ちゃんと告白すればよかった

(ああああああああああああああああああああああ⁉︎)


 私は過去を振り返り、強烈な自己嫌悪に陥っていた。


 なんであの後、空回りしちゃったんだろ! 

 全然、なっくんとの関係が進展しなくてヤケになってたけど、だからってもう! 


 なっくんが他の女の子がいるのを見て、私が自分の気持ちに気付いたからって。

 私に彼氏ができたって嘘をつくのはどう考えても悪手じゃん! 空回りなんてレベルじゃない! 


(時が戻せるなら戻したい……。こんなことになるなら、一か八かで告白すればよかった)


 遠くの席にいるなっくんを見る。

 もし振られるの覚悟で告白してたら、案外上手くいってたのかな。


(でももう手遅れか)


 私はなっくんに嫌われちゃってる。


 もう挽回する方法なんてないんだ……。


 急に冷静になった私は自分の置かれた状況をよく理解した。

 これ以上、二人を見るのはただ辛いだけ。私は半分ほどパフェを残したまま、ファミレスを後にした。



 ★



 19時過ぎ。

 リビングのソファの上で、私は体育座りをしていた。


 鬱陶しいほどの負のオーラを全身にまといながら、ぼんやりとバラエティ番組を眺めている。


「お……おお……」


 帰宅早々、私を見た紬の反応がこれだった。


 私とは口を利きたくもないだろうに、こうしてリアクションせずにはいられなかったあたり、如何に私の表情が死んでいるのか理解してもらえると思う。


「これまで色々ごめんね、紬」


「なに、急にどうしたの?」


 紬は、私の突然の謝罪に戸惑いを見せる。


「私、冷静になったんだ」


「は、はあ……」


「もうなっくんのことは諦める。紬の邪魔をしたりもしない」


「それは助かる、けど……なにがあったの?」


 斜向かいに座って、紬が小首を傾げてくる。


「私はもう時間を巻き戻す以外、なっくんと付き合うことはできないんだって気付いた……。負け犬のくせに邪魔ばっかしてごめんね」


 私は涙がこぼれそうになるのを必死に堪える。


「だから、さ……紬にひどいことしちゃったけど許してくれないかな。これまでみたいに、仲のいい姉妹でいたい……」


 自らの愚行で、私はなっくんという大切な幼馴染を手放してしまった。


 このまま妹とまで距離が出来てしまうのは素直に嫌だった。

 これからはちゃんと心を入れ替えるから、過ちを許してもらいたい。


 紬は首筋をポリポリと掻く。ジト目で私を見つめてきた。


「ウチとお姉ちゃんって、元からそこまで仲良くなくない?」


「は? ちょっと、このタイミングでそういうこと言う⁉︎」


「まぁでも、うん、いいよ。今のお姉ちゃんは本心で話してる時のだし、ナツ先輩のこと諦めてくれるなら特別に許してあげる」


「ほんと? ありがとお、紬!」


 ガバッと勢いよく紬に抱きつく私。

 紬は嫌そうな顔を浮かべた。


「お姉ちゃん鬱陶しいって、もう」


「えへへ」


 私は一抹の喜びと、なっくんを諦めることへの空虚感を覚える。

 色々と間違えちゃった私だけど、これから心を入れ直そう。なっくんと紬を応援できるように切り替えていくんだ。


 そう、胸の中に強い決意を宿す私なのだった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る