互いによろける。


そして、またも「ゴン」とこん棒がぶつかった。

互角の戦いだ。


そのスキをついて横から矢を射る。

1メートルの距離だから外すハズがない。

ゴブリンの腹に突き刺さった。


矢の半分以上も刺さっているぞ。


「ギャーーー」と叫ぶゴブリン。


ゴブもしめたと思ったようで、こん棒で頭をボコ殴りだ。

倒れても、これでもかこれでもかと殴る。

ゴブリンが一瞬で消えだす。


それでも殴るゴブ。


「ゴブ!やめろ」


やっと止まったぞ。

そしてニカッと笑うゴブ。


消えた場所には、緑色の魔石があった。

魔石を拾ってかざして見る。

キラキラして綺麗だ。これがゴブリンの命の元らしい。

4センチの魔石をポーチの中に入れる。


そして、矢も2本を拾って確認だ。

最初の矢は、ちょっと傷ついているが使えなくもない。

なので1本は、矢筒に戻す。


もう1本は、いつでも射れる準備だ。


え!足音だ。

ギュッと引張って狙う。

今度は外すことはなかった。


「ギャーーー」


フラフラして痛がるゴブリンをボコ殴りするゴブ。

容赦しないゴブにどん引きだ。



昼頃には、ノルマの10個を手に入れたよ。

これ以降が俺の収入だ。

頑張って稼ぐしかない。


「ゴブは、ゴブリンが来たら戦え。俺は昼飯を食べるから分かったな」


「ギャー、ギャー」と言い返すゴブ。


それがOKって意味か・・・


俺は、壁にリュックを下ろしてポーチの魔石をリュックのレジ袋に入れる。

そしてコンビニでもらった弁当を食べる。


ああ、生きてるって実感がしてきた。

引きこもっていた自分は、なんだたんだと思い返す。


そしてペットボトルのお茶を飲む。


短い時間だがゴブの顔にも慣れた。

今では、平気に見れる。



食べ終わった弁当をレジ袋に入れてダンジョンに放置。

24時間後には、消えるらしい。

その検証だ。

アプリで印ポイントをつける。

明日、来たら確認だ。


帰る時もゴブリンと戦った。

もう俺の矢も外すこともない。

ゴブも1度も殴られてない。


「あ!安全エリアだ」


帰りで6個の魔石を手に入れたぜ。


ダンジョンの扉を開けて外に出る。

え!村長が大喜びで抱きついて来た。


「よかった。よく帰って来てくれた」


2人してダンジョンの扉を閉めて終了だ。

この扉は、閉めと勝手に鍵が掛かる。

しかし内側からは、鍵なしでも開けられる仕組みらしい。


「今後は、君が扉を管理するんだよ。これが鍵だ。予備の鍵は、コンビニにあるから」



2人してコンビニに入って、レジでレジ袋を差出す。

おばさんが数えだす。


「16個だね・・・・・・家賃で10個を引いて1800円を現金にするかい。それとも冒険者カードに振り込むかい」


「あの、現金で」


現金を受けとる。


そしてカウンターに入って俺専用のノートパソコンの前に向かった。

接続しているカードリーダーで冒険者カードを読ませる。

16時23分と表示。

間違いなければEnterを押して終了。



隣では、村長が嬉しそうに見てるよ。



  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る